4-1話 やっと町についた……
太陽が頭上高く昇った正午時に3人はようやく町に着いた。
「やっと町に着いたわね!」
「なんか、ここまで来るのに凄く疲れたような……」
「フミさん疲れているのですか? だったら私を馬にしてもらっても構いませんよ」
「あ、ずるい! 私もふーちゃんに乗ってもらいたい!」
「もー! そういうのが疲れるんだって!」
肉体的の疲労もあったが、二人の変態を相手取る文は精神面で特に疲労していた。
変態をあしらい、文は町をキョロキョロと辺りを見渡すがやはり自分の知っている場所ではない。
ただ、それは予想通りのため、もう落胆することはなかった。
「ここはふーちゃんの故郷では……なさそうね」
その様子を見てからか、ユウキもここが文の故郷ではないことは察する。
(まぁ、この世界に自分が知っている場所はないのだけど……)
と思いながらも文はコクリとうなずく。
それに対してユウキは『まだ、旅は始まったばかりだしその内見つかるよ』と言い、励ますように肩に手をかけるが、その手をどさくさに紛れてスーッと胸へと伸ばしていく。
しかし、それにすぐに気づいた文はそのヤラシイ手を掴み、握ると、
「ああああああああ!! 痛い痛い痛い痛い!!」
例の能力が発揮し、勇者と呼ばれる者が一回り小さい女の子に手を握られて悲鳴をあげるという奇妙な光景が出来上がる。
手がつぶれそうになった彼女はひたすら『ごめんなさいごめんなさい!!』と謝罪を繰り返しており、反省している様子を見た文もパッと手を離す。
「うぅ……シスゥ……回復してぇ……」
「はい!」
ユウキは涙目になりながら治癒魔法を依頼する。
(何やってるんだろ……私たち……)
仲間内で傷つけ、仲間内で回復するという無駄な行動をしていることに虚しい気持ちになりながら、文はユウキの治療を眺めていた。
「装備を揃えておこうよ」
治療を終えたユウキが唐突に提案を出してきた。
「装備?」
それは文にとって元の世界では馴染みのない単語であった。
それもそうだ、普通の生活をしていたらまず口に出すことも聞くこともないはず。
あるとすれば、ゲームの中だけである。
「ふーちゃんが今着ているものは対魔物用のものではないでしょ? これから旅をするにあたって魔物との戦闘は避けられないだろうし、防具と武器を買っておかなきゃ」
「武器はともかく、防具と普通の服は何が違うの?」
「簡単に言えば魔物と戦う時に有利に立ち回れるか、そうでないかかな。魔物の爪を通さなかったり、体液でとかされないような素材が使われているの」
簡単に説明を受けた文は『へー』と納得した。
今まで魔物に襲われて傷こそ負わなかったが、なるべく痛い思いをするのは避けたい文は防具を買うことを了承する。
「そういえばシスの服も対魔物用のものではないよね?」
「はい、教会に勤めていた時は町の外に出ることはなかったので必要がなかったです」
改めてシスティアの服装を見直してみると、確かに戦闘に向いているとは思えない。
彼女の着ている服はいわゆる修道服といわれるもので丈が長く動き辛そうだ。
「それじゃあなんで会った時は森にいたの?」
「話せば長くなるのですが……」
「じゃあいいや」
文は『聞いておいてなんだが』と思ったが、なんだかしょうもない話を聞かされそうな気がし、よく見る漫画のような塩対応をした。
「フミさ~ん、放置プレイも興奮するのですけど聞いてくださいよ~」
「どうせくだらない話なんでしょ?」
「あれは私が教会を追い出された日のことでした……」
「構わずに語りだしたわよ、この子……」
二人の話を聞かないままシスティアは一人で勝手にしゃべりだす。
「とりあえず私が住んでいた町ではもう働くことはできないと思ったので別の町で働こうとしたのです。そして別の町まで歩いている途中で魔物に見つかってしまいました……襲ってくる魔物! そして武器を持たず抵抗する術のない私! 結果は歴然! 私は魔物に負けました。そして痛めつけられ、触手で締め付けられたりしている内に癖になっていく私! そして魔物に拘束されて楽しんでいるところにユウさん達と出会ったというわけです」
話し終わった彼女は満足げな顔をしていた。
「しょうがなく聞いてあげたけど案の定くだらない話だったわね……」
「ゆーちゃんが助けなくてもよかったかもね……」
「あぁ……! お二人の冷たい視線が突き刺さります……!」
興奮している彼女を尻目に二人は呆れたようにため息を吐く。
「まぁいいや、とりあえず今日はふーちゃんとシスの装備を買いに行こうか」
3人は装備を揃えるために町の店を回るために歩き出した。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
しばらく歩くと盾が描かれた看板がぶら下げられている店が3人の目に入る。
よく見ると店の前に鎧も置かれてあり、
きっとあれが防具屋なのだろう
とシスティアと文は理解した。
「なんか……ザ・防具屋って感じのお店だね」
「私も防具屋に初めて来ました」
しかし、お店を前にしてドキドキしていた二人であったが、先頭を歩いていたユウキはその防具屋らしき店を通り過ぎていく。
店に入る気満々だった二人は『あれ?』といった表情でユウキを追いかけた。
「あの~さっきのお店が防具屋じゃないのですか?」
システィアがユウキの後ろから話しかける。
しかしユウキは歩みを止めずに先に進んでいった。
「うん、あそこも防具屋だよ。でも私達が行くのは別のとこ」
どうやら向かっているのは別の防具屋みたいだ。
(服を選ぶにしても買う場所を選ぶように防具も買う場所を選ぶのかな?)
と文はなんとなく理解する。
「あっ、あそこあそこ」
そして先ほどの防具屋からしばらく歩くと目的の店が見えたのかユウキが声を出した。
その指をさす方向を見るとそこには一軒のお店。
しかし、そのお店は二人がイメージしているものとは異なったものであった。
「あ、あれ防具屋……なの? なんかオシャレな洋服屋さんに見えるのだけど……」
そう、ユウキが案内した店は一見ゲームに出てくるような防具屋ではない。
むしろ元の世界にいた頃に見たことのある洋服屋に近い外装をした店だった。
イメージと違う店を見たことにより困惑していた二人を見てユウキは『ふふふっ』と不敵に笑い、
「近頃、女の子でも冒険者を志望する子が多くなるに連れて既存の防具がダサイという声が上がるようになった。それもそう! 何故なら今まで作られた防具は性能だけを考えて作られているものでデザイン性を考えられていなかったから! そこで新しくできたのが防具としての性能を持ちながらデザインにも気を使った防具屋。それがこのお店なの!」
と、長々と説明をする
改めてユウキを見てみると確かに一見戦闘に向いているようには見えない服装をしていた。
ゲームでのモンスターと戦う冒険者は重い鎧を被り、どっしりとしたイメージだが、そのイメージとは背反して軽装であった。
「さ、入ろ入ろ!」
先頭のユウキが店に入るとドアについていた鈴が『カランカラン』と鳴る。
店の雰囲気に気圧された二人もそれに続くように入店していった。





