3-3話 昨夜はお楽しみでしたね
「お風呂お先にいただきましたー」
お風呂から上がったシスティアがリビングに入ってきた。
先程はベールに覆われてて髪が見えなかったが、今はベールを脱いで長い髪が露わとなる。
その髪はウェーブがかかってふわっとした明るい茶髪であった。
「着替えは私のものだけどサイズは合ってる?」
「はい! サイズはピッタリです」
返事をした通り、彼女はユウキの服を着ており、キツくもブカブカでもなく着心地は問題なさそうである。
その姿を見た文は、ユウキの服のサイズ(特に胸辺り)が全然合わなかった自分に対しての嫌味か! と思い少しイラッとしていた。
「じゃあご飯できたし食べましょうか」
「はい! 一日近く何も食べていないのでとてもお腹が空いています!」
ユウキは夕食の乗ったお皿を持ってテーブルに置く。
本日の献立は豚肉の生姜焼きのようだ。
3人がテーブルに着き、夕食の準備が整うと
「「いただきます」」
食事の挨拶をすませて、それぞれ料理に手を付ける。
しかし、文とユウキが夕食を口にしているその一方で
「豚……ですか……」
システィアが皿を前にしてそう呟いた。
そんな彼女は皿を見つめて手を付けようとしない。
「あれ? 食べないの?」
なかなか手をつけず、じっとしているその姿に不思議に思ったユウキが聞く。
(そういえば……元の世界にあるどこかの宗教では、豚や牛肉を食べてはいけないものとされている、と聞いたことがある気がする。
もしかしたらこの世界の宗教にもそういった決まりがあるのな?)
そう思った文はユウキに小さな声で話しかけることにした。
「もしかしたら宗教上の決まりで食べれないとかあるんじゃないのかな?」
「えっ……そういうのあるの?」
「いや……この世界ではどうなのか知らないけど私のいた世界ではそういうのがあったよ」
別の世界発言に対してユウキはスルーしたが、もしかしたら食べたくても食べれないものを出してしまったのでは? と思ったユウキはシスティアに聞いてみることにした。
「シ、シスってもしかして豚肉はダメだった?」
「……? いえ、そんなことないですよ?」
心配そうに聞いたユウキに対してシスティアはキョトンとした顔で答えた。
「え? じゃあどうして食べないの?」
「いえ……雌豚である私が豚肉を食べたら共食いになるのではないか思いまし――」
「ふーちゃん今日のご飯はどう?」
「うん、おいしいよ」
心配して損した2人はシスティアの言葉を無視して料理を再び食べる手を動かし始めた。
♢♢♢♢♢♢♢♢
夕食を済ませた三人はしばらくの間雑談をしているとすっかり時間が経っていた。
雑談をしているとシスティアが『ふわぁ……』とあくびを吐きいかにも眠たそうにウトウトしている。
「シス、眠いの? ベッドがあるからそこで寝たら?」
「あ……すみません、お気を遣わせてしまって……」
「いや、もう夜も遅いし私達も寝ようか」
ユウキが椅子から立ち上がり寝室に案内しようとしたが、ハッと何かに気づいた様子で『うーん……』と腕を組んでいた。
「あー……そういえば今部屋が二つしかないんだった……だからこの中から2人は狭い部屋で一緒に寝ることになっちゃうのだけど……」
寝室はユウキが普段寝ている部屋と文が使っていた客用の寝室しかないようだ。
部屋はとてもではないが広いとは言えなく、二人が寝るには少し窮屈である。
「私は助けて頂いた身なので一人で部屋を使うなんておこがましいですし、二人部屋で構いませんよ」
システィアが小さく手を挙げる。
「私も居させて貰ってる身だし私がシスと一緒の部屋で寝るよ」
文もシスティアが挙手した直後に文も名乗りでて、あっさり部屋割りが決まり3人はそれぞれ寝室へ向かっていく。
システィアは部屋の場所を知らないため一緒の部屋で寝る予定の文が案内した。
「ちょっと二人だと狭いけど我慢してね」
「いえ、そもそも私が勝手にお邪魔してしまったので……こちらこそ申し訳ないです」
「いやいや、私も居候させて貰ってる身だから気にしないで」
「ありがとうございますフミさん、そう言って頂けると気持ちが楽になります。」
こうして普通の話をしているとまともな人だなぁ……
そう思い文はホッとした。
寝ようとベッドに座った時、ドアの方向に目を向けるとユウキがドアの横から顔を出して手を招いていた。
システィアには見えないように手を招いてる様子を見て、自分を廊下に呼び出している、ということに文は気づいた。
文はシスティアに『ちょっとお手洗いに行ってくるね』と伝えて廊下に出る。
「どうしたのゆーちゃん」
「シスと一緒の部屋で寝てもらうことになっちゃったけどふーちゃん大丈夫?」
「……? 大丈夫だよ、何か心配事でもあった?」
「シスがふーちゃんにいやらしい事しないか心配で……」
「大丈夫だよ、会った時は……まぁ、あれだったけど、意外とまともな人だと思うよ?」
「でも……もし何かあったら私の部屋に来てね」
「いやいや多分大丈夫だよ……というかゆーちゃんと一緒に寝る方が何かありそうで怖い」
「酷い」
寝る前の冗談を交わし文は『おやすみ』とユウキに挨拶を済ませると部屋に戻りドアを閉めた。
ドアを閉めると部屋の中は静寂の中から静かな声が聞えてきた。
「すー…………すー…………」
文がベッドに目を向けるとシスティアはすでに眠って小さな寝息をたてていた。
一日中森をさまよっていたためなのか相当疲れていたみたいだ。
文は寝ているシスティアを起こさないようにそーっと布団を身体の上にかける。
「静かにしていると美人さんなんだけどなぁ……」
ユウキもそうであるが言動や性癖のせいでかなり損している。
そんな二人を勿体ないと思いながら文は『はぁ……』とため息を吐いた。
「シス、おやすみ」
システィアを起こさないように小さく呟き、文もその隣で眠りについた。
しかし、システィアはすぐ起こされることになる。
それも起こさないように注意していた文の拳によって。
そう、文の寝相は絶望的に悪いのだ。
隣で寝ている者には容赦なく拳が襲ってくる。
その夜、文とユウキが寝静まった頃に『ドカッ!』『バキッ!』といった荒々しい音とシスティアの嬌声が家の中に響いていた。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「ふわぁぁああああ……」
大きなあくびと共に文は身体を伸ばして起き上がった。
森の中に立てた家のためか、朝は小鳥のさえずりがよく聞こえてアラーム代わりとなる。
「ふ……フミ……さん……おはよう……ございます……」
どこかからシスティアの声が聞えてきた。
しかしその声はかすれているようである。
文はその声に違和感を感じつつも挨拶を返そうとした。
「シスおはよ……うわぁああああ!」
挨拶を言いかけたが、システィアの姿を見て『おはよう』の声が途切れてしまう。
システィアはベッドではなく床に転がっており、しかもボロボロの格好をしていた。
なんだか既視感のある光景な気がしたが文はベッドから降りてシスティアの身を案じてそばに寄る。
「ちょっと! シスだいじょ――」
「どうしたの! ふーちゃん!」
文の驚いた声が聞こえたのかユウキが部屋にすぐに駆けつけ勢いよくドアを開ける。。
部屋に入った彼女の目には、衣服の乱れたシスティア、そしてその側に文がいた。
その光景に彼女は唖然としていた。
「な……何やってたの二人で!!」
何やら変な誤解をされていると思った文は誤解を解こうと『ちがっ……』と言いかけたその時
「あぁ……昨日の夜はとても激しかったですね、フミさん」
システィアが先に怪しげな発言をする。
その発言を聞いた二人はギョッとした表情を浮かべてシスティアの方を見ていた。
「は、激しかった……? や、やっぱり2人で……!」
「ご、誤解だよ! 私、何もしてないから!」
「なんで……なんで……」
ユウキは下を向きながら肩をわなわな震わしていた。
どうしよう……何か勘違いされている
そう思った文はどうやって誤解を解こうと焦りながら考え出す。
しかし、文の考えがまとまらない内にユウキが声を張り上げた。
「なんで私も混ぜてくれなかったの!!!」
「いや、そっち⁉︎」
ユウキは全く別のことで怒っていた。
どうやら除け者にされたと思われているみたいだ。
ユウキが文に問い詰められていると、今度はシスティアが文に寄ってきた。
「フミさん……私、昨日の快感が忘れられません……これは責任とって貰うしかないですね♡ なんとしてでも貴方達の旅についていきます」
「ちょっと! なんで私の腕を組んでるの⁉︎」
「いいじゃないですかフミさん、私達もう仲間なのですから仲良くしましょうよ」
「いや、勝手に決めつけられても――」
「ふーちゃぁああああああん! 私も激しく愛してぇぇええええええ!!」
「もぉぉおおお! 朝からうるさああああああい!!」
朝の森に3人の声がそれぞれ響き渡る。
こうして、なんやかんやあって元シスターのシスティアが二人の旅に勝手についてくることになった。





