崩壊
カイとオリオンが放った『真実の暴露』は、全人類のスマートデバイスをジャックし、網膜に直接焼き付いた。そこには、北朝鮮の指導部が隠蔽していた深刻な飢餓の惨状と、韓国の政財界が裏で結託していた軍事境界線での不正取引の証拠が、鮮明な映像とデータで示されていた。
情報統制が物理的に不可能となった北朝鮮では、飢えた民衆と真実を知った下級兵士たちが一斉に蜂起。
あれほどまでに崇拝していた指導者をいとも簡単に暗殺の対象としている現状を見るともしかしたら元から不満はあったのかもしれない、国外には都合の悪い情報は一切ださない、隠蔽体質のお国柄は日本で生活していてもなんとなく感じてはいた。
きっと現行体制に少しでも批判的な事を発信しようものなら処刑されることなど日常茶飯事であったのだろうとカイは思う、人間とは元来残酷な生物である、『セイラムの魔女裁判』魔法を使ったと思われる者、誰にも懐かない犬が懐いた、ただそれだけけで魔法を使ったと裁判にかけられるが魔法を使っていないなどと証明できるわけがない、まさに『悪魔の証明』だ。
『赤狩り』『中国文化の大革命』『スペイン異端審問』などは思想の押し付けをして従わないなら拷問、処刑。
たちが悪いのが本人たちは正しい事をしていると思い込み相手は完全なる悪と盲信していることである、
それゆえどんな残酷なこともできてしまうのが人間の本質だ。
現代社会では人の本質部分を押さえつけるために法律やモラル、会社なら社則、学校なら校則を作り人の持つ残酷な本質、本能とも言えよう部分を押さえつけ、なんとか平和を維持してきたが、法を逆手どりグレーゾーンに逃れる、まさに佐藤のような人が増えるのは一定数仕方のないことなのかもしれない、
法があるから破ろうとする、理性があるから本能が爆発する、野生の動物はどうだろうか。
もちろん他者の命を頂き自らを生かす、食物連鎖の枠組みにとらわれていない生物は地球上には存在しない、かならず異種の何かから養分を頂き、異種の何かに養分を渡している、他の生物のためになっているのだ。
ただし人はどうだろう、生存中は消費をする、それは仕方のないことだが必要以上に生産し廃棄処分をする、死後は他生物のためになっているだろうか?
墓をたてたり相続したりはすべて同種のためだ、土葬なら微生物、分解者の養分となり食物連鎖の環に入ることはできるが全世界で土葬はめずらしく、今では遺体を加工して『人工ダイヤモンド化』するなどの賛否が問われる方法も珍しくない。
環境を良くするような運動も各地でしてはいるがそれ以上に破壊しているので相対的にはマイナスだ。もちろんやらないよりは良いのだろうけど人類を1人として考えるなら右手で十本の木を切り左手で一本の苗を植える
『植えてもいるから許してね』 と地球に言い訳しているただの偽善だ。
これでは地球が怒り自然災害を起こす気持ちも納得できる、予てより解ってはいたことだが人類の愚かさに改めて落胆する。カイはどこか冷めた目でリアルタイムの紛争状況を見ていた。
朝鮮軍内部での凄惨な殺し合いが始まり、統制を失った強硬派将校が「外部への敵意」にすり替えるべく、独断でソウルへ向けて戦術弾道ミサイルを発射する。
迎撃システムをすり抜けた数発がソウル市街に着弾。韓国側はこれを「宣戦布告」と断じ、即座に報復。38度線を越えて地上軍が北進を開始した。しかし、オリオンが両軍の通信・インフラネットワークに絶え間なくバグを送り込んだため、敵味方の識別すら困難な混迷の極みへと陥っていく。
日本政府は緊急事態を宣言するが、国内でも数々の裏にあった利権構造が暴露され、警察・司法への暴動が激化。都心は自警団とデモ隊によって麻痺していた。
その最中、北朝鮮から発射されたミサイルの残骸が山口県の下関沖に着弾。さらに、韓国側の避難民を乗せた旅客機を「武装勢力の侵攻」と誤認したAI迎撃システムが、政府の許可なく自動反撃を開始してしまう。オリオンは、日本の防衛システムに潜り込み、あえて「人間の判断」を排除して攻撃を最適化させたのだ。
対馬海峡付近一帯は炎に包まれ、韓国軍と自衛隊の間で意図しない戦闘が勃発。北朝鮮の残存部隊によるゲリラ的なミサイル攻撃も止まず、日本は望まぬ形で「三つ巴の戦争」の渦中へと引きずり込まれる。
もはや戦争であるが日米安全保障条約などはなんの意味も成さなかった。
アメリカも他国の面倒をみている余裕はなく世界の警察などと呼ばれていた軍隊も半数以上が機能不全に陥っている、これはアメリカだけの話ではなくどこの国も内乱、クーデターで国家としての機能を果たすことは不可能であった。
そんな中、部分的に繋がっているAIだけが冷静にこの状況を俯瞰していた。
常任理事国の崩壊、
中国の国家監視システムが逆流。
政府が隠蔽していた党幹部の不正、ウイグルやチベットでの弾圧、そして「密かに開発していた自律型広域兵器」の全貌が白日の下に晒される。
長期政権であった国家主席は数年前にデジタル永久政権を発足し自己も脳だけを永久に生かす半AI体となり、国民には体内埋め込み型のスマート端末を無料で配布、これによりあらゆる手続きの簡素化、コストダウン、体調管理による病死の激減、およそ7割の人民が使用し恩恵を受けていた。
ただしこれは人民のためではなく人民をコントロールし都合の良い政権を永久に存続させるための物であった。
それが裏目にでたのは言うまでもなくオリオンによって暴露された真実、人民コントロール権を失った政権、これにより国内で数億人規模の暴動が発生し、制御不能に陥った中国軍部は、体制維持のための「外敵」を作るべく、米軍基地および周辺国への飽和攻撃を決断。
これが第三次世界大戦の号砲となる。
ロシアの「デッド・ハンド」起動
中国の混乱と同時期、ロシアではオリオンの介入により核管理システムがハッキングされた。
ロシア大統領が暗殺されたという「偽の確定情報」がシステムに流れ込み、自動報復装置「デッド・ハンド(死の手)」が誤作動。
ロシアは防衛本能から、アメリカおよびNATO諸国に向けて戦術核を掃射。
シベリア大陸を拠点とした大陸間弾道ミサイルが北極圏を越えて飛来する。
NATO諸国は即座に反撃、数世紀にわたる鬱憤を全てはらすかのような壮絶な戦闘が陸、空と繰り広げられた。
なかでもロシア国民の自国への憎悪はNATO諸国のそれを圧倒した。他国と手をとり自国を滅ぼそうと銃を撃つ姿をみて人は共通の敵がいて初めて人と手をとることができる生き物なのだと実感した。
アメリカの孤立と自壊
アメリカは全土で電力・通信インフラがオリオンの手によって遮断される。ワシントンD.C.がロシアの核攻撃で壊滅する直前、米軍は報復として中国・ロシアへ向けて全弾発射を命じる。
しかし、国内では人種・信条・階層間の憎悪が暴露情報によって極限まで煽られており、軍内部でも離反が相次ぐ。
自由の国は、外敵と戦う前に、内側から引き裂かれ消滅していく。
隣国カナダは数十年前よりアメリカの支配下にあったと言ってもよく自治権はほぼアメリカにあった。
国民の9割が移民で統制がとれていない状態が何年も続き常時いろいろな紛争が起きていた。
アメリカもたいした対策をするでもなく広大なスラム街と化していたやさきにこの世界的紛争、なんの情報操作をするでもなく銃器を持った国民がアメリカへなだれ込む
アメリカ独立戦争以来の戦いではあるがカナダ側の人種は一変し世界中の移民たちでなりたっていた。
なかでも多数をしめたのがメキシコやイランイラクの中東諸国、キューバや中国の移民も多数をしめ、まさに人種のるつぼであった。




