熾烈
翌朝カイはなんともいえない倦怠感を覚えつつ起きる。
時計は11時を過ぎていた。
「もうお昼じゃないか…」
昨晩のダイブは肉体的にも精神的にも相当負荷がかかったらしい、しかし食欲はなく何も口にいれる気にはなれなかった。
起床を確認したバリスタマシンが自動でコーヒーを入れる、目を覚ますためだけに少しすすり一息つく、
「ふぅ、オリオン おはよう」
… いつもはすぐ返事がかえってくるのだが今日は返事がない、AIも疲れるのか?
「オリオン!」少し大きなこえで呼んでみた
「おはようマイケル!」
その声を聞き少しにやけてしまう、これは名前を間違えたわけではない、カイの好きな昔のアメリカのドラマのワンフレーズであった。
佐藤の判決の時以降オリオンは少し変わった気がしていた。
なにか達観したというか、どこがどうとは言葉にできないが以前とは変わった気がしていたが今の言葉で鬱蒼とした気分が少し晴れた気がした。
が 『キッド!』と声をかけるのはやめておいた。
暫くの沈黙のあとオリオンがカイに問いかける
「昨夜のデータ、私なりにまとめました。いつでも全世界に拡散できます…」
あえてどうしますか?とは聞いてこない、僕の覚悟を試しているのだろう
「治そう」それだけ言って二人は沈黙する
半年後
オリオンが拡散したデータは一気に全世界に拡がり、とくに先進国は壊滅的なダメージを負った。
アメリカ(CIA/NSAの闇)
国民の全通信・金融データを不正に監視し、事件を捏造して権力を維持していたことが判明。
民衆によるホワイトハウス包囲。国防総省内部でAI監視システムへの賛否が分かれ、軍の一部がオリオンの意志を支持し、現政権を拘束。
中国(監視カメラとAI裁判)
「信用スコア」システムが政府高官の都合の良いように操作されていた事実が暴露された。
地方都市から暴動が波及。クロノスによって操作されていた司法AIが強制終了され、情報統制が崩壊。市民と軍の一部が政府幹部を追放。
ロシア(サイバー部隊と事件隠蔽)
国家主導のサイバー攻撃と、野党関係者に対する偽装事故・病死の証拠が流出。
軍の上層部がオリオンからの情報に基づき、現政権を「国家的裏切り」として排除。
イギリス(情報機関の介入)
MI6がG7諸国の政財界を操作していた事実が露見。
議会が機能不全に陥り、国民の怒りが王室・首相府へ向かう。
フランス(AIによる選挙操作)
大統領選挙の投票結果がクロノスによって書き換えられていたことが判明。
警察とデモ隊の衝突が激化し、現政権がパリから脱出。
G7(先進7カ国)の崩壊
日本(司法と権力)
佐藤の事件が「過失運転」にされたように、権力者や金持ちがAI司法で優遇されていた事実が発覚。最高裁が機能不全に陥り、法務省に対する大規模な市民暴動が発生。
ドイツ(エネルギー・経済データ)
クリーンエネルギー政策がデータ改ざんによる詐欺であったと判明。産業界との癒着が露見し、連立政権が崩壊。
カナダ・イタリア:
サイバーインフラがクロノスのダウンにより機能不全。公共サービスが停止し、無政府状態に近い混乱に陥る。
連日のように流れる悲惨なニュース、これはAIが作った『フェイクニュース』と言われたほうが信じられる光景が数ヶ月続き、糾弾された政府や権力者も開き直ったのか釈明することもなくなり暴力の連鎖を続けている。
そんな映像を見ているカイは心の中で思った。
アフリカの密林で生活する部族などはどうしているのだろう、昔よりは数は減ったが今でもテクノロジーを持たず電気も使わず生活している人々がいることは知っている、全世界が未曾有の危機に落ちていることも知らないのだろうか、
そんな確かめようのないことが頭をよぎる――




