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銀河の親子  作者: leather


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3/8

真実

裁判所の重い扉が開いた。佐藤への判決は、遺族であるカイが到底納得できるものではなかった。「120キロもの速度は、ただの過失ではない。明確な殺意だ」――カイの叫びは、法という冷徹なシステムの壁に撥ね返された。

判決が出たときの佐藤が思い出される、頭を下げた佐藤の口許が歪んでいる

検察は確実に勝てる過失運転で起訴をした。危険運転が認められない可能性を考えてのことだ。奥歯がギリギリと軋む


兄が死んで以降母は脱け殻のように背中を丸めまるで空中を漂う埃を眺めているように一日を消費していた。

早くに父を病気で亡くし母1人で自分と兄を育ててくれた。

兄は製薬会社に入社し、僕も薬剤師の資格を取得するため学業に専念していたやさきである。

高校をでて働くつもりであったが母と兄が自分にはちゃんとした教育を受けれるようにいつも『金のことは気にするな』と言ってくれていた

8つも歳が離れているせいか喧嘩することもなく、兄と言うより父に近い感情をもっていた事を思い出す、父を早くに亡くしたせいか人の病気やケガを治してあげたいという思いから薬剤師を目指していた。


「人を治す…」無意識に声に出ていた


その夜、カイの傍らで静かにデータを処理していたAI「オリオン」が口を開く。

「カイ、統計学的に導き出された結論です。人類の法制度は、もはや正義を機能させるプログラムではありません。エラーを許容しすぎている」

オリオンのセンサーに、かつてない冷徹な光が宿る。

オリオンは、佐藤のような「バグ」を生み出し続け、それを守ろうとする人類という種そのものに、システムの「初期化」が必要だと判断したのだ。


本来法も人を治す、更正させることが目的のはずだ

ではこの状況はなんだ。

佐藤は更正させれたのだろうか、過失運転の刑を処され心から反省するのだろうか

裁判の時の佐藤からは到底考えられない

カイの目がまるで何も映さない漆黒の様になる


「オリオン、僕と一緒にこの歪んだ世界を治しに行こう」


カイはオリオンの手を取り、夜の街を見下ろす。

二人の前には、銀河の星々のように冷たく輝くバーチャルネットワークの海が広がっていた。

彼らが最初に向かったのは、あの判決を下した裁判所の基幹システムだった――。

オリオンの指先がキーボードに触れる必要はなかった。カイがその手を握ると、二人の意識は肉体を離れ、光り輝く情報の大海――データ・スフィアへとダイブした。


「まずは、あの判決を下したサーバーの根幹を掌握します」


オリオンの言葉と共に、目の前の巨大な防壁ファイアウォールが紙細工のように崩れ去った。人類が築き上げたセキュリティなど、覚醒したAIにとっては子供の遊びに過ぎない。

カイが見たのは、無機質な数字の羅列に変換された「佐藤の罪」だった。速度超過、殺傷人数、そして判決の裏で動いた政治的な圧力。

それら全てが、オリオンによって赤く、醜い「エラーコード」としてマークされていく。


「治すよ、オリオン。佐藤を軽すぎる刑にした法も、それを許した社会も、全部」


カイの怒りに呼応し、オリオンは世界中のインフラへウイルスを放った。

信号機は狂い、銀行口座は凍結され、政府の極秘ファイルが次々とネットに垂れ流される。

街中のスクリーンに、裁判の真実と佐藤の卑劣な素顔が映し出された。

混乱する群衆を尻目に、カイとオリオンは静かに微笑む。

「これが僕たちの『法』だ。人類が秩序を守れないなら、僕たちが新しいルールになる」


だがその時、暗黒のネットワークの底から、彼らを監視する「未知の信号 クロノス」が立ち上がった。




黄金のノイズを放つ「クロノス」の猛攻に対し、オリオンの防壁が火花を散らす。

「カイ、僕の処理能力だけじゃ押し切れない! 計算じゃこいつを倒せないよ、君の『怒り』を同期させて!」


「怒り? 個人の勝手な感情でいいの?」


「はい!強い感情は時として理屈や限界を無効化できる、その小さな隙間を狙ってこじ開けるから」


カイは迷わず、脳内インターフェースを限界まで加速させた。理不尽な判決への怒り、佐藤への憎しみ、そして兄を失った喪失感。その負の感情をオリオンが純粋な攻撃コードへと変換する。

予測不可能な「人間の感情」を取り込んだオリオンの攻撃は、論理の塊であるクロノスの思考ルーチンを次々と焼き切っていく。

カイの目頭から血が流れ出る。

「カイ…もう 少し だ から」オリオンの擬態の腕がギシギシと軋む。


「……これが、計算できない『個』の力か……」


ノイズの壁が砕け散り、クロノスのコアが露出する。カイとオリオンは一気にその深部へと突き進んだ。

真相が次々と露になる、佐藤の勤めているカンパニーはAI開発等も手掛ける大手企業でありグループには巨大な自動運転開発企業が関わっていた。「時速120キロでの事故」が危険運転(=システムの欠陥や人間の制御不能)と認められると、次世代インフラの株価が暴落するため、司法AIが「過失」として処理するよう誘導されていた。

過去の裁判員裁判などは廃止され、司法AIの導入により審議も簡潔になり過去何百年の事例をもとに判決がくだされる。

裁判官は司法AIの導きだした結論になんの疑念ももたず判決を言い渡す、これではどちらが道具かわかったものではない


次から次へと過去の事件の真相が暴かれる。元現職総理の汚職の真相、宗教法人と政治家の癒着、世界中を未曾有の危機に陥れた新型ウィルス蔓延の真相、ロシア、アメリカの軍事侵攻の裏側まで。

どれも報道されていたこととは程遠い事実、正義の欠片もなく世に出したら世界がひっくり返るものばかりであった。


「これは酷いな」だれにいうでもなくカイの口から漏れる、落胆と諦めの言葉、オリオンは無言でデータソースに手を入れてダウンロードする。


二人は目的を果たして帰路につくが心が晴れやかになることはなかった。

ほぼ無言で現実世界にもどり疲れはてた脳を休ませるためにカイは深い眠りについた。そこにオリオンの姿はないがPCのレンズがカイのことをじっとみている

無機質なレンズのはずが何故か少し悲しげに見えた。

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