8 マノンとオリヴィエ
「そういえば、私が倒れて病院に運ばれた時、ライアンさんは私がマノンの転生した人だと分かっていたんですか?」
これは聞いてみたかった。どこにも接点のない人が、病院にまで連れて行き、マノンの番だなんて出来すぎているように感じたのだ。
「あの日はたまたま買い物に出ていて、通りがかったんだ。先に人はいたが、病院まで連れていく手だてを整えようとしているなら、俺が横抱きにして連れて行った方が早いと思ったんだ。距離もそんなに離れていなかったし」
少し考えるように間をおいてから、ライアンは再び話し出す。
「もちろん、マノンの生まれ変わりとは思っていなかった。でも、話していて雨の日に首の付け根が疼くと言っていただろう?傷口のへこみ具合がそっくりだった。マノンが撃ち落された時、首の付け根を撃たれていたんだ。そして、オリヴィエを運んでいるときに足首の皮膚が見えた。オリヴィエは鳥獣人だろ?」
(えっ?私、鳥獣人の血を引いていたの……?)
初めて他人から言われたことに戸惑いつつも、ライアンの言葉に耳を傾ける。
「もしかしたら、転生した時に気づいてほしかったからなんじゃないかな、なんて思うよ。だからオリヴィエと話していて、マノンの生まれ変わりかもしれないと思ったんだよ」
(初対面なのに、前世の話をするなんて珍しいな、とは思ったんだ。よほど暇なのかと……。でも、そうじゃなかった。もしかしたら、というライアンさんの思いが重なって、会話の中で気づいたんだ)
二十年たった今も、愛しているからこそ気づくことができたのではないだろうか。
そして、オリヴィエ自身、気づいていなかった鳥獣人の血を引いていることを、ライアンはさも当然かのように言ってきたことにも驚いた。
オリヴィエは足首の皮膚が一部分だけ、粗いうろこ状になっている。
オリヴィエの父も母も人であり、獣人の特徴はどこにもなかったため、なぜオリヴィエの足首がこのような皮膚になっているのか、不思議だった。
もしかすると、先祖に鳥獣人がいたかもしれないが、その血も大分薄くなっているだろう。
ライアンとマノンの短くも温かな愛情に満たされた時間を知ったことで、オリヴィエは番というものを改めて実感した。
出会ったら、離れることができないほどに相手を愛しぬく。それは呪いにも似た、しかし哀しいほどに優しい世界なのだ。
オリヴィエがヴィクトーの「番」であることで追いつめられるのは、もう少し先のことである。
9話は明日11時半に投稿します。
次はヴィクトー視点です。
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