11 ヴィクトー学校へ
あっという間に一週間が過ぎ、今日はヴィクトーが楽しみにしていた学校訪問である。
「アルノー! まだオリヴィエのいる学校へは行かないのか?」
「もうすぐ出ますよ。それにしても、いつにも増してヴィクトーが輝いているように見えるのは気のせいでしょうかね?」
ヴィクトーが見せないようにしている、番に会える高揚感をアルノーは察知しながら答えた。
内からあふれ出るヴィクトーの微笑み。幼少時から見慣れているアルノーから見ても、心に刺さるような美しさだ。
この微笑みをこれから学校という場で撒き散らしたら、卒倒する者も出そうだ、とため息をついた。
「気のせいだろ。それにしても、オリヴィエは私のことを少しは気にしてくれているだろうか」
「行ってみたら分かるんじゃないですかね?」
アルノーの返答も聞いているのか、いないのか。
そわそわしたヴィクトーは、そんなアルノーの適当な返事にムッとすることもなく、
「そうだよな!」
と明るく返事をする。
普段は自信家で、なんでも卒なくこなすヴィクトーが、番のこととなると途端にその感情をコントロールできないようである。
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皇太子に用意されている専用馬車に乗って、ヴィクトーはアルノーと共にオリヴィエのいる学校へと到着した。
念のため、アルノーはこの三日間、護衛のためにヴィクトーと常に行動を共にする。
当然見えないところにも護衛はいるが、あまりにも仰々しくなってしまうので、なるべく遠くから見守る、という方針だ。
到着したのが朝礼の直前だったため、出迎えに外に出ている生徒はいなかった。
しかし教室の窓側に座っている生徒がヴィクトー達に気づくと、あちこちの教室から悲鳴が聞こえてきた。
「ねえ! もう来てる!!」
「えっ⁉ どこ??」
「ほらあそこ!」
「皇太子殿下、カッコイイ……」
開け放たれた教室から、聞こえてくる生徒たちの会話。
初めはひそひそだったものが、段々と教室中に伝わったのだろう。窓際に人だかりができ始めている。
ここが貴族用の学校であるならば、好奇心を抑え、騒ぐ者もあまりいなかっただろうと思われるが、ここは貴族でも庶民でも通える学校なのだ。
校内では貴族庶民の区分けはされず、学年ごとの区切りで対応する。
今まであまり庶民との接点がなかったヴィクトーにとって、ここでの三日間はオリヴィエと近づく機会であると同時に、生活ぶりなどを知る良い機会だった。
「ようこそおいでくださいました。ヴィクトー皇太子殿下。これから、三日間を過ごされるクラスへとご案内いたします」
「出迎えありがとう。先生方にお願いしたいのだが、この学校で過ごす間は、特別扱いはしないでくれ。普段通りの学生の様子が知りたいのでね」
「かしこまりました」
学校長は恐縮しながらも、微笑み、どこか安堵したような表情を見せた。
学校長や教職員の出迎えと挨拶を済ませると、学校長に案内されクラスに向かった。
歩いている道中、既に番の香りが廊下に充満しているように感じる。
(この香りの先にはオリヴィエ嬢がいる! なんて甘くて優しい香りなんだ。あぁ、早く会いたい!)
緩んでしまいそうになる表情を引き締めながら歩いていると、後ろからアルノーが囁いた。
「ヴィクトー、嬉しいからって、教室に入ってすぐに抱きつくとかはやめてくださいね。まだ誰も番だと知らないんですから」
「分かっている。それに、オリヴィエ嬢を危険に晒すつもりもない」
一度病室でしっかりと番の香りを認識してからは、さらに番の香りを感じる感度が高くなっていることを実感していた。
番というものに関して知らないことがあるのかもしれない、という考えが浮かんできたが、扉を隔ててすぐそこにいるだろう番への思いでそんな考えも吹き飛んでいった。
21時頃にもう1話、投稿予定です。




