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第四十二話 正体を探るはじまり

お盆で帰省しますので、42話を上げておきます

 月曜日。

 今週金曜までに山瀬にナノマシンを付着させられないと、夏休み中の奴の行動が読めなくなる。

 三人は、かなり早めに家を出た。

 ナノマシン付きマイクロマシンは明日乃と姫子が錠剤ほどのカプセルに入れて持っている。

 海人は校舎に入ると怪獣受信機を持ったまま旧校舎の部室へと直行した。

 扉を開けるとこんな早朝から海人が来たので座敷ちゃんは驚いていたが、暑いからと気を使ってか麦茶を出してきた。


「座敷ちゃん、折り入って相談なんだけれど」と言うと、まだ何かをしようとしていた手を止めて海人に向き合って座る。


「実は、これなんだけれど」とテーブルに例のブローチのような受信機を出して見せた。

 クロームメッキのように光るブローチを座敷わらしは興味深げに見ている。


「これ、どうやら地球のどこかが宇宙人に協力して作った、怪獣のコントロール受信機らしいんだよ。それで、どうもその宇宙人とやらがここにいるらしいんだ」


 すると、何か思い当たるフシがあるのか、あ~、と口を開けるとポンと手を叩いてからこくこくと頷いた。


「あ、なんか気配とかあったんだね? なら、話が早い。今は動いていないけれど、この機械はもしかしたら、まだ機能するかもしれないんだ。それで機能すると、この学校のどこかにこの受信機があるのを知られるかもしれない。そうなると、これを回収しようとするはずなんだ。それを阻止するために、ここに置いておきたいんだけれど……」


 話を聞いて座敷わらしは、自分の胸元をポンポンと二度叩いた。任せておけと言うことらしい。


「これが作動すると、どんな反応があるのかまでは僕も知らないんです。光るのかもしれないし、音とか少しするかもしれない。出来れば観察して……」


 そこまで言って座敷わらしから、どう聞きだしたらいいのかを考えた。

(ま、いいか)


「何かあったら、お昼にここに集まった時にでも教えて下さい。万が一、危ない反応とかあった場合にはカナヅチで叩いて壊しちゃっても構わないんで」と伝えたが、座敷わらしはしばらく考えてから紙と鉛筆を取り出して(わかった)と書いて海人に見せた。


「おお! 座敷ちゃん、ナイスアイデア!」と叫ぶと座敷わらしは(謎)と一言書いた。

どうやらナイスアイデアという意味は通じていなかった。




 一方、その時、明日乃は理科準備室の前でポケットのカプセルを取り出し、左の掌の上で開けてトントンとやると黒ゴマの三分の一ほどの大きさの粒が二つ出てきた。

 その黒い粒を右手の中指の腹に乗せてから理科準備室の廊下側にある通風用の小窓付近をめがけて、軽く投げるポーズをした。

 黒い粒、マイクロマシンは窓の手前の天井に一旦取り付いてから、秒速五センチくらいの速度で移動を始める。

 そして小窓のレール付近に移動していくと、やがて見えなくなった。

 中に入った様子を見届けてから明日乃は、急いでその場から立ち去った。




 姫子は、一年二組の前の廊下にいた。

 そして明日乃と同じように天井にマイクロマシンを取り付ける為に腕を一度振り下げたところで「あれ、昴さんだ。おはようございます!」と声をかけられ、咄嗟にそのまま両手を伸ばして背伸びをするふりをしながらマイクロマシンを天井に放り投げる。

 内心かなり焦ったが何食わぬ様子で振り向くと、そこには藤宮ゆかりがいた。


「どうしたんですか? こんな朝早くから?」


「あ、うん。なんか早く来ちゃったんで藤宮さんいるかな~って思って」


 姫子が答えた瞬間にマイクロマシンが動き出す。

 姫子は見ないようにしたのだが、藤宮はチラリとそれを見た。


「昴さんって人気あるし、三年生の教室の前って一年生が行くとなんか怖いんで、なかなか落ち着いてお話もできなくって。でも、今度、宜しければお話したいなあと思っているんですけれど、どうですか?」


「ホントに⁉ よかったぁ! 朝早くきた甲斐があったよ。校内だと嫌でしょ?」と言いながら姫子もわざとマイクロマシンを見た。


「だから、外でスイーツ食べながら話そうよ!」と誘うと藤宮は意図を汲んでか「わぁ! 楽しみです‼ 他の女子には話せない秘密のお話しましょう!」と返してきた。

 その時、別な生徒が教室に入ろうとして姫子に気づく。


「あれ……昴先輩ですか⁉ 昴先輩ですよね! おはようございます‼」とやや大きな声で挨拶してきた。

 すると、他の教室にいた生徒も廊下に出てきて挨拶をし始めてしまった。


 姫子は「あっ、あっ、みんな、おはよう。藤宮さん、また連絡するね!」と言いながらピュ~ッと逃げるように去っていった。

 姫子は、彼女の苦手なギリギリのやり取りにすっかり疲弊してしまい、部室に入るなり「わぁ──、もう帰りたい! 藤宮ゆかり、思っていたより鋭くて手強い~!」と言いながら、座敷わらしが用意してあった麦茶を一気飲みした。


「姫子、別に藤宮を探るわけじゃなくて山瀬の行動を探る為に一年の教室に行かせたのに、なんで藤宮なのよ?」


 先に着ていた明日乃にたしなめられ、今度はふくれだした。

「だって、行ったら後ろから来るんだもん! いきなりだよ⁉ 誤魔化したけれどさぁ。でも、今度、お話したいって……」


 どうも藤宮のペースにやられたらしい。

 しょぼんとした姫子を残る三人が(ああ……)という目で見た。


「まあ、どんな感じになるか分からないけれど、藤宮は姫子に任せるよ。仲良くやっているんだろ?」


「うん、まあ、そうなんだけれど」


「じゃあ、今のところは問題ないってことにしとくよ。あとは、一度、昼休みに集まって画像見ながらマイクロマシンの位置とかを調整しよう。さて、それじゃ教室に行きますか」


 各自、適当に教室に向かう。

 海人は部室から出る時に「じゃあ、よろしくお願いします」と座敷わらしに一言言ってから出た。




 夏休み一週間前の教室は授業中でも、何となく全員が浮足立っている。

 そこは教師も慣れたものだ。

 生徒がまともに授業を聞いていないのは前提で「夏休みの宿題なんだが、キッチリやってこない者の二学期の成績はそれなりになるからな。遊んでばかりいないでちゃんとやらんと後悔するぞ」ときつい釘を刺してきた。

 それに対して「えーっ‼」と全員で言うのが四時限目まで毎回続いて昼休みとなった。

 そして部室に行くと既に明日乃と姫子は来ていて座敷わらしの書いた紙を見ながら話をしている。


「星野、これ見てよ。座敷ちゃんの」


 明日乃が見せた紙には(青く光った)と書いてあった。

 やはり、このブローチのような受信機は生きていたのだ。


「座敷ちゃん、いつ光ったのかな?」


(朝。あのあと)


 海人はピンときた。

 これは、チャンスだ。

 いろいろなことが紐づけできるかもしれない。


「明日乃、理科準備室の画像見られるかい?」


「ちょっと待ってね。今出すから」と言って明日乃がスマホを出すと、なんかスマホが一回り大きくなっている。

 周りに何か細かい部品がくっついていて元の外観は完全に失われていた。


「うお! なんだかごっついな? それじゃもうスマートフォンとは言えないな」


「しょうがないでしょ。ありものを後から改造したんだから。そんなことより、まず、理科準備室の様子。山瀬が入室するところから再生するね」


 スマホ……だったものの画面を見ていると山瀬がガラガラと鳴る引き戸を開けて入ってきた。

 そのまま、窓側にある机に向かうとオフィスチェアに腰かけてから右の引き出しの一番下から銀色の弁当箱の様なものを取り出した。

 マイクロマシンの位置から二台とも斜め上からの映像なので詳細までは拡大してもいまいち不明だが、表面は鏡のように光っており右側の一部に黒い箱のようなものがある。

それを机の上に置くと鏡のような表面がディスプレイになっていて、何やら文字らしきものが出ている。

 それを山瀬が見た途端、急に表情が変わり、何やらオロオロしているようにも見えた。

 そして、もう一度、ディスプレイをよく見てから首をひねっている。

 やがて弁当箱の下にB5のコピー紙を敷き、どけるとグラフのようなものやら文字らしきものが印刷されていた。

 その紙を見ながら、弁当箱の横の黒い小箱を外すと、誰かと話し始めた。

 話しながら窓の外の方を何度も見ている。

 それは、明らかに旧校舎。

 つまり、部室の方角だった。


「消失したはずの反応が今になって出たんですが、その反応が、今私が調査中の場所から出ています」通話をしている相手の声は聞こえてこない。

 明日乃との通信と同じような方法なのかどうも直接、山瀬にだけ聞こえる仕組みを使っているようだ。


「わかりました」で通信を終えた後、プリントした紙を机の上にある手提げ金庫に入れた。

 手提げ金庫の中には何枚か紙が入っているのが見えたが一瞬なので内容までは拡大しても分からない。

 その後も山瀬は落ち着きがなく何度も弁当箱ディスプレイと旧校舎を交互に見ていたが、授業の時間が近づいたのか、時計を見ると「ちっ!」と言いながら弁当箱と手提げ金庫を机の脇にあった大き目なショルダーバッグに入れると指導資料らしきものを携えて理科準備室を出ていった。


「これは! 山瀬は‼ こいつか‼」


「そうね。こいつね。でも、焦らないでもう少し見てみない?」


 確かに明日乃の言う通りだ。

 まずは、奴の行動パターンを追跡しないと。


「あら、山瀬の授業って今日は一年二組だったみたい。姫子がセットした方にも映っているね」


 ということは今日は実験ではなく教室での授業ということか。

 ここに投入された二台のマイクロマシンの一台は廊下側、もう一台は黒板の上のスピーカー箱の上からで教室全体が見える。

 しかし、なかなか山瀬はやって来ない。

 五分近くたって、ようやく一台目のマイクロマシンから廊下を教室に向かって歩いてくる山瀬が映された。

 落ち着きなく早足でだいぶイライラしているようだ。

 しかしどこかに置いてきたのか、あの大きなショルダーバッグは持っていない。

 教室に山瀬が入るとザワザワしていた教室が一瞬で静かになり山瀬が登壇する。


「起立! 礼! 着席」


「では今日は化合物と元素についてだ。教科書三十ページ。諸君も水のことをH₂Oと言ったことがあるだろう?」


 まあ、普通に授業が始まった。

 元素の周期表について黒板に山瀬が書き始めたらしくカツカツと音がしていたがパキッとチョークが折れた。


「チッ」と舌打ちした。

 そうとうにストレスが溜まっているっぽい。

 そのピリピリした感じが生徒にも伝わっているのか全員シーンとしてノートをひたすら取っている。

 ところが、その中で藤宮だけが嬉しそうにみえる。

 何が嬉しいのだろうと見ていると目線がマイクロマシンに向けられており、小さく手まで振ってきた。


「あーっ、姫子……あんた、これ。完全にバレてるじゃない! どうすんのよ!」

 明日乃が姫子を見ながら怒ると言い訳をし出した。


「だってお姉、おかしいでしょ。こんな小さいのをこの距離で分かる人いないでしょ普通。わたしのせいじゃないもん!」


「まあまあ、いいじゃないか。山瀬にバレたわけでもないし」


 画面では藤宮が投げキッスをしだしたところで「藤宮。お前、さっきから何をやっているんだ。分からないとでも思っていたのか? それとも、お前には何か見えるのか?」と山瀬に怒られていた。

だが、それに対して藤宮は言うに事欠いて「先生、すみません。わたし霊媒体質みたいで、たまにいろいろ見えちゃうんです」と返した。

 この返しに山瀬も頭にきたのか、やや大声で「だったら、旧校舎にでもいって話をして……」とまで言ったところで急に何か思いついたのか「……まあ、いい。授業を続ける」と何事もなかったかのように再び周期表の続きを書きだすと元素の覚え方を解説しだした。


「やっぱり、旧校舎、つまり、ここが気になるみたいだな」


 すると調子に乗った姫子が「でもぉ、ここ。あんたには見つけられませんからぁ! ざんねーん‼」とやったところで明日乃が頭をスパーンと叩いた。


「でも、万が一ってこともあるかも。相手の技術水準が全然わからないから」

 と座敷わらしに目をやると(心配無用)と紙に書いて見せた。


 明日乃が「わたしも認識阻害を重ねがけしておく?」と提案すると(良案)と書いてきた。

 その後、授業が終わると山瀬は教室を出た後、しばらく時間をあけてショルダーバッグを携えながら理科準備室に戻ってきた。

 そして例の光る弁当箱を取り出すと、またもや黒い部品を使って何者かに連絡をとった。


「生徒の中に認識阻害を見破れそうな奴がいるんですが、使いますか?」


 どうやら、藁にもすがるつもりなのか藤宮の言ったことを真に受けたようだ。


「え? あ、いえ。ええ。はい、申し訳ありません。しかし、どう調べたものか……。は? はい。分かり次第、連絡します」小箱を弁当箱に付けて机にしまうと、ため息をついている。

 どうやら、くだらない報告で怒られたらしい。


「今ので、山瀬が下っ端だってことがほぼはっきりしたな。それと奴がここにいた目的は認識阻害そのものだった可能性もある。そこにさらに受信機の反応まで加わったものだから、奴としては何が何でもここの秘密を探すつもりなんだろう」


 とは言ったものの海人の中では釈然としないものがあった。


(もし、認識阻害の技術解析と転用が目的なら? いや、おかしい。いくつもつじつまが合わない部分がある。これは、もしかしたら全然違う、本当の目的が別にあるんじゃないか?)


 そこまで分かったタイミングで昼休み終了のチャイムが鳴った。


イイネや星マークを頂けますと、励みになりますm(__)m

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