絶景かな?……いや、ここ魔王軍の陣地じゃねーか!
『死なずの迷宮』を攻略し、少しだけ自信をつけた一行。次なる目的地は、聖女の加護を高めるという「精霊の森」……のはずだった。
ノアール:「いい? アイリスさん。地図は渡したわよ。北に向かって進むの。北よ? 太陽の出る方向を間違えないでね」
アイリス:「心得た! 騎士の直感、北を指し示している……いざ、出発!」
カイト:「楽しみだな、旅路の弁当! ノアール特製のおにぎり……」
カイトがおにぎりを頬張ろうとした瞬間、足元の小石が絶妙な角度でカイトの靴底を弾く。
カイト:「あ。……おにぎりが……」
転倒したカイトの喉に、特大のおにぎりがスッポリ。
三途の川(本日1回目・通算15回目)
カロン:「……おかえりなさい。死因、『旅立ち5秒後のおにぎり窒息』。……カイト様、せめて街の門を出てから死んでください」
カイト:「ノアールのおにぎり……具が『梅干しの種』ごと入ってて……」
カロン:「(無言でドン!)はい、15個目。……あ、ノアール様が今、おにぎりを握りつぶしながら『もう次はこしあんにしてやる』って呪文を練ってます」
門を出た瞬間にひっくり返って動かなくなったカイトの傍らで、ノアールがプルプルと震えながら、手の中のおにぎりを「メキメキ……」と握りつぶしていた。
アイリス:「……ノアール殿。おにぎりが……おにぎりが可哀想な形になっているぞ。カイト殿も、米粒を鼻に詰めて安らかな顔をしている……」
ノアール:「(虚空を見つめ、糸のように細い声で)」
『――朝一番、丹精込めて握ったおにぎりが、殺人兵器に変わるなんて誰が予想したでしょう。梅干しの種すら噛み砕けない軟弱な顎に、私の慈悲を。……次は飲み物なしでは飲み込めないほどの「超高密度こしあん」を喉に詰まらせなさい。……【いい加減にしろよこの食い逃げバカイトォォォ・レザレクション】!!!』
シュパァァァン!!(もはやヤケクソ気味に輝く神聖な光)
カイト:「(ガバッ!)……ぷはっ! ……ただいま! ……って、ノアール。なんか今、来世の夢でおにぎりの山に埋もれてたんだけど」
ノアール:「(冷徹な眼差しで)……それは夢じゃないわ。私の呪いよ。さあ、今すぐ鼻に詰まった米粒を出しなさい。アイリス! もういいわ、勝手に進んで! どこへでも連れて行ってちょうだい!」
アイリス:「心得た! 騎士の勘は、あの不気味なトゲ付きの砦(魔王軍基地)を『精霊の家』だと告げている! いざ、前進!」
アイリス:「着いたぞ! ここが精霊の……いや、なんだか物々しいな。精霊とは、トゲ付きの肩当てをして、トマホークを振り回す種族だったか?」
ノアール:「(絶叫)それオークの精鋭部隊よ!! アイリスさん、北って言ったのに何で南の『魔王軍前線基地』に来てるのよ!!」
ルナ:「あ、あわわ……見つかっちゃいました! 敵がいっぱいです!……【広域殲滅:スターダスト・レィ】!!」
パニックに陥ったルナが、最大級の光線魔法を放つ。しかし、光線はオークたちを綺麗に避け、ジグザグに反射を繰り返して、最後は木の後ろに隠れていたカイトを背後から貫いた。
カイト:「(あ、背中からお日様が見える……)」
ノアール:(迫りくるオークの大軍を前に、般若のような顔で杖を振り上げる)
『――方向音痴に連れられて、死地へ飛び込むマヌケな盾。おにぎりの種を出す前に、自分の魂を口から出すんじゃないわよ!……【いい加減にしろよこの方位磁石バカイトォォォ・レザレクション】!!!』
ズドォォォォン!!(蘇生と同時に衝撃波で周りのオークが数体吹っ飛ぶ)
カイト:「(ガバッ!)……ただいま! ……って、ノアール! 敵の数、多くない!?」
アイリス:「む!? カイト殿、生き返るたびに衝撃波を放つとは……。もしや死ぬことで周囲を攻撃する新手の格闘術か!?」
ノアール:「違うわよ!! 私のストレスが爆発してるだけよ!!」
結局、カイトが死ぬたびに放たれる「蘇生衝撃波」にビビった魔王軍が一時撤退。その隙に一行は森へ逃げ込むことに。
カイト:「ふぅ……。なんとか助かったな、アイリス」
アイリス:「ああ、すまない。次は必ず北へ……おわっ!?」
アイリス、木の根っこに躓いてカイトにタックル。そのまま二人は崖下へ真っ逆さま。
ノアール:「一難去ってまた三途の川かぁぁぁぁ!!」




