もう限界!聖女様のパーティメンバー大募集
冒険者ギルド・掲示板前
ノアールが、ボロボロになった修道服の袖で目尻を拭いながら、一枚の紙を掲示板に叩きつけていた。
【緊急募集:前衛騎士(まともな人限定)】
内容: 主人公が死ぬ前に守ってくれる方。
報酬: 私の心からの感謝。
備考: 階段で転ばない、石を投げても跳ね返ってこない、普通に歩ける方。
カイト:「……ノアール、そんなに俺一人じゃ不安?」
ノアール:「不安どころか、私の寿命がマッハなのよ! 昨日なんて、寝返り打ってベッドから落ちて首折ったじゃない! 冒険以前の問題なのよ!」
三途の川(昨晩の出来事)
カロン:「……死因、『寝返り』。カイト様、ついにお布団すら凶器になりましたか」
カイト:「枕が少し高かったんだよね……。あ、スタンプお願いします」
カロン:「はい、8個目。……あ、ノアール様がギルドで『呪いの募集』を出したみたいですよ。不運が不運を呼ぶ予感がします
あ、あの……募集を見てきたのですが……」
現れたのは、全身を白銀の鎧で包んだ、凛々しい女騎士。腰には立派な長剣、背筋はピンと伸び、まさに「理想の騎士」そのものだった。
アイリス:「私は騎士アイリス。不運な者を守るのが騎士の誉れ……。ぜひ、貴殿らの力になりたい」
ノアール:「(目を輝かせて)これよ! これが欲しかったのよ! 凛々しくて、強そうで、何より……『普通』そう!」
カイト:「よろしく、アイリス。俺はカイト。よく死ぬけどよろしく」
アイリス:「死ぬ? ははは、冗談が上手いな。さあ、共に行こう。まずはギルドを出て右……」
アイリスが颯爽と背を向け、一歩踏み出した。
アイリス:「……いや、左だったか? いや、こちらか?(その場で高速スピン)」
ノアール:「……え? アイリスさん?」
アイリスは極度の方向音痴だった。迷えば迷うほど足がもつれ、遠心力がついていく。
アイリス:「わわっ!? 止まらん! 何もないところで足が絡まった!」
カイト:「危ない! 止まって……」
アイリス:「すまん! よけてくれ!」
ドガシャァァァン!!
猛スピードで転倒しながら突っ込んできた鎧の塊が、カイトの腹部にクリーンヒット。カイトはそのままギルドの壁まで吹き飛び、石柱に頭を強打し、吸い込まれるように意識がホワイトアウトした。
カイト:「(ぐふぉっ……)」
アイリス:「すまないカイト殿! 重度の方向音痴とドジっ子属性が相まって、何もないところで最大加速してしまった!」
ノアール:「……またか。またこれかぁぁぁ!!」
カロン:「あ、カイト様。死因……『新メンバーによる全力タックル』。……ついに他人まであなたを殺しに来ましたね」
カイト:「……でも、あの子も三途の川に来てるよ?」
見ると、隣の受付デスクでアイリスがカロンの同僚にスタンプを捺されていた。
アイリス:「いやぁ、鎧の重みで首をいわしてしまってな……」
カロン:「……カイト様、おめでとうございます。あと1回死んだら、ついにプリンです」




