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初の実戦

ツインリーフ・ステーションを出港した軽巡航艦【夕張】と駆逐艦【雪風】の2隻は、南52番回廊に向けて速度を上げていた。この回廊は西20番回廊と西18眼回廊を結ぶ回廊で、コンテナ船の行き来が多い。客船などは費用がかさんでもロングジャンプをしてしまう為で、回廊内が低予算で運行されている中小企業のコンテナ船が多くなってしまうのは必然だった。


「艦長、ロングレンジのレーダーに反応有りです。4隻共にコンテナ船の識別信号を発していますが、回廊の管制ログに通行履歴が有りません」

「回廊方面から来るのに回廊を使ってないって事か。食いついたかな?」

「おそらく。どうしますか?」

「取り敢えず様子見だな。仕掛けてくるとしても3日後だろうし、戦闘になるとすればさらに半日後だろう。警戒体制に移行してくれ」

「了解です」


目視する前には結果が出ていることの多い宇宙での戦闘だが、レーダーのレンジに入ってからが長い。その間に相手の素性を調べ、も少し距離が縮まれば電子戦に入る事になる。


お互いが進路を変えずに相対する軌道を通って3日。相手の識別信号を紹介しても問題は出てこないが、データ上の質量と測定値が違い過ぎるので、海賊船とみて間違いないだろう。緊張感が艦全体に漂う中、もう少しで戦闘に突入する頃合いとなった。


「総員戦闘配置。最大望遠でも見えない距離だろうから、【夕張】は全砲塔を展開しておいてくれ」

「「了解です」」


最大望遠の光学カメラで相手を識別できる距離に接近するころには、フリゲート艦のレーザー砲の射程圏内に入っている。おそらく相手の射程距離はこのクラスだろうと想定している。

相手が海賊船であれば、通常レーダーの範囲に入る前に電子線になるだろう。この相対速度ならば15分はかからないと思われる。


他星域からツインリーフへ向かうコンテナ船団であれば、回廊の通行記録が無いのは不自然だ。宇宙空間で積み荷を移すことは、密輸でない限り一般的には有りえない。この辺りは、航路から少し外れただけで大きめの星の欠片が多いので、海賊が潜む場所には困らない場所なので、食らいついた獲物であれば美味しく頂くことにしよう。


「後藤艦長へ。こちら【雪風】、敵勢力からの火器管制へのハッキングを確認。敵勢力と断定しました」

「こちら後藤、了解した。これより対艦戦に入る。総員ヘルメットのバイザーを降ろせ。敵艦艇をα(アルファ)からδ(デルタ)と呼称する。【夕張】の主砲でα・β(ベータ)を、副砲でγ(ガンマ)を攻撃対象とする。【雪風】はδを攻撃せよ。攻撃パターンはDだ」

「「「了解」」」


【夕張】も【雪風】も、火器管制システムは外部からアクセスできないように設計されている。ダミーでセキュリティー高めの火器管制システムを積んでいるので、敵はそちらを一生懸命ハッキングしている事だろう。火器管制へのハッキングが【雪風】だけと言うことは、ステーションなどで艦を目視されていた可能性がある。

もう少しすれば【夕張】の航行システムにもハッキング行われると思われるが、こちらも外部アクセス不可だ。ダミーと遊んでいてもらおう。民間船と侮ってもらっていた方が仕事もやり易い。


攻撃パターンは5種類想定している。

今回のパターンDは進路を敵に正対させ、相手の想定射程圏内に入る前に【雪風】から威嚇砲撃を行う。当てない事により相手側の妨害が効いているように見せかけ、こちらの安定射程圏内に入ったタイミングで一斉射撃を行う。

おそらくは一撃で沈められるとは思うが、沈まなかった場合はすれ違う前にもう2射くらいはできるはずだ。仮にすれ違ってしまっても、【夕張】の副砲と【雪風】のレールガンで後方から撃たせてもらえばよい。


「【雪風】が威嚇射撃を行いました」

「陣形を雁行陣へ移行。艦をスライドさせて【夕張】を【雪風】の陰から出し、砲撃位置へ」

「右舷全スラスター全開。3、2、1、左舷スラスター噴射、【雪風】との相対位置固定完了」


【雪風】を前にして1列の長蛇陣形から、【夕張】の位置を少しずらした雁行陣へ移行する。

向こうはまだコチラを射程に収めていないのか撃ってはいないが、エネルギー反応が大きくなってはいるのでチャージしている最中かもしれない。


「1番から3番、αをロックオン」

「4番から6番、βをロックオン」

「7番から12番、γをロックオン」

「一斉砲撃まで残り10秒、7、6、5、4、3、2、1」

「撃て!」


射線が開いた事で一斉射撃の準備が整い、【夕張】からは50口径の主砲6門と、40口径の副砲6門から標的に向かってレーザーが走る。αとβはレーザー砲の直撃を受け轟沈、γは大破し進路をずらして漂い始める。予想通り過剰攻撃だったようだ。

【雪風】から50口径主砲4門のレーザー攻撃を受けたデルタも轟沈する。

さて、取れるデータはあるだろうか。


【雪風】に周辺の警戒を任せ、【夕張】は少し前まで船であったデブリの中を進む。回転衝角が有るので、船体にダメージを負うことは無い。漂う大破したγに接近し、船内をスキャンする。


「周辺に生体反応は有りません」

「コクピットモジュールは残っているな? ビーコンを撃ち込んでくれ。それと、連絡艦へ通信を。海賊行為を受け、これを撃破。残骸の確認を求む。と」

「了解です」

「戦闘体制を解除する。体調の悪くなった者は居るか?」

「各セクションからの異常のコールは有りません」

「【雪風】も問題なしです」


悪党とは言え、人を殺したことには変わりはない。しかも問答無用での攻撃にもかかわらずだ。それでも変調をきたす者が居ないのは、頭をいじられている影響が大きいのだろう。

人としてどうかとも思うが、戦闘艦乗りとして助かるとも言える。


さて、次の戦場に向かうとするか。


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