事前準備
軽巡航艦【夕張】と駆逐艦【雪風】の2隻で構成された特務部隊の面々は、太陽系が含まれる天の川銀河のオリオン・はくちょう碗から飛び出し、隣のいて・りゅうこつ碗で海賊退治を行うことになった。
この碗は銀河の中心に向かうにつれて帝国の勢力圏から外れ、いくつかの小国と滅びた多くの荒廃した地域となる。帝国の星域内は整備された回廊があり、用途別に改良された恒星や大規模宇宙ステーションが回廊の要所に置かれていたが、辺境区に近付くほどそこに来る船を狙った海賊行為が横行していた。
ツインズリーフ・ステーションは西20番回廊と南52番回廊の分岐に在り、貿易の要所となっている。タンカーやコンテナ船が行き交うこの宙域は、130年前の大規模戦闘で寸断廃止された69番回廊から入り込む略奪船が現れる事でも有名なのだそうだ。
もちろん帝国軍も警備用の艦艇を派遣してはいるが、なかなか海賊行為の撲滅には至っていなかった。そこで白羽の矢が立ったのが僕らと言うわけだ。
軽巡航艦である【夕張】は砲塔類を格納してしまえば、ショートジャンプができる程度のクルーズ船サイズだ。そこに派手なカラーリングを施されたため、金持ちの個人クルーザーにしか見えないらしい。駆逐艦【雪風】も小型フリゲート艦サイズなため、私設の護衛艦にしか見えない。フリゲート艦はミサイルと中出力レーザー砲を備える戦闘艦で、駆逐艦である【雪風】と比較すると戦闘能力が桁違いに低い。
「ツインズリーフ管制へ。こちらGSSBC-339261、ランチェスカ商会所属の【マインスイーパー】。護衛艦のGSSBC-920187【スノーウィン】と併せて接岸の許可を乞う」
「ツインリーフ管制塔からGSSBC-339261へ。所属の照会が済んだので、接岸を許可する。47番埠頭に揃って接岸せよ。但し、護衛艦の火器管制システムはコチラでロックする。パスコードを送られたし」
「GSSBC-339261からツインリーフ管制塔へ。47番埠頭への接岸を了解した。パスコードを送るので確認および処置されたし」
「ツインリーフ管制塔からGSSBC-339261へ。ロックを確認した。ようこそツインリーフへ。楽しんでいってください」
こちらの2隻は共にダミーの火器管制システムを持っている。回廊の通過やステーション等に寄る際には火器管制のロックを求められることがあるが、日本人ように組まれた火器管制システムはセキュリティー上外部と遮断されている。そのままでは寄港もできないと言うことで、外からアクセスできる火器管制システムをダミーで構築してあった。露呈すれば大問題になるが、そこは帝国軍の軍艦と言うことで大目に見てもらえるらしい。勿論、火器管制システムはコチラ側でロックは成されている。
接岸区画は2桁だったので、事前に調べた情報通りならば上客用の区画だ。
旨い物でも食べようと言う話をしていたのを基地司令が聞きつけ、折角だからと高級ホテルの予約をしてくれていた。彼に言わすと中の上クラスらしいが、経費で落ちるギリギリを責めたと笑っていた。お言葉に甘え、餌役として人目に着く行動を心がけようと思う。
桟橋を挟んで並んで接岸し、システムを三重にロックして艦を降りる。これで進入されることはまず無いだろうし、帝国軍の情報収集艦が1隻このステーション内にいるので監視はお任せした。
ホテルから迎えの車が来るのだが、帝国軍の軍服という訳にもいかず、僕と真琴、亜紀良、美咲は中央で人気のビジネスマン向けスーツを着ている。他のメンバーは有名な警備保障会社の警備スーツで、腰に銃を下げている。どれも基地を出る前に諜報部の備品だと渡されたものだ。僕を含めて皆が銃の訓練も受けていて、僕以外は結構な成績だった。
迎えの車に分乗して送迎してもらう。
ホテルは港に近い場所に在り、遠目に見える商業区の建物に比べれば小さいが、華美でなく落ち着いた感じのホテルだった。日本ではビジネスホテルくらいしか利用したことが無い実としては、少し気後れしてしまうが慣れている風を演じる。
「ぷっ。緊張しているんですか?」
「こういった所は初めてだからね」
「フロアー貸し切りですよ。最上階ではないですけどね」
「食事も同じフロアーのホールで食べれるって言ってたよ。どんな料理が出るんだろうね」
「酒類はほどほどにな」
1フロアーに4人部屋が10部屋と、食事や会議に使える部屋がある。湯に浸かる文化が無いので風呂は無いが、各部屋にユニットバスが有るのでシャワーは浴びる事ができる。部屋割りは僕が1人で、残りのメンバーは仲の良いもの同士で部屋割りをしていた。が、おそらくは2泊する間に僕の部屋を利用する順番も既に決まっているようだった。
その辺は真琴たちが仕切っていて、僕から言い寄ることは無い。パワハラ案件にならないようにとの配慮だ。メンバー全員に対して好意はある。それが愛なのかは実は分からないでいるが、既に全部で13人と関係を持っていた。
2泊して食事も酒も多く消費し、僕の資産の8割ほどを食い潰して買い物も派手に行った。ちゃんと餌としての役目は果たせただろうか。
答えは明日の出航以降となる。




