006 道端に落ちていた貴族
その夜、ネネは夢を見た。
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帝国のとある森林地帯、土の中に埋もれていたものを確認してネネは声をかけた。
「どうか、どうか……ここでお過ごしください。必ずあなたが過ごせるようにします」
優しく声をかけると、さわさわと柔らかい風が吹いた。それが答えに感じてネネは立ち上がった。
若い頃のネネは、実家が没落したばかりで預けられた家の手伝いをしていた。
彼女の手伝いは、国中の忘れ去られていた遺跡を見つけ出すこと。そして遺跡にはどんな神様が祀られていたかを調べることだった。
他国から入った宗教。ロマ教ノンナ派の影響で、国古来の信仰対象のものはないがしろにされ、邪教と呼ばれる時期があった。
そして土着の神様は、力を失う者が大半だった。中にはないがしろにされたことに怒り、邪神に成り果て土地を呪う者もいた。
ネネは神の棲家だったと思われる遺跡を見つけ出して、どのような神様がいたかを調べて、周辺の者たちに教える活動をしていた。
これにより邪神の被害を抑えられた。
(神様からしたら今更都合のいい話よね)
荒れ果てた遺跡をみてはネネは思った。
だが、このままにしておく訳にはいかず、ネネは遺跡探索を続けた。
お弁当のパンを頬張りながら別の遺跡へと向かう。そんな道中に、ネネは男を拾った。
「うぅ、……お腹が空いたよぅ……」
「あの、残りでよければ食べます?」
情けない声にネネは呆れた。あまりに不憫で、弁当の残りを彼に渡す程だった。
「うまい、うまい……これは何だ?」
「そば粉で作ったパンに、ハムとチーズを挟んだものです」
家で教わった簡単なパン料理であった。蕎麦粉は安く、比較的手に入れやすい主食だった。
「君が作ったのかい。うまうま……君は料理上手なんだねぇ」
男はネネの頭を撫でて笑った。
「もう、子供扱いをしないで。これでも成人した成人レディなのよ!」
およそ令嬢らしくない仕事をしてはいるものの、それでも元は子爵家の令嬢だったと自負がある。
年相応以下の扱いをされると嫌だ。
「これは失礼した。私はアレクサンダーといいます。レディ」
男はしゃんとして膝をついてネネに手を差し出した。
「どうか、あなたの名前を知る権利をお与えください」
仰々しく言われて、ネネは頬を朱に染めて目を伏せた。
「ネリーネイオミ・ローザンよ」
「ああ、ローザン子爵家のご令嬢でしたか」
まるでネネの実家のことを知っているような言い方であった。
「もう存在しない家よ」
お世辞でも良い家と言えない。負債をかかえたまま父母を亡くし、家を失い、平民の家に厄介になった身の上である。
「いいえ、ローザン子爵家はまだ存在します」
「既に没落した、爵位も、領地もない、当主もいないのに?」
しかも、残された令嬢は、令嬢とは思えない仕事をしている。土を掘り起こして遺跡を探索する作業は貴族から見たら奇異に見えるだろう。
「当主はいるではないですか。ここに」
アレクはネネをまっすぐ見つめた。
「ネリーネイオミ嬢。あなたを探していました」
後から知ったが、アレクの本名はアレクサンダー・ラニテル。
ラニテル公爵家の子息だった。




