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おばあちゃんは心配で、心配で、安らかに眠れません!  作者: ariya


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020 コンスタンス②



 エッグタルトを持って庭で剣の稽古をしていたコンスタンスたちにネリーネイオミは声をかけた。


「ねぇ、コンスタンス。困っていることや悩んでいることはない?」


 アレクサンダーに言われていた通り、そのままネリーネイオミはコンスタンスに声をかけた。


 エッグタルトを頬張っているコンスタンスはごくりと食べていたものを飲み込んだ。

 しばらくして答える。


「問題ありません。お祖母様の手を煩わせる必要なく、自分でできます」


 模範的な回答だった。


 8歳にしては妙な壁を作っているようにみえた。


「エッグタルト、美味しかったです。素振りを再開してきます」


 コンスタンスは礼をしてそそくさと稽古へと戻った。


 ネリーネイオミは、エッグタルトをまだ食べているカレンに声をかけた。


「最近のコンスタンスの様子はどう?」


 自分に質問がきてカレンは答えを考えあぐねていた。


「特に、問題は……何かあれば私やブラウン夫人に相談していますし、それで解決できているように思います」


 ブラウン夫人は、コンスタンスのナニー兼家庭教師として雇った女性である。

 長男嫁のエリザベスの寄宿学校時代の同級生らしく、エリザベスが生前残したコンスタンスの家庭教師の候補リストに載っていた為採用した。


 2年前に夫が他界しており、家庭教師の仕事をしながら生計を立てていたようだ。

 幼い子もいるが、夫の父母が健在なため養育をそちらに任せているようだ。


 すぐにコンスタンスと打ち解けて教育熱心な女性だった。



(コンスタンスは全く悩みがない訳ではないようね)


 自分のもとに悩みの相談が来ず、ネリーネイオミは寂しく感じた。

 それを察したのか、カレンは付け足す。


「奥様が忙しいのを気にしておいでで……」


「そう。いつもありがとう」


 ネリーネイオミはカレンの頭を撫でた。カレンは目を閉ざして、それを受け入れる。


(まだまだコンスタンスの声かけが足りていないのよ。コンスタンスが気軽に声かけできるくらい時間を作らなきゃ)


 それからネリーネイオミはコンスタンスの剣の稽古には必ず時間を作るようになった。


 できれば午前の授業にも参観したかったが、それはブラウン夫人に止められた。


「コンスタンス様は非常に熱心な生徒で……ただ、少し過敏なところがあり奥様がいると勉強に集中できないようです」


 勉強熱心なコンスタンスの邪魔になるかもしれないと言われてネリーネイオミは引き下がった。

 だが、剣の稽古は違うようで、その時だけはネリーネイオミは庭を訪れるようになった。


「奥様、今はコンスタンス様は素振り100回に集中しており……」

「ええ、待っているわ」


 カレンの説明にネリーネイオミは頷いた。

 すでにノルマを終了したカレンはネリーネイオミの側にはべる。


「カレンは鍛錬場に顔を出しているのよね」


 最近のカレンの様子を思い出して声をかけると、カレンは嬉しそうに頷いた。


「はい。騎士団の鍛錬場を見学させていただいています。……受け身ができるようになれば手合わせをしてくれることになっています」


 カレンは12歳にしては体格は良いのだが、騎士団の男たちと手合わせしたらまだ危なそうだ。


「そう、頑張ってね……見学は午前かしら。手合わせできるようになったら教えてね」

「はい!」


 嬉しそうな返事にネリーネイオミは頬を緩ませた。


(カレンの方が感情の表出ができている)


 ネリーネイオミは違和感を覚えた。


 年相応の反応をみせるカレン、それより4歳も年下というのに感情表出が希薄なコンスタンス。


 それぞれの個性といえばそれまでであるが、どうにもネリーネイオミは気になった。


(そういえば、午前中の授業はカレンは参加していなかった。鍛錬場の見学を始めてから授業はコンスタンス一人……)


「ねぇ、カレン」


 もう一度ネリーネイオミはカレンに声をかけた。


「カレンが見学を始めたのはいつだったかしら?」

「3年前……、恥ずかしながらまだまだ受け身がとれず、でも必ず今年は取れるようになって見せます!」


 時間がかかっていることにカレンは顔を真っ赤にしていた。


(まだカレンは12歳だから、そう急がなくてもいいのに)


 ネリーネイオミは微笑ましく感じた。


「お疲れ様、コンスタンス」


 素振りが終わったのを確認して、ネリーネイオミは孫に声をかける。

 ネリーネイオミは手拭いでコンスタンスの汗を拭おうとした。


「自分でできます」


 コンスタンスは手拭いを奪い、自分で汗を拭いた。

 ネリーネイオミは寂しげにコンスタンスを見つめた。


(あら……)


 彼の目の下に隈ができていた。


「ねぇ、コンスタンス。ちゃんと眠れているの?」


 突然の質問に、コンスタンスはさぁっと表情が変わる。あまり触れられたくないことのようだ。


「眠れています」

「疲れていない? 明日は授業を休んでも……」

「いえ、授業は遅れているので、休みません」


 コンスタンスの言葉にネリーネイオミは首を傾げた。


 まだ8歳のコンスタンスの授業が遅れているなど、ありえない。


 まだ読み書きと、礼儀作法を身につけさせるだけで十分な段階である。

 本を読ませて、少しずつ読める本を増やしていく。軽い絵本、児童向けの小説で十分であり、そこまで急がなければいけない授業ではないはずだ。

 

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