第8話 条件その1 若い時の私だったら
「今の私が、若い時の私だったら。」
理美は、そんなことを時々考える。
二十代前半。
大学を卒業した頃が、体力も記憶力も、一番充実していた頃ではないだろうか。
今まで五十三年間積み重ねてきた知識や経験を持ったまま、もう一度あの頃の自分だったら。
今の若い子たちにも、絶対負けない。
そんなことを思うことが、時々あった。
だから、一つ目の条件を思いついた。
「JINさん。」
「はい。」
「まず、一つ目の条件なんですが。
分身って、二十二歳頃の私にすることはできますか。」
「できます。」
「でも、一つだけ絶対に守ってほしいことがあるんですよ。」
「何でしょう。」
「先ほど、ラジオ配信で使っている画像のような可愛い女の子にもできるって、おっしゃいましたよね。
でも、私はあれは嫌なんです。
私は、若くて可愛い女の子になりたいわけじゃありません。
二十二歳頃の、私なんです。
私は、自分自身を認めてもらいたいんです。
JINさんが作った可愛い顔を褒められても、嬉しくないんですよ。」
JINは、はっとした。
「……ですよね。
申し訳ありません。
私は、なんて浅はかだったのでしょう。
一年間もソフィーさんの配信を見てきたのに、一番大切なことを分かっていませんでした。」
JINは、異世界の神様でありながら、自他ともに認める熱狂的なソフィーファンである。
そのわりには、一番大切なことを分かっていなかった。
推しのことを分かっていなかった自分に、かなりショックを受け、落ち込むJINである。
「もちろんです。
二十二歳頃の理美さん、そのままのお姿をご用意します。」




