第4話 推し活
JINは黙ってしまった。
理美の言うことは、その通りだった。
JINは、自分の世界をより良くするため、昔から地球を見ていた。
特に日本という国には強く興味を持っていた。
最初は文化や技術を学ぶためだった。
しかし、いつしか目的は変わっていった。
Instagram。
動画配信。
短い動画。
ラジオ配信。
日本には、次から次へと面白いものがあった。
今では世界づくりの勉強というより、日本という国そのものを楽しむことが目的になっていた。
そして、数ある配信の中で出会ったのが、ソフィーだった。
ソフィーが話していることは、特別な出来事ではない。
日常のちょっとした出来事。
食べ物の話。
家族の話。
健康の話。
けれど、ソフィーが話すと、それがなぜか面白い。
独特の考え方。
物事を見る視点。
その時話していた内容に合わせて、替え歌を作ることもある。
歌も上手い。
配信には、いつものリスナーが集まる。
大勢ではない。
でも、いつものみんなで、わいわい話している。
まるで、面白いママがいるスナックに集まっているような時間だった。
JINは、その時間が好きだった。
だから毎週土曜日を、本当に楽しみにしていた。
しばらくして、JINが口を開いた。
「ありがとうございます。」
「え?」
「理美さんのお話を聞いて、私も軽く考えすぎていたと分かりました。」
少し間が空く。
「ですが……私は、本当にソフィーさんの配信が好きなんです。」
理美は少し照れくさそうに笑った。
「以前、瀬戸内寂聴さんのモノマネをされていましたよね。」
理美は人間観察が得意だった。
声そのものを真似るというより、その人の話し方や癖、雰囲気をつかむのが得意である。
「ええ、やりましたね。」
「実は、私は瀬戸内寂聴さんを知りませんでした。
気になったので、向こうの世界まで見に行ってきました。
本当にそっくりでした。」
向こうの世界。
瀬戸内寂聴は、すでに亡くなっている。
つまりJINは、本当にあの世まで会いに行っていたのである。
理美は思わず吹き出した。
「それ、本当の意味で聖地巡礼じゃないですか。」
どうやら異世界の神様のくせに、JINは本気でソフィーの推し活をしているらしい。




