第3話 JIN
まばゆい光が消えた。
理美はゆっくり目を開ける。
目の前には、大きなモニター。
床一面にはマットが敷かれた狭い個室。
「え?……ここ、快活クラブの個室だよね?」
その部屋には、一人の男性がいた。
五十代くらい。
少し大きめの会社の営業課長のような雰囲気だった。
男性は軽く頭を下げる。
「初めまして。JINです。」
「……JINさん?」
「はい。」
毎週土曜日になると必ず配信へ来てくれる、あのJINさんだった。
「DMで、お話ししたいって……。」
「はい。」
「Instagramの通話かと思ってました。」
「申し訳ありません。」
理美はもう一度部屋を見回した。
「ここ、本当に快活クラブですよね?」
「はい。地球の定宿です。」
「定宿……。」
理美は状況が飲み込めない。
さっきまで実家にいた。
JINは静かに話し始めた。
「申し訳ありません。
まだ一番大切なことをお話ししていませんでした。
私は、異世界の神です。」
「……異世界の神。」
普通なら信じない。
でも、今の状況が普通ではない。
それに理美は昔から、異世界を題材にした漫画や小説を読むのが好きだった。
だから、
「そういうこともあるのかもしれない。」
そんなふうに思えた。
「一つ、聞いてもいいですか。」
「はい。」
「ここ、日本ですよね?」
「はい。
私は週に一度だけ地球へ来ています。
自分の世界から配信を見ることはできます。
ですが、地球へ来るには力を使います。
一週間ほど少しずつ力を貯めて、ようやく一度だけ来られます。
感覚としては、お小遣いを少しずつ貯めて、遊びに来るようなものです。
ですから、リアルタイムで配信へ来られるのは土曜日だけです。
平日は自分の世界からアーカイブを見ています。」
「ああ。
だから平日の配信も知ってたんですね。」
「はい。
それと、今ここへ来ていただいているのは、理美さんご本人ではありません。
意識だけです。
お体は実家で眠っています。
地球では大きな力は使えません。
ですが、お母様の肩くらいでしたら治せます。
ですから、土曜日の配信を続けていただけませんか。」
「いや、そんなことしたらダメでしょ。
昨日まで骨折していた人が、朝起きたら治っていたら、お医者さんがびっくりします。
そんなことしたら、現実がおかしくなります。」
JINは少し考えた。
「でしたら、皆さんの記憶を……。」
「いや、それ怖いですって。
病院の先生もいます。
家族もいます。
配信でも話しています。
どこまで分かって、誰の記憶を消すつもりなんです?」
JINは黙ってしまった。




