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第19話 条件その12 異世界配信者

衣食住


身体


老化


寿命


死んだ後のことまで決めた。


理美は、かなり先のことまで考えた気がする。


そこで、ふと思い出した。


「そういえば、JINさん。」


「はい。」


「私をそちらの世界へ呼びたい理由って、配信でしたよね?」


完全に忘れていた。


条件


条件


また条件


異世界でも今と同じ生活をすることばかり考え、自分の暮らしを整えることに夢中になっていた。


そもそもJINが理美を自分の世界へ呼びたいと言い出した理由は、配信である。


当初の目的を、すっかり忘れていた理美であった。


「私、そちらへ行ったら、どうやって配信するんですか?」


「JINさん、今までもアーカイブ見てたんですよね?」


「はい。」


JINは、日本へ来られない日も、理美の配信アーカイブを見ていた。


理美は少し考えた。


「じゃあ、それ、一緒に見ません?」


「一緒に、ですか?」


「はい。私、日本の私が前の日に何を話したか知らないじゃないですか。」


異世界の理美にとって、日本の理美の配信は初見である。


日本の理美が前日に行った配信を、翌日の夜八時に異世界の理美とJINが一緒に見る。


理美は想像した。


そして、思いついた。


「千鳥の『相席食堂』みたいにしません?」


「相席食堂、ですか?」


「はい。気になったところで止めるんです。」


理美は身振りを交えて説明した。


「私が『ちょっと止めてください』って言ったら、そこでアーカイブを止めてもらって。」


「はい。」


「これはね、この時の私、本当はこう思ってるんですよ、とか。」


理美は続けた。


「この話、実はこの前にこういうことがあったんですよ、とか。」


「はい。」


「ここ、ちょっと盛ってます、とか。」


JINが笑った。


異世界の理美は、日本の理美が前日に何をしたのかは知らない。


しかし、同じ理美である。


日本の理美がなぜその言葉を選んだのか。


本当は何を思っていたのか。


どこまでが本当で、どこを少し面白くしたのか。


おそらく分かる。


アーカイブを再生する。


止める。


理美が話す。


また再生する。


また止める。


自分の配信を、自分で見ながら解説する。


そんなことは、もちろん一度もしたことがない。


誰かがやっているのを見たこともない。


自分にとっても、初めての試みである。


理美は、少しワクワクしてきた。


「それは……かなり楽しみです。」


JINの顔が、明らかに明るくなった。


これまでJINは、一人で理美のアーカイブを見ていた。


今度は、そのアーカイブを理美本人と一緒に見る。


しかも、その時、本当は何を考えていたのか。


配信では話さなかった裏話。


話を少し盛った場所。


その後どうなったのか。


熱狂的なファンにとっては、かなり嬉しい話らしい。


推し本人と見る、推しの配信。


しかも、本人による解説付きである。


JINが喜ばないはずがなかった。


「じゃあ、日本時間の夜八時にしましょう。」


「毎日ですか?」


「前の日に日本の私が配信した日は、毎日です。」


理美は、異世界でも日本時間で生活すると決めている。


日本で配信をしていた時間も、基本的に夜八時だった。


ちょうどいい。


「あと、配信アプリも、日本で私が使ってるのと同じようなものを作ってくださいね。」


「分かりました。」


「アイテムも同じ感じで。そこはいつもの、JINさんの見たものを作れる力で。」


「はい。できますよ。」


便利な神である。


そこで理美は、もう一つ大事なことに気づいた。


「JINさん。投げ銭はどうするんですか?」


「投げ銭ですか?」


「はい。」


「理美さんを、お金に困らせることはありませんよ。」


「いや。そういうことじゃないんですよ。」


理美は、お金のために配信を始めたわけではない。


生活費を稼ぐために配信をしていたわけでもない。


それでも、投げ銭は嬉しかった。


自分の配信を楽しいと思った。


面白かった。


今日は投げたいと思った。


その気持ちが、アイテムやポイントという形になって届く。


理美にとって、投げ銭は配信に対する評価でもあった。


「評価のない配信って、私にはちょっと考えられないんですよね。」


JINは黙って聞いている。


「だから、面白かったと思った分だけ投げてください。」


「分かりました。」


「面白くなかった日は、投げなくていいんですよ。」


「…………はい。」


熱狂的なファンというものは、配信が面白かろうが面白くなかろうが、何でもかんでも投げる生き物ではあるが。


それはそれで、推し愛である。


「日本円じゃなくて、そちらの世界のお金で投げてもらうことはできます?」


「できますよ。」


「ちなみに、そちらのお金って、日本円だとどれくらいですか?」


「分かりやすく換算すると、一円が一ゼニーくらいですね。」


「じゃあ、ゼニーでお願いします。」


JINが投げたゼニーは、理美のお小遣いとして貯める。


生活に必要なものは、JINが用意してくれる。


お金に困ることもない。


それでも、自分のお小遣いくらい、自分の配信で貯めたい。


貯まったゼニーで、いつか何かを買う。


何を買うかは、まだ決めていない。


そもそも、現地に何が売っているのかも知らない。


それは、その時に考えればいい。


また一つ、楽しみが増えた。


「あ。」


理美は気づいた。


「土曜日、日本の私は配信してませんよね?」


「はい。」


母を実家へ連れて行き、そのまま一泊する。


現在、日本の理美は土曜日の配信を休んでいる。


ということは、日曜日に見るアーカイブがない。


理美は少し考えた。


「じゃあ、日曜日だけ、私が普通に配信しましょうか?」


「えっ?」


「アーカイブを見るんじゃなくて、私が新しく配信します。」


「いいんですか?」


「いいですよ。」


JINの鼻息が、少し荒くなった。


自分一人のために、推しが新しい配信をする。


もしかすると今、JINのテンションは最大値に達しているのかもしれない。


「リスナー、JINさん一人ですけど。」


「全く問題ありません。」


即答だった。


月曜日から土曜日までは、前日の日本の理美の配信を見る。


気になるところで止める。


裏話をする。


ツッコむ。


また再生する。


そして日曜日だけは、異世界の理美が新しい配信をする。


リスナーは一人。


毎週一万ポイントを投げていた太客である。


今度はゼニーを投げる。


しかも、この配信アプリの運営者はJINである。


日本で配信していた時は、投げてもらったポイントが、そのまま理美の収入になるわけではなかった。


運営を通し、理美の手元に入るのは、その一部である。


しかし、JINが運営し、JINが投げ、理美が受け取る。


一万ゼニー投げれば、一万ゼニー入る。


中抜きゼロ。


私、異世界では相当稼げるライバーだな。


異世界唯一の稼げるトップライバー、爆誕である(笑)

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運営さんに通報案件やな笑笑笑
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