22.
「世界を、終わらせる?」
疑問が溢れ、それは彼女への問いとなった。
──回答を期待していたわけではない。反射行動の延長。既に『剣』に、それらを満足に思考するだけの意識は残っていない。
「……簡単な事だよ。実に簡単な事だ。ただ大規模な魔法を、限界まで引き出した魔力を、このまま『世界』ってヤツに叩き付けてやればいい」
彼女の頬は緩んでいた。
声色は酷い諦観のそれだと言うのに。
「私なら、できる。一度だって考えなったわけじゃない──考えた結果、私はそれから六千年。死なない事がわかっていたからやらなかっただけで、大量殺人者になる準備はできているよ」
ゆるり、と『徽』は両手を掲げる。
その行動の意味を『剣』が理解するのは、一瞬だった。
──彼女の魔力が乱れている。正確には、彼女の魂が。
「何を、」
「魔法使いとしての試験さ。いつも私は、使う魔力を制限させるようにしていたの。覚えてる?」
ただ静かに。
その手に、目も眩むばかりの光が収束していく。
膨大な出力。異常な魔力。それの出処は、果たしてどこからか。
「知っていたんだよ。人間の魂を削り落とせば、そのまま魔力にできる事。不可逆だけど、私達の魂ってヤツは便利に使える事。何度かやってきてる事だからね」
光は、杖の形を作っていく。
『剣』が見ていた『徽』の魂は、いつの間にか半分程度までに小さくなっていた。
それは、彼女の魂の半分が、その手に変換されたという事。
「望んだ『結果』の呼び方は知ってる。こうすれば『世界が終わった』という結果を手繰り寄せる事ができる。だったら、私は」
「待て──」
ようやく、声に意識が追いついた。
愚行。に、思えていた。
彼女の行動は、まるで駄々をこねる子供のような。
「あの植物達は殲滅した。この国に人間は……残ってない。だったら他の国は無事なんだ。世界を終わらせるなんて、短絡的すぎるだろ」
「次が無いって言い切れるの?」
声は、諦めの色に満ちていた。
「──私は結果を知らないよ。見るのが怖くて、見ようともしていない。だから次が無いなんて、断言できない」
「アンタは、」
「私はね。起こらない事を、起こらないって断言する事ができないんだよ」
大きく「杖」を振りかぶる。
それこそ、世界を叩き割れる程の魔力塊を。
「このまま世界が続いたら、きっと同じ事が起こっていく。魔法がある事自体が間違いなんだ。魔法ってヤツは、人の手に余るものだった。その発端は私だった。責任くらい、取らなくちゃね」
「……それは」
問いを零す。
納得がいかないから、彼女をただ、問い質す。
「アンタは、それで良いのか?」
「うん。やだ。──やだな」
僅かではあるが、確かに声は震えていた。
それを聞いた以上。
その一歩は、迅速だった。




