表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/29

15.

 馬鹿な人間は居るものだ。


 命知らず、というよりは。

 過度な楽観、と言うべきで。

 

「ぎっ、ひ」


 もう少し警戒されていれば、こんな事はできなかった。

 もう少し安全に立ち回られていたら、この生存は望めなかった。

 だから。


「ひひっ、ひ──ひ」



 その骸の有様は、自業自得だ。



「ひっ、ひ……簡単、簡単。実に愉快。斯様に容易であるのなら、ここまで注意を払わずとも……」


 路地裏。

 腐臭。

 黒い足跡。

 幽鬼が如く歩く姿は、つまり。


「『剣』……と、言ったか。ひひっ。流石にそのような化物に目をつけられるのは避けねばならんが、何。愚か者に限れば、難など無い事がよくわかる……」


 ──路地裏にふらりと踏み込んだ、壮年の男性。

 何を目的にしたのかはわからない。ただの興味本位で、肝試しのつもりだったのか。

 物言わぬ骸となっている彼は、この怪物の餌食になった事に間違いはない。

 首筋に噛み跡。流血。恐怖に剥かれた眼。

 声も上げないまま、地に伏す姿。


「この調子で、繰り返せば──」


 予定を立てようと試みる。

 それの目的は、いつの間にか生存より高次のもの。

 特定個人との対話に、すり替わっていた。

 想像に夢中になる。計画に集中する。独り言が、僅かに漏れる。

 こんな暗がりでなければ目立ったであろうその姿は、しかし暗がり故に誰に咎められるわけではない。


「──む」


 思考を遮るのは、つまりまともな人間ではなく。



 骸が、動き出していた。



「お──お?」


 否。それは既にただの骸ではなく。

 地を這い、伸び、捻じれ、歪み、人間としての形を放棄していく。

 変形を続け、びたびたと辺りを叩き、少しずつ大きくなるそれは。


 まるで、黒い植物のようで。



「ひ──ひひっ。魂だけを抜くならどうなるかと思えば、これはこれは──!」



 伸びる。駆ける。貫く。砕く。奪う。飲み、啜り、食らう。

 轟音。暴力。悲鳴。人間。魂。魂。魂を。魂が。魂こそを。



 捕食。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ