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第四章
バーの扉を開ける。
控えめなベルの音が鳴り、木の香りが静かに迎えた。
「いらっしゃい。」
カウンターの向こうから、マスターが軽く手を上げる。
湊も小さく会釈を返し、いつもの席へ腰を下ろした。
「いつもの?」
「お願いします。」
グラスを拭く音。
氷の触れ合う乾いた音。
店の空気は、本屋とは違う静けさを持っていた。
少しして、入口の扉が開く。
「こんばんは。」
聞き覚えのある声だった。
湊は反射的に振り向く。
本屋で見かけた女性だった。
女性も一瞬だけ湊を見る。
「あ。」
それだけ言って、小さく笑う。
「この前、本屋さんで。」
「……ああ。」
「覚えててくれた。」
「なんとなく。」
それだけの会話だった。
女性は湊から一つ空けた席へ座る。
マスターが慣れた様子でグラスを用意する。
店には、また静かな時間が流れ始めた。




