4 異世界人達
「一体どこから入って来たんだ?」
ーそれは、私が聞きたいー
と言ったところで、私の言葉が通じるわけがない。それにしても……私も騎士の端くれだから分かる。この人は、かなりの実力のある騎士だ。こんな私にでも隙を見せない。纏っている空気もピリピリしていて痛い。お父様には敵わないけど。
そして、何より声が良い……良過ぎる。イケボだ。今の私は聴覚も鋭くなっているから、気を緩めると体が震えてしまう。
「異世界の聖女様は、コレをお望みか?」
その騎士が、私の首根っこを掴んだまま異世界の少女に問いかけた。
「はい!そうです!その子──そのモモンガが私には必要なんです!」
そう。今の私の姿はプラチナのモモンガ。
父と双子の兄は虎の獣人だけど、私は母と同じモモンガの獣人。虎と比べると小さいから、余計に父と兄達の過保護ぶりが大きくなった。父の、母への愛情と過保護ぶりも半端なかった。虎とモモンガの結婚も、当時は珍しく、大騒ぎになったほどだったそうだ──なんて余談は置いといて!
『何故モモンガが必要なの!?』
と叫んだところで、ここに居る人達には『ギーギー』と鳴いているようにしか聞こえないだろうけど。
「あの……ここに召喚される前に、女神様が『小さき者が聖女を助けてくれる』って……」
「女神様が……」
『本当に!?でも、小さき者が私とは限らないよね!?』
「煩いな……」
『ひい───っ!?』
恐ろしいほどのイケボで、この至近距離で囁かないで欲しい!
「お……怯えてるじゃないですか!」
『ぐえっ』
私が騎士の放つ圧に怯えていると勘違いした少女が、私を優しく包むように持ち上げてくれた。
「あの……捕まえてくれてありがとうございました。この子を……私が連れて行ってもいいですか?」
そう聞かれた騎士が、筆頭聖女クラリーチェ様に視線を向けると、彼女は軽く頷いた。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「それでは、案内しますから、3人とも私について来ていただけますか?」
「「「はい……」」」
そうして、私は逃げる事に失敗して、少女の手の中に収まったまま移動する事になった。
ーこれからどうなるんだろうー
訳がわからない事ばかりだ。どうして私が巻き込まれてしまったのか。それに、一番気になる事は───
人の姿に戻れない──という事だった。
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私達が居たところは、やっぱり神殿だったようで、あの部屋から出ると人間の創造神であるパルテンツァ女神の石像が建てられていた。そして、魔法を掛けて管理されている木があり、ピンク色の綺麗な花が咲いている。パルテンツァ女神の象徴である桜の木だ。女神自身も、ピンク色の髪をしていると言われていて、ピンク色の髪の聖女は能力も高いと言われている。確かに、クラリーチェ様の魔力も強いように感じる。
その神殿からオルグレン王国の王城に向かうそうで、馬車に乗る事になり、異世界から来た3人は同じ馬車に乗った。
「えっと……まずは自己紹介でもしようか?」
「そうですね」
「あ、俺はライオネル=ディーン。アメリカとイギリスのハーフで、日本の大学に留学中の20歳」
ライオネル=ディーン
金髪に青色の瞳の男性。どうやら、学生のようだ。
「俺は猪原晴紀。日本の大学生で20歳」
イノハラ=ハルキ
黒色の髪と瞳で、少し変わった名前の男性で、彼もまた学生。
「私は志水百花。この春に高校卒業予定の18歳です」
シミズ=モカ
茶色の髪に黒色の瞳の……もっと幼いと思っていたら、まさかの18歳だった。この世界ではデビュタントだ。
ー3人とも……まだまだ若いのにー
それからも3人は色んな話をしていた。3人一緒に召喚されたから、知り合いだと思っていたけど、どうやら知り合いではなく、住んでいる所も全く違っていた。そんな3人が初めて顔を合わせたのが、さっき居た神殿だったそうだ。ただ、3人とも個別で女神と対面したそうだ。
ー神様って、本当に存在するのねー
神と対面なんて、普通ならあり得ない夢物語だ。
「それで……その……本当にそのモモンガが、志水さんを助けてくれるの?」
「猪原さんとディーンさんは……異世界召喚のラノベ展開な話は知ってますか?」
「そりゃあ……知らない人の方が少ないんじゃない?」
「なら、分かりますよね!?召喚された聖女がどんな末路を辿るのか!それに、見ました!?あの筆頭聖女の髪の色!!」
「「あぁ…………」」
『?』
半泣きで訴えるモカに、憐れみの目を向けるハルキとライオネルに、私は小首を傾げるしかない。
“ラノベ展開”
“召喚された聖女の末路”
“筆頭聖女の髪色”
「私、選ばれたからには頑張るつもりだけど、強制力とか外的要因でどうなるかなんて分からないじゃないですか!?貴族の考え方や影響力も分からないし。だから、私を助けてくれる……味方が欲しいってお願いしたんです」
「なるほど……“お助けキャラ”ってとこか」
『チッ………』
ー意味が全く分かりませんー




