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巻き込まれただけなので、逃げようとしたけど失敗したようです  作者: みん


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3/12

3 失敗しました

私のお気に入りの場所は、クレマチス家の裏庭の奥にある白木蓮の木。そこでお昼寝するのが大好きで、気がつけば夕方──という事もある。そこに居たはずなのに。

今、私の目の前に広がっているのは木でも草でも土でもなく、大理石の床と大きな柱で、天井があって空は見えない。


ただ、白いローブを着た神官らしき人達が見つめているのは、1人の少女と2人の青年で、私の事には気付いていないかも?

神官らしき人達の後ろにも、数名の人達が控えているけど、その人達も、私には気付いていない──ような気がする。



「ここは、オルグレン王国です。この世界を助けていただく為に、神々が貴方方を召喚してくれたのです」

『──っ!?』


“オルグレン王国”

“召喚”


オルグレン王国とは、人間の国だったはず。私の居たアルミリオンとは海で隔たれている。

召喚って、まさか、()()召喚じゃないよね?だって!私は異世界人じゃないし、何か特別な能力があるわけでもない。ただ、その辺の令嬢より、武力に長けているというだけ。


「召喚って……本当に?」

「本当です」


困惑した少女の声に答えたのは、白いローブを羽織っているうちの1人。フードを被っていて顔は見えないけど、声からすると女性。


「ここに召喚される前に、神々から御言葉と加護を与えられませんでしたか?」

「夢……じゃなかった?」

「はい。夢ではありません」

「「…………」」


どうやら、異世界人3人は、三柱の神々に会って召喚されて来たようだ。


ー本当に……召喚されて来たんだー


夢物語かと思ったりもしていた。この世界以外にも世界が本当にあるのか?なんて思ったりもしていた。それが、今、目の前に3人の異世界人が居る。言葉が通じているのは驚きだけど、見た目は私達と変わらない。


「とにかく、異世界を跨ぐと体に負荷がかかると言われているので、ゆっくり休めるように、部屋に案内します。詳しい話はそれからで……あ……失礼しました」


白いローブを羽織った人が、謝罪しながらフードを捲って顔を出した。

ピンク色の髪は後ろでまとめられていて、青空のように澄み渡った青色の瞳の女性だった。


「私の名前はクラリーチェ=アズバルト。この国の筆頭聖女です」


まさかの聖女様。同性の私でも見惚れてしまうような綺麗な顔をしている。


ーはっ!しっかりして、私!!ー


こんな所でゆっくりしている場合じゃない。何故私がここに居るのかは分からないけど、私がここに居る必要はない──という事だけは分かる。誰も私の存在に気付いていないようだから、今ここでこっそり抜け出せば……後は……何とか頑張って……帰るしかない。()()姿()()()()でなら、お金がなくても何とか………なるよね?


チラッと周辺を見渡す。

ここに居る人達が見ているのは、召喚された異世界人3人だけ。神官らしき人達の後ろに控えている人達も、私にはまだ気付いていない。よく見ると、騎士らしき人も居る。そして、もう一度異世界人を見る。


ー召喚されたのが、1人だけじゃなくて良かったー


ホッと胸を撫で下ろす。


ーこれから大変だろうけど、頑張ってー


と、心の中で異世界人達に言葉をかけた後、そろそろと歩き出す。そのタイミングで、異世界の少女が慌ててキョロキョロと辺りを見回しはじめ───私と目が合った。


「見付けた!」

『え?』


異世界の少女が、そう呟いた後、私の方へと歩いて来る。


ー逃げないと!ー


本能的にそう思って、少女に背を向けて走り出した。


「あっ!待って!お願い!!」


『待って』と言われても、素直に待つつもりはない。ここは、私が居る場所じゃないし、捕まったらヤバい気がする。


「お願い!誰でもいいから、()()()を捕まえて!」


ーひぃーっ!なんて事を言うの!?ー


少女のその言葉に、今迄私の存在に気付いていなかった人達が、私を視界に捉えた。

数人が私に手を伸ばして来たけど、体格を利用して躱しながら走り続ける。

“鬼ごっこ”という名の訓練は、幼い頃の私にとって楽しい遊びではなかった。鬼に捕まれば1㎞3分以内ダッシュ✕5本やらされた。泣きながら必死で逃げまくった。父を恨んだりもしたけど、私の為を思って──と理解している今では感謝している。


ー後少し!あの小窓の所迄行けば逃げ切れる!ー


「お願い!待って!!」


ー待たないから!ごめんなさい!ー


と心の中で叫びながら、小窓目指して飛び上がる。


『───ぐぇっ!!』


後少しで小窓から外へ──というところで、首根っこを鷲掴みにされてしまった。


「おとなしくしろ」

『っ!?』


その声に、体がブルッと震えて反応する。


ーな……ー


その声がする方に視線を向けると、その声の主が私の首根っこを鷲掴みにしている張本人だった。


水色の髪に碧色の瞳の男性で、服装からすると騎士で、何より──


とんでもなく良い声のする人だった。



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