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巻き込まれただけなので、逃げようとしたけど失敗したようです  作者: みん


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38 クレマチス辺境伯①

「ディンベル様!大丈夫ですか!?」


ペタペタとディンベル様の体に怪我はないか?と確認をする。


「多少の打ち身や筋肉痛はあるけど、大きな怪我はない」

「なら良かった……会いたかったです!」


怪我がなくて安心して、そのままディンベル様に抱きついた。


「リア、俺達も居るんだけど?挨拶もない上にディンベルに抱きつくとか……兄さんは悲しいよ?」

「オルフェオ兄さん、リナルド兄さんも元気そうで良かったけど、私、ディンベル様とは1ヶ月ぶりに会ったの。だから……嬉しくて……」

「「リアは素直で可愛いね」」

「オリアナ……」


苦笑する兄さん達と、穏やかに微笑むディンベル様。言っている事は少し恥ずかしいけど、気持ちを変に隠すのが苦手だし、“思いは口にしないと伝わらない”という事を学んだから尚更だ。


「とにかく、ディンベル、お疲れ様。身体にはだいぶ負荷が掛かっていると思うから、今日と明日はゆっくりした方が良いよ」

「そうそう。だから、リアがしっかり見てあげるといいよ」

「オルフェオ兄さん、リナルド兄さん、ありがとう」


兄さん達が『ディンベル』と呼んでいるという事は、()の相手として認めてくれている──という事だ。お父様にも。


「ディンベル様……その……迷惑になってませんか?面倒くさくなったり……」


認めてもらったとはいえ、クレマチス一族からの過保護が無くなるわけじゃない。ある意味どんな事があっても、クレマチス家は私の味方だから、何かあった時はディンベル様にしわ寄せが来る。しかも、会った早々に特訓を受けさせられたのだから、私との交際を拒否られてもおかしくない。


「迷惑にはなってないし、面倒くさくもない。寧ろ、最強と謂われる獣人国の辺境伯の特訓を受けられたのだから、騎士としては名誉でしかない。それに、体の使い方が楽になった」

「なら良かった。それじゃあ、取り敢えず城の方に戻りますか?」

「そうだな」


と、オルフェオ兄さんとリナルド兄さんが歩いている後ろを、ディンベル様と私も歩いて城の方へと戻る事にした。






**クレマチス辺境伯視点**



「娘のオリアナが、随分とお世話になったようで……」

「こ……こちらこそ、本当に申し訳なく、何と謝罪すればいいか……」


目の前で頭を下げているのは、オルグレンの国王陛下。人間の中ではトップクラスの魔力持ちで、今回の国を跨いでの転移の魔法陣の使用を許可してくれて、魔力の補充もしてくれた張本人。知らなかったとはいえ、獣人(リア)にした仕打ちを考えれば当たり前の事だし、私から礼を言う必要はない。

聖女モカに関しては、異世界から来たまだまだ幼い娘で、リアのお気に入りでリナルドの恋人となれば、何も言う事はない。私が護るべき家族の1人となっただけだ。


「謝罪と言うなら、娘に従属の魔法を掛けた者を、アルミリオンに連れて行く許可と、その者に対しての口出しは一切禁止として欲しい」

「それは、勿論約束する」

「それと、筆頭聖女とやらの面会を許可してもらいたい」

「それは──見張り役を同行するなら」

「それでも構わない」


人間にとっての聖女という存在が、どれほど大切なのかは知っている。罪を犯しても直ぐに処罰を下せないのは、聖女としての力がまだ残っていて、その力が戻ればまた──という計算があるからだろう。聖女が公爵令嬢という事もあるだろうが、そんな事はどうでもいい。娘が危険に晒されて黙っていられる親は居ない。リアは、私にとって最愛のシャルリーヌの忘れ形見で、私が生きる存在理由。お咎め無し──などにはさせるつもりはない。


「分かった……数日中に調整する」

「お願いします」


それから、これからの日程の話し合いなどをした後、オルフェオとリナルドをはじめ、派遣されている獣人の騎士達と一緒に昼食をとった後、滞在している王城の客室に戻ったのは、午後3時過ぎだった。


「お父様!」

「リア」


部屋に戻ると、リアがお茶の用意をして待っていてくれた。

リアは、母親のシャルリーヌと同じで綺麗な銀髪で、黒色の目は大きくて可愛らしい。モモンガの姿になると、シャルリーヌかリアか……見分けがつきにくいほど似ている。クレマチス唯一の姫で、籠にでも閉じ込めて真綿で包んで護りたい──という気持ちにはガッチリ鍵を掛けて蓋をした。敢えて、ありとあらゆる身を護る為の術を伝授した。その結果、虎獣人の兄達よりも優れた騎士に成長したが、本人は全く気付いていない。

それでも、喩えリアが強かろうとも、私にとっては護るべき娘に変わりない。


リアと一緒にお茶を飲みながら、巻き込まれてからの話を聞き、ディンベルの事もきっちりと報告を受けた。

ディンベル=グランジオール。巻き込まれたリアを捕らえた本人だが、これもまた、リアが赦して受け入れて好きになったのなら、私が何かを言ったりする事はない。ただ、人間にしては強いが、リアと並び立つには弱過ぎたから、ほんの少し()()()()()だけだ。それで、少しはマシになったのだから、私は良い事をしただけだ。


それから、オルフェオとリナルドも部屋にやって来て、夕食は久しぶりに4人で食べて、9時にはそれぞれが部屋へと戻って行った。




その翌日。筆頭聖女の元へと行く許可が下りた。



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