28 浄化
「一体どうなっているんだ!?」
「とにかく、モカ様とクラリーチェ様を護れ!」
すぐに終わるだろう──と思っていたのに。
「一体どこから湧いてくるんだ!?」
ー本当に、一体どこから!?ー
ルーベン様とモカを囲んでいた魔獣はすぐに対処した──と思っていると、どこからか次から次へと魔獣が湧き出て来る。しかも、ルーベン様とモカへと向かって来る。それでも、小物な魔獣ばかりだから対処できてはいる。それでも、数が多過ぎる。これほどの魔獣が出現するほどの穢れは確認できていない。報告にも上がってなかった。
それでも、その穢れを絶たなければ、魔獣が溢れ続ける。怪しい場所はどこなのか──と、私はモモンガの姿で飛び回って探している。エリゼオが、犬の姿になって地上を駆け回って探している。
『───見付けた!』
それは、小さな池だった。池の水が黒く濁っていて、水面から黒い霧が発生していた。そして、その黒い霧の中から魔獣が現れた。
ー行かせないー
私は木から飛び降りると同時に人の姿に戻り、久しぶりに剣を振るった。
そうして、数頭を倒した頃にエリゼオが合流し、通信魔道具で兄さん達に連絡を入れて、兄さん達が来るまで、エリゼオと2人で現れて来る魔獣を倒し続けた。
「どうしてこんなにも次から次へと現れるんだ!?」
「浄化しない限り、キリがない!」
倒しても倒しても現れるなら、浄化するしかない。モカか、クラリーチェ様が来るまで──と魔獣と対峙していると、クラリーチェ様とオーランド様がやって来た。
「大丈夫ですか!?」
「オーランド様!私達は大丈夫です。クラリーチェ様、穢れの浄化をお願いします!これを浄化しないと、魔獣が出現し続けるようです」
「それは──分かったわ」
歯切れの悪い返事だなと思ったのは一瞬。クラリーチェ様が祈りを捧げると、白色の光が溢れて黒い霧が晴れて行く。モカとは違う光。聖女それぞれに色が違うようだ。
黒い霧が晴れて、池の淀みも少しずつ浄化されていき、これで大丈夫か?と思った時──
「クラリーチェ様!」
オーランド様が叫ぶ。
「何で……」
私とエリゼオが呟く。
クラリーチェ様が浄化している池の水が更に淀み始め、そこからまた新たに黒い霧が発生した。クラリーチェ様の浄化の力よりも、穢れの力の方が強かった──という事なんだろうか?クラリーチェ様は筆頭聖女だ。筆頭とは名ばかりではなく、実力が伴わなければなれるものじゃない。その筆頭聖女でも浄化できないというなら、それほどにやばい状況なのか、召喚聖女のモカにしかできないものなのか。とにかく、モカがここに来るまで魔獣を倒しながら待つしかない。
チラッとクラリーチェ様を見ると、浄化を止めて、オーランド様の背後に立ちすくんでいる。
「オリアナ!」
「リア!」
「モカ!リナルド兄さん!?」
オーランド様ではなく、リナルド兄さんと一緒にやって来たモカ。どうして?と気にはなるけど、今は聞くどころじゃない。
「とにかく、すぐに浄化を始めます!」
と、モカが浄化を始めると、モカの体がキラキラと光りだし、その光が大きくなると金色に輝いて黒い霧を飲み込んでいき、そのまま池の水面を覆い尽くした。
「きれい……」
黒い霧は完全に晴れて、池の水の淀みも綺麗サッパリなくなってキラキラ輝いていて、魔獣の姿もどこにもない。
「流石はモカだね!」
「ありがとうリナルド」
「え?いつの間に名前で呼び合う仲に?」
「リナルドが、聖女の訓練を見に行った時に意気投合したみたいで、それからあんな感じなんだ」
まさか、あのリナルド兄さんが名前呼びを許していたなんて……驚きだけど、喜ばしい事でもあるけど、それはまた落ち着いてからにしよう。
「とにかく、根元は断てたと思うから、他にも魔獣が残っていないか確認してみよう」
クラリーチェ様とオーランド様とモカとリナルド兄さんには、その場で待機してもらい、私とエリゼオは通信魔道具で連絡を入れた後、周辺の確認を始めた。
それからは魔獣が増える事はなく、数頭残っていた魔獣もすぐに対処ができて、日が暮れるまでに討伐は完了し、その日のうちに王城に戻る事ができた。
それでも、帰城したのは夜になった為、今日は第一騎士団副団長のディンベル様とオルフェオ兄さんが、国王陛下に簡単な報告をするだけで、詳しい報告は明日の昼からとなり、討伐参加メンバーは一旦解散となった。
「モカ、おつかれさま。今日はゆっくり休むんだぞ」
「リナルドも、今日はありがとう。おつかれさまでした」
モカとリナルド兄さんが、本当に良い感じになっている。これが、モカにとって良い方向に向かえば良いのに。




