27 初陣
ディンベル様に相談した日から数日後、モカが初めて魔獣討伐に同行する事になった。
ハルキとライオネルは既に何回か参加している。
「モカ、昨日は眠れた?」
「緊張して眠れなかったけど、ブレインさんが魔法で眠らせてくれたの」
「本当に、魔法って便利だよね」
討伐出発前、久し振りにモカとハルキとライオネルが和やかに喋っている。普段は殆ど会話を交わす事がないけど、やっぱり3人ともお互い気心が知れているんだろう。討伐前の緊張感が、少し和らいでいる。
「それで……このモモンガが、本当に獣人なの?」
「うん。もう私もビックリしちゃって。あそこに居るアルミリオン王国の人達と同じ国の女性だったの」
そう言いながら、モカが視線を向けた先には兄さん達が居て、こちらの視線に気が付いたリナルド兄さんがモカに手を振っている。
「リナルドさん……」
と呟いて、ニッコリ笑って手を振り返すモカ。
ーこの2人、良い雰囲気なんだよねー
私だけがそう思っているわけではなく、ハルキもライオネルも温かい視線をモカに向けている。
私が確認した情報によると、ハルキには平民の女性、ライオネルには男爵家の令嬢の恋人がいるようだ。この世界に馴染むのが早い。そんな2人にとって、モカは妹みたいな感じなんだそうだ。お互い全く恋愛感情がないのに、モカが2人を侍らせてるとか……その事に関しては、2人に恋人が居て否定しているから、その噂話はすぐになくなった。
「モカ、体調は大丈夫?」
「あ、クラリーチェさん。おはようございます。緊張はしてますけど、体調は問題ありません!」
モカに声をかけてきたのは、筆頭聖女クラリーチェ様。今日、初めて討伐に同行するモカのサポートをする為に、クラリーチェ様も同行する事になったそうだ。
「なら良かったわ。でも、無理はしないように。自分の安全を第一に行動するようにね」
「はい」
優しく微笑みながら、モカに優しい言葉をかけるクラリーチェ様は、誰がどう見ても清廉潔白な聖女様だ。
「そのモモンガ……オリアナさんも連れて行くのね?」
「はい。オリアナさんは女騎士でもあるので、私の護衛として同行してくれる事になったんです」
『ふふっ。モカは私が護ってあげるわ』
「ありがとう!」
勿論、モカ専属の護衛聖騎士のルーベン様も同行する。そのルーベン様が珍しくピアスを着けている──と思っていたら、どうやら婚約者のジェンナ様からの贈り物で、守護魔法が掛けられているそうで、今日の討伐に着けているそうだ。モカとの噂話のせいでゴタゴタしていたけど、仲が良さそうで良かった。このまま、モカとの噂話も無くなればいいのに。
「出立の準備を!順番に出立する!」
「「「はい!!」」」
今回の討伐の指揮を取るのは、第一騎士団副団長のディンベル様。いつもは討伐に出ないけど、今回は筆頭聖女と召喚聖女の、聖女トップ2が参加すると言う事で、副団長のディンベル様が指揮を取る事になった。
『何も起こらなければいいが……』
と、不穏な事を呟いていたディンベル様。
筆頭聖女クラリーチェ様、聖女モカ、第一騎士団副団長ディンベル様、聖騎士ルーベン様と私。何も起こらない──と良いなぁ……。とにかく、何かが起こったとしても、ディンベル様や兄さん達が居る。それだけでも心強い。
ークラリーチェ様に気を配っておこうー
*****
今回の派遣場所は、王都の外れにある森林だった。ここ1週間で魔獣の出現が増えて来たと報告が上がり、距離的にも良いという事で、今回、モカの初討伐の地に選ばれた。
確かに、淀みがあって少し空気は重たいけど、そこまで重苦しい感じはない。魔獣討伐と浄化も、何日もかかる事はないだろう。モカのレベルなら何の問題も無い。
魔獣も居るけど下級レベルばかりで、特に問題なく対処できている。特に、獣人の騎士達の対応が早い。私も参加したいけど、今はモモンガの姿で木の上から周辺の確認をしている。
獣人の動きは、やっぱり人間よりも俊敏で、魔獣を倒す数も獣人の方が多い。その後の、モカの浄化も順調に進んでいる。クラリーチェ様はというと──浄化はモカに任せて、怪我人の治癒を優先的にしているようだ。軽い怪我なら魔法による治癒は控えて、その分浄化を優先した方が良いのでは?と単純に思ってしまうのは甘い考えなんだろうか?
ーあれ?そういえば……ー
「ルーベン!気を付けろ!」
ふと気になった事があった筈だけど、誰かの大声で意識がルーベン様へと向かった。
そのルーベン様の居る方に視線を向けると、ルーベン様とモカの周りに魔獣が集まっていた。
ーどうしてあそこだけに?ー
パラパラとあちこちに居た魔獣が、2人の周りに集まって来たような状態だ。数は居るけど下級レベルの魔獣だから、ルーベン様をはじめ、周りに居る騎士達で難なく対処できている。
ー大丈夫そうだねー
なんて思っていた。すぐに終わるだろうと。




