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巻き込まれただけなので、逃げようとしたけど失敗したようです  作者: みん


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23/43

23 寝床

王城の敷地内にも大きな木はいっぱいある。いっぱいあるけど、穴が開いている木はない。クレマチスにある、穴の開いた白木蓮の木が恋しい。


「オリアナ?」

『っ!?』


その声に体が反応する。聞き間違える事はない。私が今立っているのは木の上で、その木の下に視線を向けると、やっぱりディンベル様が居た。スルッと木の上から飛び降りて、地面に着地をする寸前で人の姿に戻った。


「こんにちは」

「こんにちは。流石はモモンガだな。身が軽いんだな。散歩でもしていたのか?」

「散歩しながら寝床を探してたんですけど、寝床は見つかりませんでした」

「ははっ……流石に王城の木に穴は開いてないだろうな」


モモンガじゃなくても、この笑顔を見れるとは思わなかった。どんな綺麗な令嬢に言い寄られても無表情だったディンベル様。笑顔も好きだけど、あの無表情でイケボで囁かれるのも嫌いじゃない。


「そういえば、オリアナはよく俺の手の中で寝ていたな。また、手を貸そうか?」

「言い方!そんな言い方だと、勘違いされますから!!」

「勘違い?本当のこ──」

「うわーぁっっ!!」


ーえ!?ディンベル様って、こんな人だった!?ー


「本当に、その言い方だと勘違いされますよ」


と、あわあわしている私と、その私を笑って見ているディンベル様に声をかけて来たのは、筆頭聖女のクラリーチェ様だった。


「そんな事を言うと、彼女が誤解を受けますよ」

「嘘じゃないけどね」


確かに嘘じゃない。でも、それはモモンガ(マヒナ)だったからで、人の姿(オリアナ)じゃない。

それにしても……美男美女は目の保養になる。2人とも公爵で筆頭聖女と騎士団の副団長。全ての釣り合いが取れている。でも、2人共に恋人も婚約者も居ない。


「それで、聖女様はどうしてここに?」

「今日は王城(ここ)でモカ様とお茶をする約束をしているの。少し早く着いてしまったから、庭園を見てから行こうかと思って。そうしたら、ディンベルが居るのが見えたから、声をかけたのよ」


と言うと、クラリーチェ様が私にチラッと視線を向けた。


ーあぁ、()()()()()かー


どうやら、私は邪魔者らしい。クラリーチェ様が名前で呼ぶぐらいだから、2人は仲が良いんだろう。


「それじゃあ、私はここで失礼しますね」


と言って、私はまたモモンガになって木に登る為に走り出し────


『キュッ!?』

「どこに行くんだ?」


何故か、ディンベル様に捕まった。

召喚された時みたいな無遠慮な鷲掴みではなく、両手で優しく持ち上げられている。


「寝床がないなら、ここで良いだろう?」

『キュキュ……』


それは、とても魅力的なお誘いだけど、流石に獣人だとバレた今だと恥ずかしい。木の寝床がなくても、部屋に戻ればフカフカの寝床がある。モモンガの姿のままだから、ディンベル様の手をペチペチと叩いて首を横に振ってからクラリーチェ様に視線を向ける。


“私の事はいいから、クラリーチェ様とどうぞ”


「そうか、ここで寝るんだな。聖女様、俺達はここで失礼します」

「ディンベル!できれば──」

「案内は不要でしょう?オーランド、後は頼む」

「ディンベル!」


クラリーチェ様がディンベル様の名前を呼ぶけど、ディンベル様はクラリーチェ様に背中を向けて歩き出し、一度も振り返る事はなかった。

ちなみに、“オーランド”とは、聖女クラリーチェ様専属護衛の聖騎士オーランド=ペトリアス様。2人のやり取りで、一番困惑しているのはオーランド様だろう。勿論、私も困惑しているけど。


今までも何度も顔を合わせた事があった2人だけど、言葉を交わすところはあまり見た事はなかった。でも、クラリーチェ様が「ディンベル」と名呼びするぐらいだから、2人は仲が良いのかも?と思ったけど、対するディンベル様の態度は冷たい。名前さえ呼ばなかった。同じ公爵でも、相手は聖女だから、クラリーチェ様に敬意を払っているから──と言えばそうなんだろうけど。


それに、もともとディンベル様は女性には壁を作るタイプで、愛嬌を振りまく事もないから、今の対応が普通だと言えば普通。

クラリーチェ様が、ディンベル様に好意的である事は間違いないだろう。

見た目はお似合いな2人なのにと思う反面、ディンベル様が好意的じゃなくて良かったと思ってしまった。


ー私、好きになってるよねー


『はぁ………』


と、モモンガ姿でため息を吐く。ディンベル様の手の中で。相変わらず安心する場所で、すっぽり収まっていると睡魔がやってくる。おまけにゆっくりと歩いていて、その振動で更に眠気が増してくる。


ー起きるのも怠いし……寝てもいい……よねー


と、起きるのも人の姿に戻る事も諦めて、私は久し振りにディンベル様の手の中で寝落ちした。





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