20 久し振りの感覚
謁見室にやって来たモカの顔色が、驚くほどに青ざめていた。
ーきっと、また斜め上な思考をしているんだろうなぁー
私は、今度はオルフェオ兄さんの腕からモカの腕へと飛び移った。
「マヒナ、元気そうで良かった……ところで、私は……何かやらかしてしまったの?」
『モカは何もやらかしてないよ。大丈夫』
「モカ様を呼んだのは、ここに居る者達以外には内密の話をする為です。少し長くなるのでお座りください」
「分かりました」
ブレイン様に促されると、モカが椅子に座り兄さん達も座り直すと、ブレインさんがコルラードについての話をした。
「コルラードさんが………そんなことを……それに、マヒナが獣人だったなんて……本当にごめんなさい!私、本当に知らなくて……ううん、知らなかったとはいえ、本当にごめんなさい!!」
私が獣人だった事、コルラードが私にした事を知ると、必死に謝るモカ。
『モカが謝る事なんてないよ。悪いのはコルラードだから』
「マヒナ……それでも、本当にごめんなさい。それと……マヒナのお兄さん達、本当にすみませんでした」
モカは悪くないのに、兄さん達にも頭を下げて謝った。もともと獣人の存在がない世界から来たから、“ただの獣か獣人か?”なんて発想にはならなかっただろう。
「取り敢えず、謝罪は受け取ります。その上で聖女様にお願いがある」
「はい!私にできる事なら何でも!!」
ふんす──といった顔をするモカ。やる気満々!頑張ります!といった時の表情だ。素直で可愛い女の子だ。
「リアが人の姿に戻れないのは、召喚に巻き込まれた影響か、女神の意思なのかは分からないが、女神に選ばれた貴方から、リアが人の姿に戻れるようにと、女神に祈ってくれないか?それで、人の姿に戻れるという確証はないが、いろいろと試したいんだ」
「分かりました!祈ります!全力で祈ります!!」
ドンッと自分の胸を叩いたモカは、その場に跪き両手を組んで額に当て目を閉じた。
すると、モカの体からキラキラと金色の光が溢れ出し、その光がフワフワと私の体を包み込んだ。それは、眩しくて温かい光だった。
『貴方には迷惑を掛けてしまいました。小さき者なら、聖女の傍で聖女を護れるからと……オリフェンからも怒られてしまったわ。だから、謝罪として、私から貴方に加護を──』
更に温かい何かが私の体に流れ込む。
『どうか、これからも聖女の傍で──』
その声が聞こえなくなったのと同時に、私の体を包み込んでいた光も消えた。
ーあ、戻れるかもー
リナルド兄さんの手の中に居た私は、そこから床に降り立ち目を閉じた。
久し振りの感覚だった。
「「リア!」」
「兄さん!」
ムギュッと私に抱きつくのは、オルフェオ兄さんとリナルド兄さん。
「ほ……本当に獣人だったんだ……ごめんなさい!」
「モカ、何度も言うけど、モカは悪くないから。それに、モカも私を守ってくれたでしょう?ありがとう」
「うーっ!モモンガの時も可愛かったけど、人の姿になっても可愛い!」
「そうなんだ。リアはどんな姿でも可愛いし、クレマチス唯一の姫なんだ」
「姫!ピッタリですね!!」
リナルド兄さんとモカの意気投合。兄さん達の怒りがモカに向かわなくてホッとする。それから、ブレイン様に向き合ってから頭を下げた。
「ブレイン様、改めて、いろいろとありがとうございました。ブレイン様のお陰で、自由の身になって無事に兄達に会う事ができました」
「いやいや、本当にお礼なんて言わないで下さい!こちらこそ、本当に申し訳ありませんでした!」
と、またブレイン様から謝罪を受けた。
何度も言うけど、謝罪すべきはコルラードのみ。従属の魔法が解けて人の姿に戻った今、コルラードに負ける気は全くしない。魔道士としてのレベルも大した事ないし、剣を振るう事もできない。
「早速、やっちゃってもいいですか?」
「いつでも……」
国王陛下の了承を得る。
「それ、“コルラードさんを”って事だよね?でも、コルラードさん、今日は都合が悪いからって訓練が休みになったから、王城には居ないと思う」
「多分、制約の魔法が解けた事を察知したからでしょうね」
ブレイン様が言うには、制約の魔法が掛けた本人以外の人が解放すると、掛けた本人に少し反動が起こるそうで、半日ほど魔法が上手く使えなくなるそうだ。
「体にも影響があるから、どこかへ行くという事もないだろうから、きっと王城内のどこかに隠れていると思う。すぐに探せると思うけど……探しましょうか?」
「お願いします」
ブレイン様の提案に、私は迷う事なくお願いした。
そして、流石は上級魔道士のブレイン様。
あっという間にコルラードの居場所をつきとめてくれた。
「さて、今迄のお礼をしに行きますか」
と、私はニッコリ微笑んだ。




