17 再会
*オルフェオ視点*
“モモンガの獣人を見付けました”
その報せが届いたのは夜も遅い時間だった。しかも、今日に限って王城から遠くまで足を伸ばして捜索をしていたから、どう頑張っても王城に帰るのは日を跨いでからになった。
どうしてオルグレン王国に居るのか──
どうやってアルミリオンを出たのか──
どうして何の連絡もしなかったのか──
訊きたい事はたくさんあったし、心配していた反面怒ってもいた。
ー会ったらどうしてやろうかー
と思っていたのに。
王城の謁見室に入ると、顔面蒼白となった国王王妃両陛下だけではなく、大神官と数名の神官が並んでいた。「何かあったのか?」と聞く前に、再び謁見室の扉が開き、2人の男が入って来た。そのうちの1人の男の手に収まっていたのは──
「「リア!!」」
「オリアナ!!」
『アンアン!!』
その鳴き声は久し振りに聞くものだった。“寂しい”感情の時の鳴き声だ。母上が亡くなった時以来だ。
そのプラチナのモモンガは、その男の手から飛び出し、俺達の方へと飛んで来た。
「リア!この……馬鹿!一体どれだけ俺達が心配していたか──どれだけ探したか───無事で良かった!」
『……アンアン…………』
俺の左腕に必死にしがみついているリア。渾身の力でしがみついているんだろうけど、全く痛くないどころか、あまりの弱々しさに不安になるほどだ。
「リア、痩せた?更に小さくなってない?リア、ほら、俺にも顔をよく見せて?」
リナルドがそう言うと、リアはリナルドの手に飛び移った。
「オリアナ、無事で良かった」
そう呟いたのは、エリゼオ=アリウム。俺達の幼馴染みで、今回の派遣で一緒にやって来て、一緒にリアを探していた犬の獣人だ。
「エリゼオ、一緒に探してくれてありがとう。それで……リア──我が妹のオリアナ=クレマチスが、どうしてオルグレン王国に居たのか……説明していただけますか?」
スッ──と、玉座に鎮座している国王陛下に視線を向ける。その視線や物言いが不躾なものであっても、それを改めるつもりはない。それを不敬と言って捕えようとするなら、俺達は迎え撃つだけだ。
「その事については、私の方から説明させていただきますので、まずは椅子にお座り下さい」
リアと一緒にやって来た男のうちの、もう1人男がそう言って頭を下げた。その男は、俺達に報せを届けてくれた魔道士ブレイン=ストラータだった。その言葉に、リアもコクコクと頷いたから、俺達は取り敢えず椅子に座る事にした。
「リア、人の姿に戻らないのか?」
「あ、その事からお話させていただきます」
「従属の魔法……」
「はい。本当に申し訳ございませんでした。知らなかった、気付かなかったでは済まない事は重々承知しております。どんな処罰でも受ける所存です」
魔道士が今迄の話をかるく説明した後、謝罪して深く頭を下げた。一緒に来た第二騎士団副団長ディンベル=グランジオールも、「申し訳ありませんでした」と言いながら頭を下げた。
「私からも謝罪を。禁忌の魔法を使った者は必ず厳重に処罰し、国からも賠償させていただく」
「私達神官一同、ただの巻き込まれの獣だと……確認もせずに申し訳ありませんでした」
国王王妃両陛下と大神官、神官達も頭を下げるが、どうしたって怒りが収まるはずがない。
リアはクレマチス家唯一の姫で、父にとっては生きる為の存在で、俺達にとっては護るべき可愛い妹。そんなリアに従属の魔法をかけて縛り付けた。何度か魔法が発動して、痛みに襲われていた可能性は十分にある。
あの小さな体で──
改めてリアを見ると、痩せて小さくなったと思ったのは気のせいではなかった。本来なら、もっとキラキラと輝いていたプラチナ色の毛がくすんでいるのも、気のせいでも光の加減のせいでもなかった。
「謝罪を受け入れる必要があるのか?」
「「「「っ!!」」」」
ビリビリと怒りを露わにしたのは、リナルドだ。
「そこの魔道士が偶然居合わせなかったら、今でもリアは従属の魔法で苦しめられていて、俺達とも会えていなかった。今回は、たまたまリアが聖女から離れられて、その魔道士と出会えたから助かっただけなんだろう?ただただリアの運が良かっただけだ。もし、その運がなかったら……」
リナルドの言う通りだ。謝罪なんて、何の意味もない。俺達が求めるのは、俺達の手でリアが受けた報いを受けさせるだけだ。容赦も手加減も一切しない。簡単に終わらせるつもりもない。相手が誰であろうと、泣いても叫んでも何かを乞うても赦す事はしない。
「まずは……リアを捕まえたお前からか?それとも、ペットとして望んだ……聖女か?」
リアを捕まえたという副団長に視線を向けると、今迄俺の手の中に居たリナが、その男が差し出した手のひらに立っていた。




