11 外へ
従属の魔法をかけられてから3日で分かった事。
①隷が、主から100m離れると体が痛くなってくる
②主が、隷から離れた場合は体は痛くならない
③主に名前を呼ばれると、遠く離れていても主のもとに呼び戻される
④口外しようとすると、一瞬のうちに体が痛みに襲われて気絶する
ーコルラード……絶対に仕返ししてやるー
今日のモカは休みで、一緒に図書室にやって来ている。そして、モカは今、獣人に関する本や資料を読んでいる。
「獣人って、本当に居るんだね。見た目は人間だけど、耳や尻尾があるの?」
『人の姿の時はめったに出てないよ。子供なら出てる時はあるけど』
特に尻尾は弱点だったりするから、獣人の国以外の国で、尻尾を出している獣人は居ない。
「“番”も存在するの?」
『都市伝説レベルかな?出会う確率は5%以下と言われていて、めったに出会う事はないし、そういう本能も廃れてきているって言われてる』
「番って、お互い感知できたら良いけど、片方が感知できない相手だと問題が多そうだから、良いものなのかどうかは微妙だよね」
モカの言う通り。獣人の番が人間だったら大変だ。私は特に番に憧れを持っているわけじゃなく、ただ好きな人と恋愛して結婚できたら良いなと思っている。
そこで、ポンッと思い浮かぶのが、ディンベル様の声。あの声で毎日名前を呼んでもらえたら……なんて思ってしまい、ブンブンと頭を振る。
「そんなにも頭を振って大丈夫なのか?」
「グランジオール様!?」
ー本人登場!!ー
「何かありましたか?」
「休みのところすみません。神殿から連絡があって……」
と言いながら、ディンベル様が私の頭を撫で撫でしていて……気持ちいい。
『プクプク……』
「マヒナ、可愛い!あ、すみません。神殿からの連絡とは?」
「それは──」
そうして、ディンベル様から聞いた話は、私がショックを受けるのに十分過ぎる内容だった。
******
獣人の騎士が王城に到着する当日。
モカと私は馬車に揺られて大神殿へとやって来た。理由は、“聖女の集まり”があり、モカももれなく招集されたから。従属の魔法がかけられているから、モカと一緒に来るしかなかった。
一体、獣人の誰が派遣されて来たのか。確認する事すらできなかった。チャンスだったのに。勿論、知っている人だとは限らない。でも、チャンスはチャンスだった。せめて、人の姿に戻れたら……。
“聖女の集まり”は、半年に一度ある女神へ祈りを捧げる日の事を指すそうで、オルグレン国内に居る聖女が集まる。そして、王太子様と王太子妃様も参列している。
アルフレード王太子
ペルラ王太子妃
王太子様は珍しい雷属性の魔力持ちで、武力にも長けているらしい。そして、その王太子様の後ろにディンベル様が護衛として控えている。
聖女達の祈りが終わった後も、聖女達の親睦会のようなものがあって、今日はこの大神殿で1泊して、王城に帰るのは明日のお昼過ぎになる。今日は無理でも、明日には獣人に会えるかもしれない。だから、今日は我慢して静かに過ごそう。
聖女の祈りが終わってから、私はモカに当てられた部屋でお留守。モカが部屋に帰って来たのは夕方だった。
「マヒナ、ただいま。あー……疲れた」
『おつかれさま』
ー少し元気がないように見えるのは、疲れているからかな?ー
「あ、そうそう。さっきクラリーチェ様から言われたんだけど、この大神殿から少し離れた所に森があるんだけど、そこで大きな獣か何かが目撃されたらしいから、近付かないようにって」
『大きな獣………』
「うん。マヒナは小さいから食べられちゃうかもしれないから、気を付けてね」
『モカ……お願いがあるんだけど……私、今日1日ずっと部屋に居て退屈だったから、少しだけ、散歩に行って来てもいい?絶対、その森には行かないから。絶対に帰って来るから』
「散歩は良いけど、今から?もう暗くなりかけてるし……目撃情報の事も心配だけど……」
『私は夜行性だから、夜の方が動きやすいの。久し振りに、夜の散歩がしたいなって……だから大丈夫』
「そうなんだ。それじゃあ、気を付けて行って来てね。森には行かないでね」
『分かった、ありがとう。行って来ます』
そう言って、私はモカの許可を得てから外へ飛び出した。
それは、1つの賭けだった。
主の許しを得れば、少し離れるぐらいなら痛みに襲われないかもしれない。逃げる事はできなくても。
“大きな獣”──もしそれが、獣人だったら?
何故か分からないけど、“それが何か確認しろ”と本能が訴えかけている。だから、急いで森に行く。痛みに襲われずに森まで行けるのかは分からないけど。モカにも嘘をついたけど。それでも、私は森に行く。
ーモカ、ごめんね。でも、必ず戻って来るからー
と、私は全速力で走り続けた。




