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乙女ゲームのヒロインに転生したけど、攻略対象から逃げていたらモブに助けられました  作者: 春樹凜


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12/20

12.●モブAの真実



 最近の俺は、ほぼ自覚しつつあった。


 確実に、俺はアリアナに好意を抱いていると。

 当然、ゲームのカインじゃなくて俺自身の気持ちとしてだ。


 ――しかし、猫カフェでのアリアナは本当に可愛かった。

 ほわほわした表情で抱きかかえた猫を眺める彼女を見て、俺はその姿を、分厚い眼鏡で俺の視線があまり彼女には見えないのをいいことに、がっつり見つめて網膜に焼き付けた。

 むしろ俺が、アリアナの頬をぺろりと舐めたその猫になりたいほどだった。

 ……あとそいつは雄だったので、猫相手に大人げなく嫉妬心が沸いた。


 他にも、四天王が出没する可能性があるからと我慢していたらしいアリアナの行きたいところに、二人で休日に待ち合わせて出かけることも増えた。

 一緒にいればいるほど俺の彼女への気持ちは大きくなっていく。


 だが、解決しないといけない問題があった。

 それが卒業パーティーだ。


 アリアナが四人の中の誰を選ばなくとも、あいつらはきっとやってくる。


『お兄、誰選ばなくても、四天王って勝手にダンスの申し込みに来るんだけど! しかも一番好感度高い奴が。断ったら即バッドエンド』

『ちなみに申し出受けたら?』

『好感度足りてなかったらバッド行きだよ』

『……悪夢だな』

『全員好感度一緒だったら、全員が来てハーレムバッドエンド』

『そのゲーム救いがなさすぎだろ!』

 

 だから卒業パーティーの話を聞いた後、俺はつい、


「俺が、その……相手になりましょうか」


 なんて言ってしまった。

 しかもアリアナは、嫌そうなそぶりをすることなく、


「うん……カインさんがいい……」

 

 なんて答えるほどで。

 その瞬間、胸の奥で何かが弾けた気がした。


 彼女と離れた後俺は、廊下でふにゃっとなりそうな顔を必死で隠しながら帰った。

 が、歩きながら、さっきのアリアナとのやり取りも、前世云々のとこを除けば大方ゲームのイベント通りだったという記憶が妹の声とともに蘇り、思わず足を止める。

 

『このシーンはね、アリアナがカインを選んだってことなんだよ! つまり、このイベントを経た後、最後の卒業パーティーのイベントに臨んで、そこで条件をクリアすればカインとハッピーエンドになるの!』


 ……アリアナが俺のことをどう思ってるかどうかは、まだ分からない。

 嫌われてないってことだけは理解できるが。


 あの場で俺の申し出を受けたのは、四天王を選ぶよりも俺の方が幾分もマシって心理が働いたからだろう。

 別に俺はそれでも構わない。


 再度歩きながら考える。

 俺、どうやってあの四天王からアリアナ嬢を守るんだ……?


 ちなみに、アリアナは俺が四天王に目をつけられて危害を加えられるんじゃないかとずっと心配してくれていたが、これまでは問題なかった。

 なぜなら俺は、あまりにもモブとして世界に馴染みすぎていて、ゲームでもあいつらには俺の存在が風景の一部としてしか認識されていなかったからだ。

 

 妹も、


『カインはステルス性能高すぎ』


 と笑っていた。


 だから、俺がアリアナと一緒にいても、向こうからはアリアナが一人でいるようにしか見えていなかったはずで。


 しかしだ、いくら俺がステルス性能を所持しているとしても、


 オージは権力チート。

 ジナーンは天然狂気。

 メガーネは頭脳が武器で。

 キッシは物理戦闘が強すぎる。


 対する俺=子爵家の三男(地味)。

 コネなし。

 戦力ゼロ。

 勝ち目ゼロ。


 ……いや、詰んでるだろこれ。

 しかしアリアナを守ると大口切ったんだから、何が何でも守り切らないと。

 それに、妹の言ってた、パーティーで条件をクリアできればカインルートのハッピーエンドに繋がると。


 そのエンドになれば、少なくともアリアナが四天王に剥製にされたり監禁されたりって未来はなくなるんだろう。

 それがどんな条件かも思い出せないが。

 その後、アリアナと俺がどうなるのかはおいておこう。


 けど、本当にどうしようかと落ち込みながら家に帰ると、父さんと母さんがリビングでお茶を飲んでいた。


「ただいま……」

「おかえり、カイン。なんだその顔は。何かあったのか?」


 何かありまくりなんだよなぁ。

 俺は、冗談めかして試しに聞いてみた。


「なあ父さん。俺、実はどっかの国の王太子だったとか、すげぇ力隠されてるとか、そういうの……ないよな?」


 もしそうならあの四天王にも対抗できるかもと思ったから、ダメ元で聞いてみただけだ。

 マジでそんな設定あるとは思っていない。

 だが、


「ぷっ」

「ハハハ、面白い冗談だな!」


 と、二人に笑い飛ばされるもんだとばかり思っていたのに。

 

 ……なぜか部屋の空気がスッと止まった。


 二人とも、笑っていない

 むしろ――固まっている。


「…………父さん?」

「……カイン。どこまで、気づいている?」

「……へ?」


 ん?

 え?

 んん?

 なんで両親が困った顔してんの???

 二人以上に困惑する俺を見て、父さんはゆっくり深く息を吸った。


「カイン……お前はな……本当は、隣国ルーメン魔法国の第二王子だ」

「………………………………え?」


 脳みそが一瞬停止した。

 

 待て、なんだその設定は。

 いや、確かに隣国はそんな名前だし、魔法もルーメン国の王家の血を持つ者に限って使えるもんだって知識は、この世界の常識としてあるが。

 

 そんな隣国の設定とか魔法云々とかって話、あのゲームに一回も登場してなくないか!?

 しかも俺、子爵家の三男なんじゃ……?


「赤ん坊の頃、お前は誘拐され、盗賊団がうちの領地を通って逃げる最中、馬車ごと崖に落ちた。奇跡的に生き残ったお前を……このノーランド家が拾い、育てたのだ」

「ちょ、ちょっと待って!? 王子!? 俺が!? いやいやいやいや、地味な三男が王子なわけ――」


 俺は混乱した頭で、思わず口にした。


「……でもさ。母さんと俺、顔、めっちゃ似すぎじゃない?」


 父さんとは、似てるような似てないような、そんな感じだが、母さんとはマジでクリソツ。

 すると母さんは、少し困ったように笑った。


「それはね、カイン。私が、ルーメン魔法国の現国王の妹だからよ」

「…………は? だって母さん、この国の別の子爵家の子どもだって」

「魔法の使える王族の血って、特殊で面倒でしょう?  だから兄に、パーティーで出会ったこの人と結婚したいって伝えたら、普通に幸せになりたいなら身分を隠して嫁げって言ってくれたの。それから私は一度、この国の別の子爵家の養女になってからあなたのお父さんと結婚したの」

「なんかもう、色々ついていけない。なら俺と母さんの顔が似てるのは」

「私たちが甥と叔母の関係だからよ。顔立ちが似るのは当然ね」


 そう言って、母さんは何気なく手のひらを上に向けた。

 ――ぽっ。

 小さな赤い炎が、そこに灯った。


「……ええええええ!?」

「というわけで、私も、魔法は使えるのよ」


 いやいやいやいや、今さら何見せられてんの俺!?

 母さん普通に魔法使ってるんだけど!?

 隣国の王族の血を継いでるならなんも不思議なことはないけども。

 もはや頭が混乱して爆発しそうになる俺を気にすることなく、父さんが続ける。


「ルーメン魔法国は、この大陸で唯一魔法が残る国だ。そしてその力は、王族の血を引く者にのみ発現する」

「……つまり」

「そうだ。お前も魔法が使える」

「ちょ、ちょっと待って、俺、魔法!?」


 父さんは静かに頷いた。


「ただし、今はまだ不安定な状態だ。魔法国の王族は皆、十八の誕生日に金の瞳が開き、その時に初めて魔法が完全に発現する」

「金……の瞳……?」


 それも聞いたことはある。

 ルーメン魔法国の直系王族は、太陽みたいに輝く黄金の瞳を持つ――という噂。

 子供の頃は黒や灰色って地味な色なのに、急にその色が現れるらしい。

 それと同時に、魔力が体中を巡って魔法が使えるようになると。


 んで今は、微量ながらも魔力だけ漏れ出ている状況らしい。

 特に生活面には支障はないが、この状態だと、例えば異様に第六感が働いたり、特定の人物の位置情報を把握できたり、というのが無意識にできるという。


「カイン、そういう覚えはないか?」


 父さんの質問に、俺はもちろん思い当たる節があった。

 なるほど、妹実況と前世の知識だけじゃなく、カインっていう人間自体にその能力が組み込まれていたのか。

 それなら、ゲームでのカインがアリアナを守れていたのにも納得がいく。


 と同時に、一つの疑問も氷解した。

 俺がただの地味なモブだという理由だけで、あの執念深い四天王の目をごまかしきれるわけがない。

 俺の存在が今まで完全にバレていなかったのは、俺から漏れ出ていた無意識の魔力が、存在を隠蔽するように働いていたおかげだったようだ。


 けど、母さんの目の色は黒じゃんって言ったら、母さんが何か唱えて手を目にかざした途端、黄金の瞳が現れた。

 面倒ごとを避けるべく、普段はこうして隠しているらしい。


「そしてカイン、お前はまだ十七だ。だから力が表に出ていないだけだ」

 

 けど、俺にしてみたら気になる疑問が一つあった。


「じゃあ、なんで俺、今までこの家にいたんだ?」


 父さんは、少し目を伏せて答えた。


「十八になるまで、お前が本物の王子だと証明できなかったからだ」

「証明……?」

「ああ。顔は確かに王家の血を受け継ぐ母さんや、現ルーメン国王陛下にそっくりだ。だが、王家としての証明である、魔法も黄金の瞳も、十八にならなければ現れない。それまでは、連れ戻しても、偽物だと疑われるだけだった。たとえお前の本当の両親が、お前を実の子どもだと認めてもな」

「…………」

「なら、安全な場所で、確実に目覚める時を待つしかなかった。そこで私たちがお前が成人するまではこの家の子どもとして預かることになったんだ」


 頭が、追いつかない。

 だが、その瞬間、一つの声が脳裏に浮かんだ。


『お兄!  カインって実は魔法国の王子様でさ。しかも見て、当然魔法も使えるんだよ! もはや、モブの欠片もないよね。四天王なんて足元にも及ばない最強キャラだよ!』

『え、魔法? 今までこのゲームで魔法の欠片も出てきてないよな?』

『そう! だから私もびっくりしてさ。カインが王子様とか魔法使えるとか、誕生日になったら金の瞳になるのと同時に魔力が解放されるとか、ラスボス感半端なくない!?』

『いやいや、ラストスパートに向かって、元モブの情報量えげつないな……』


 ………………あいつ……やっぱりちゃんとネタバレしてたな。

 マジか、いやマジだなこれ。

 いろんな意味で、俺はその場で赤くなったり青くなったりしてたら、母さんが心配そうに尋ねる。


「カイン、大丈夫?」

「大丈夫、ではない……かな」


 しかし、カインが実は隣国の王子で、魔法使いって。

 というか、これ、絶対俺があのヤベェ四天王に勝てって流れじゃん!


 ってかどうやって勝つんだ?

 まさか魔法ぶっ放して、実力行使か。

 それはさすがにまずいよな。


 それに、気になることもある。

 カインハッピーエンドには、条件があったはずなんだ。

 しかしこれが未だに思い出せない。

 もしもそれがクリアできなかったら当然バッドエンドだろう。

 しかも俺がっていうか、アリアナのだ。

 俺はこの際どうなってもいいが、彼女を危険な目に遭わせたり、悲しませることだけは避けたい。


 と、ここで俺は気づく。

 ……そういや俺の誕生日って確か、卒業パーティーの日だったよな。



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