10.◯気づき始めた四天王
カインさんとのデート的なお出かけは、私の中ではますますカインさんへの気持ちを募らせる結果になった。
四天王の攻撃もカインさんのおかげで以前より恐怖を感じずにいられていることもあって、最近の胸の動悸が激しくなる理由は、もっぱらカインさんだ。
それに、あの日以来、なぜか出先でカインさんと遭遇する機会が増えた。
王都の中央でやっていたバザーとか、両親への手紙を書くために便箋を買いに寄った文具屋や、それ以外の場所でも諸々と。
そして、そのうちに二人で約束して出かけることも増えていった。
きっかけは、四天王からの逃走直後、何気なく話した会話だった。
「新しくできたカフェがあって、気になってるんですけど入りにくくて」
「それってもしかして、王都のメイン通りにできた猫カフェですか?」
「そうです!」
可愛いもふもふ猫がたくさんいるそこのカフェは、大人気でなかなか予約が取れない。
それだけじゃなくて、オージルートだと、彼とのデートコースに入っているお店なのだ。
つまり、仮に一人で入店したとしても、いつどこかのタイミングでオージがやってくるとも限らないわけで。
そう思ってしゅんと肩を落としていたら、カインさんが、自分がいたら何かあっても助けられるかもしれないからということで一緒に行こうと誘ってくれたのだ。
可愛い猫たちとカインさんを同じ空間で堪能できた私は、天にも昇る心地だった。
真っ白い猫に餌をあげたり、猫じゃらしで遊んであげたりするカインさんを、私は脳内のカメラで収め、ことあるごとにその時の記憶を思い起こしては、部屋で一人ニマニマしていた。
ちなみに、オージはやってこなかったので、その日は本当にただカインさんとデートをしただけに終わった。
後は、ジナーンがよく休日に現れるらしいカフェや、メガーネと遭遇の可能性のある植物園や、キッシが出没すると噂のごはん屋さんに行ったり。
時には危うくばったり遭遇しかける時もあったけど、毎回カインさんのおかげで事なきを得た。
けれど、平和なことばかりではなかった。
ある日、カインさんの指示で空き教室に隠れていた時のことだ。
廊下から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
それは、オージ&ジナーン兄弟だった。
「最近、アリアナに避けられすぎている気がするな……」
「兄上もそう思う? 僕もなんだ。彼女の逃げ方は、偶然にしては出来すぎている。……誰か、目障りな小バエが彼女に知恵を貸しているのかもしれないね」
「ああ。もしそのハエを見つけたら、この俺が直々に、二度と彼女に近づけないよう『教育』してやらねばな」
「あはっ、兄上怖いー。でもその時は僕にも教えて? 最近覚えた新しい催眠術を使いたいんだぁ」
冷たく、底知れぬ暗さを孕んだ声に、私は息の音すら止めて震えるしかなかった。
他にも、
「僕の完璧な計算による遭遇ルートも、ことごとく潰されています」
「お前と一緒なんて普段なら嫌だけど、俺も同じ意見なんだよな」
「もしも誰かが邪魔をしているのであれば、僕の作った特別製の劇薬の実験台にして、二度とまともな思考ができないようにしてあげましょう」
「なら、俺はその後にそいつを地下牢の奥深くにぶち込んで、一生陽の光を見られないようにしてやるよ。俺のアリアナに近づく鬱陶しい害虫は、跡形もなく消さないとな」
メガーネとキッシが、爽やかな声色で恐ろしいことを言いながら笑っている場面に遭遇したりもした。
さらには四人が結託して、何か計画を練っている場面にも出くわしたり……。
おかしい、あの人たち、基本的には個人プレイで、お互いにはそんなに仲良くなかったはずなのに。
幸い向こうが気づく前に急いで逃げたからバレなかったけど、ヤンデレ四天王が勢揃いして、見えない『誰か』への殺意を最高潮に高めている、なんて、怖すぎる!
もしカインさんの存在が彼らに知られたら、絶対にただじゃ済まない。
一緒にいたカインさん曰く、多分地味な俺のことはあいつらには見えてない仕様にでもなってるから大丈夫、だなんて言ってたけど……。
カインさんに何かあったらどうしようという恐怖は、私の心に暗い影を落としていた。
そうこうしているうちに、長かったような短かったようなゲームの期間も、残り一カ月を切った。
四天王の執着はいつもと変わらない。
心配していたカインさんへの突撃、なんていうのもなくて、その点はほっとしていた。
私はカインさんの助けがなかったら確実に誰かのルートに入って、精神的にも肉体的にも死んでいたかもしれない。
こうしてなんとか日々を生き抜いてこられたのは、カインさんのおかげだ。
カインさんにはほんと、足を向けて眠れない。
そして、間もなくやってくるのが、ゲームでの最終イベントでもある、卒業パーティーだった。




