第146話:ボクが先に好きだったのに
「おう。やってるな」
私立アルケイデス学園。その図書室でのこと。俺はカホルに呼び出されて顔を出した。さすがに夏休みになれば生徒などいないガラガラで。カホルと、カホルに勉強を見てもらっている人公だけ。まぁそりゃ休日まで学校にはいたくないだろうし。本が読みたいなら近くに大きな図書館がある。そっちを利用するのが普通はいいのだろう。
「アクヤ様♪ お出迎え下さりありがとうございます♪」
で、こっちを見てニコリと微笑んだカホル。俺も照れ笑いで応じる。彼女は嬉しそうに俺に近寄ってきて、そうして爽やかな笑顔になる。
「…………カホル?」
その俺とカホルを見て、人公が呆然としていた。まるで今の状況が理解できていないらしい。ま、別に理解してもらわなくてもいいのだが。
「何?」
で、俺の手首を握って嬉しそうにしているカホルに人公が問う。
「午後の予定って?」
「ん? アクヤ様とのデートだけど?」
何を今更みたいな口調でカホルはそう言う。俺としても午後からのカホルとのデートは楽しみだったので、嬉しい限り。
「あくやさまとでえと? なんだそれ? カホルは何を言ってるんだ? 日本語でオーケーなんだが?」
「じゃ、そゆわけで。午後からは一人で勉強頑張ってね」
そのままニコニコしながらカホルは俺に抱き着く。一応学校なんだがな。
「は? はあ? はああああああ!?」
勉強していたのだろう。参考書を散乱させながら人公が理解を拒んでいた。
「カホル! 何ふざけたこと言って!」
「一切ふざけてないけど。今からアクヤ様とデート。何かおかしい?」
「ソイツはコヲリとホムラに手を出してるクソ野郎だぞ!?」
「知ってるけど?」
「だったらわかるだろ! そんな最低な奴に付き合っても!」
「だって惚れちゃったもん♪ アクヤ様の女になれるなら二番目でもいいよ?」
「可愛い可愛い」
俺はカホルの頭をナデナデした。ピンク色の髪がとても素敵だ。もちろん人公の顔も傑作だ。マジで「は?」って感じ。呪術師の親友が田舎の村で大量殺戮したって言われた方がまだ信じられる、みたいな。
「何言ってんだよ……カホル……そいつはクソの掃き溜めみたいな野郎で……」
酷いことを言われているのはわかる。まぁ人公にしたらそれが真実なんだろうな。
「ん♡ ちゅ♡」
青ざめる人公の前で、カホルは俺にキスをした。ここが学校内だということも忘れたかのように。それから俺の胸板に頭を傾けて、うっとりとしている。
「もう私はアクヤ様の女だから。アクヤ様の御機嫌が第一なんだよ?」
あっさりと人公にはわけの分からないことを言うカホル。そのカホルに、今度は俺がキスをする。そつなく。まるで当たり前のように。カホルの所有権を主張して。
「カホルは本当に可愛いな」
そうしてカホルを強く抱きしめて、自愛の瞳で見つめる。その御本人的にありえない光景に人公の思考がショートする。
「九王! てめ! 離れろ!」
「嫌に決まってんだろ。カホルは俺の女だからな」
分かっていることをいちいち言わせるな。表情と声でそう語る。
「カホルはボクの女だ!」
「そうなのか? カホル?」
「ううん? あんなのアルシの妄言。私はあの時からアクヤ様の女だよ?」
あの時ってのが何時を指すのか。映画で倒れた時か。あるいは俺の性奴隷になった時か。
「騙されるな! カホル! そいつは悪意の塊で!」
「せめてソースを出して喋って? 妄言に付き合うのもいい加減疲れるんだよねー。アルシってなんか最初からアクヤ様にあたり強かったけど、否定する言葉に根拠が追いついていないんだよねー」
俺に抱きしめられながら、嘲るように人公を笑う。
「そんなチャラ男見ただけで危ないってわかるだろ! バカなのか!?」
「えー。誠実だよ? アクヤ様。ちゃんと私たちを相手にしてくれるし」
「私…………たち?」
「じゃ、そういうわけで」
早くデートに行こう、と俺を催促するカホル。もうメスの顔で。この後を期待している。
「ま、待てよ! ボクはまだ納得してないぞ!」
「別に説得する気も無いし。一々こっちの恋愛に否定の言葉を挟まないでくれる? せっかくこれからアクヤ様とデートだっていうのに」
「それが間違ってるって言ってんだよ!」
我慢の利かない駄々っ子だ。現実を受け入れるだけのキャパシティが無いのだろう。それを哀れとは思うが。とは言ってもヒロインたちをお前に委ねることはしないんだが。
「九王。お前……」
「まぁカホルの方から好きって言ってくれているし。拒む理由も無いしな。こんないい女」
カホルのHカップの爆乳を制服越しに揉んで、その感触を楽しむ。青ざめる人公。
「アクヤ様ぁ♡ 大好き♡」
そしてまたカホルは俺とキスをする。もう人公は、血流が乱れて意識が濃霧に呑まれかけている。カホルが俺の女。俺のことが好き。その事実をどう受け止めているのか。別に知りたいとも思わなくて。
「ほら。見て。アルシ。私のココ」
で、結局それを見せるのか。と俺が心の中で苦笑。俺に抱かれたまま、恥じらいながらカホルは制服のスカートをずり下げる。もちろんパンツを見せるわけじゃない。その部位に辿り着く前に、彼女のへそが見え。下腹部が見えた。女性にしかない器官。その器官の存在する部分の体表面にデコレーションがあった。淡い紫で描かれたハートマーク。そのハートマークを盛り上げるように植物のツタのようなデザインが中央から下腹部の左右に広がっている。その紋様を俺は知っている。人公も知っているだろう。淫紋って奴だ。女性が嫌らしい目的で身体に刻むタトゥー。それを恥ずかしそうに人公に見せつけるカホル。その顔は蕩けていて、俺のモノになったことを人公に見せつけて喜んでさえいる。
「ほら。もう私はアクヤ様のモノ♡」
さらにその下には『アクヤ様専用♡』の文字。もうカホルの身体は俺が頂いている。身も心もカホルは俺に捧げている。淫紋はその証拠で、カホルにとっては俺の所有物になれることが何より嬉しいのだろう。
「だからね? アルシ。これからは私に話しかけるときはアクヤ様の許可をとってね? 私はアクヤ様に忠誠を誓っているから、あんまりアクヤ様を心配させるようなことは慎みたいの♪」
子宮の上に描かれた淫紋と『アクヤ様専用♡』の文字。それから俺に胸を揉まれて嬉しそうにするカホルのメスの顔。全てが特攻効果だった。
「う……ッ……」
いきなり人公が苦しみ出して、押さえつけるように口元をふさぐ。だがそれでも胃液の逆流の方が強かった。図書室という空間。俺にカホルを寝取られたこと。そのカホルが淫紋を刻んで、俺の服従していること。それらがプレッシャーとなって人公は図書室で嘔吐した。ゲロが口元から零れ、そのまま盛大にぶちまける。くすくすと笑うカホル。
「わー。きったなーい。ちゃんと掃除するんだよー?」
俺の腕に抱き着いて、嘲るようにカホルは言う。
「げぇ……ぇえ……! 嘘だ……。カホルはボクのモノで。ボクが先に好きだったのに」
今更だな。お前がヒロインたちに何をしたのか。指折り数えていろ。
「ねぇえ? アクヤ様♡ ホテル行こ?」
「そうだな。ホテルデートするか。たっぷり可愛がってやるからな」
「あは♡ アクヤ様に愛されるなんて、私世界一の幸せ者かも♡」
図書室に吐瀉物をぶちまけた人公を、カホルは全く気にもしなかった。もう人公に一パーセントも期待していないのだろう。コヲリを蔑み、ホムラを罵り、カホルを犯そうとした。そんな男に、カホルたちが相応しいわけがなくて。
俺としてもコイツにカホルたちを任せる気には一切ならないし。




