第143話:実は空なりし
【人公アルシ視点】
「…………」
カリカリとペンを動かす。買った参考書で理解を進めながらなんとか課題をこなしている。ここには教師もいなくて、教えてくれる知人もいない。ボクは一人で課題をこなす必要に迫られていた。なんというか虚無感だけが広がる。今まではカホルがいて、コヲリがいて、ホムラがいて、四人で何とか回していたのに。それがもう喪失している。やっぱり一人暮らしを辞めさせるか? でもコヲリとホムラは九王に騙されて夢中だしな。カホルの親から金を出させて一人暮らしとか、その時点でアウトだろ。
「クソ、わかんねえ」
頭をかいて、課題の難解さに舌打ちする。そもそも高校二年の授業って何でこんなに難しいんだ。一年の頃はまだ理解できたのに。そこそこ点数とってたよな? ボク……。
「カホルに頭を下げて……教えて貰うか」
仕方なくカホルにメッセージを送る。
『勉強教えて』
『無理』
一刀両断かよ。
『模試の勉強で忙しいの。三年生の範囲まで勉強してるからあんたに割くリソースが無い』
『まだ受験勉強しなくてよくね?』
それがボクの率直な意見だ。
『そりゃアルシはそうだろうね。どこの大学でもいいんでしょ?』
まるで自分は行きたい大学があるかのような。いや、あるんだろうな。だから勉強を頑張りたいと。
『じゃあ模試が終わったら課題見てくれない? 写したりしないからさ』
『じゃあ都合がつけば善処します』
ふぅ。助かった。これで首が繋がった。やっぱりカホルは最高だ。最高の女だ。三人の中で一番おっぱい大きいし、勉強もできる。なによりボクを見捨てない。その点がコヲリやホムラがダメなところだよな。残念だったな九王。いくらお前がコヲリやホムラを誑かそうと、カホルはそれよりいい女なんだよなぁ。総合的にはボクの勝ちってことで。
そう思っていると肩の力が抜けた。参考書を熟読しながら課題に取り組んで、今はゲームもしていない。分からないところは飛ばそう。後でカホルに教えて貰えばいい。わかるところだけ進めていこう。そう思ったが集中力が続かない。一時ペンを置いて、それから息を吐く。
「はぁ」
ちょっと休憩。そう思って視線をベッドに。そこには一冊の写真集があった。
「小比類巻さん……」
先月末に発売された写真集。もう何回お世話になったか分からない。可愛くて綺麗でおっぱいも大きくて。男の趣味だけは悪いけど。
「とは言ってもアイドルだし。恋愛はしていないんだろうな……」
エチエチな水着姿を見るだけでボクの股間が滾っていく。
「勉強ばかりしていてもアレだし……」
右手が自然と動いた。
「ふ……ぅ……」
G行為に及ぶのは自然だった。雑念が頭にあると集中力も乱れる。その意味では一発出すことも必要だよな。
「小比類巻さん……ッッ」
黄昏。やり遂げた後に、脱力感が来る。
「あんな可愛いのに男を見る目が無いんだよなー」
ボクだったら満足させてあげるのに。っていうか写真集の売上次第では結構給料入るんだろ? 意外と優良物件? カホルたちとも仲良さそうだったし。コヲリとホムラはこっちからごめんだが、カホルを伝って小比類巻さんに接触すればワンチャン……。
「アイドルだから処女だろうし。ちょっとそそられるな」
カホルからアカウント聞いて接触してもいいかもな。カホルとは勉強会をすることを取り付けたし。
「そう考えるとボクの圧勝じゃね? カホルと小比類巻さんは爆乳だし。アクヤに残されているのは偽乳隊長だしな」
そうだよ。卑屈になる必要なんてないんだよ。ボクの方がステータス的に優れているんだ。ちょっと勉強できる程度で図に乗らないでほしいな。とするとカホルの機嫌を取る方法を模索しないとな。カホルと小比類巻さんを堕とすために。
*****
【九王アクヤ視点】
「あぁぁあぁ……やってしまったぁ……」
俺が頭を抱えていると、ダウンケットで裸体を包んでいるマキノが苦笑した。
「何を今更っしょ。アクヤのアレ。最高だったよ?」
筋肉のことな! 間違いない!
「っていうか事務所的にあり?」
「無しかなー。まぁでもグラドルって存在自体がエッチだから」
それはちょっと否定したいような。
「今度巨乳の女性用のファッションモデル頼まれてるんだけど」
「ついていけばいいんだろ?」
「ありがとっしょ。お礼にいっぱいしてあげるからさ?」
「さすがのアルケイデス学園の男子どもが可哀想だ」
今バズっているグラビアアイドル、アズキちゃんが男と寝ているなんて。
「あーしはアクヤが好き。アクヤは?」
「……………………大好き」
「なんで三点リーダを挟むの?」
覚悟がいるんだよ。色々とな。
「ま、あーしはそれでもいいけど。ほら。三回戦しよ?」
「お前保つのか?」
「まーねー」
それもそれでどうよという気はしないではないが。
「ほら。全国の男性があーしの写真集でいたしてるのに、アクヤだけはあーしを直に触れられるんだよ。光栄だと思わない?」
「…………超思う」
「だからさぁ♡ ね? もう一戦しよ?」
「カホルたちに説明はしてるのか?」
「うん♡ 今日はあーしが独占するの。いつもはカホルたちにアドバンテージがあるからね」
ラリルトリオはお隣さんだしな。マキノだけ母親と社宅で暮らしている。つまり気軽に俺を訪問できない。ディスタンスが他三人より問題になる。
「っていうかアクヤのソレだってまだまだって言ってるじゃん」
「あと二回はいけるぞ」
「あーしで出しつくしてね」
「思いっきり校則違反だよな?」
「幸せ家族計画はしてるし」
それはそうなんだが。そもそもここで問題を起こすわけにもいかんのが俺の辛いところで。
「っていうか。俺の何がいいの?」
「全部かなー。っていうかそのことに理由っているの?」
「…………」
俺は黙ってキスをした。それもディープな奴。まだ俺の中の獣は治まっていない。相手をしてくれるなら確かに助かる側面はあって。
「アクヤぁ♡」
「マジでやるからな?」
「アクヤにだけ特別。みんなあーしの写真集でやってるけど、この世界でアクヤだけはあーしを直接触れるの」
実は空なりし、か。
「その内即身仏になれそうだな」
キスして。抱きしめて。俺とマキノのシルエットが重なった。レディとレディファイト。
今頃人公もマキノの写真集で……いや考えるのは止めよう……。




