あとがき
はじめまして&こんにちわ、雪宮鉄馬です。
この度は、雪宮の拙作「トーコと黒いこうもり傘」を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。文章力、表現力の乏しさや、ファンタジーへの知識のなさから、読みにくい部分などあったかとは思いますが、なんとか完結させることが出来たのも、読んでいただいた皆様のおかげです。本当にありがとうございました。
まだ本編は読んでないけど、とりあえず「あとがき」から読んでみたという方は、今すぐ引き返して、本編を読んでいただけると、作者としてはこの上もなく幸せと存じます。よろしくお願いします。
さて、ここから先はネタバレもありの、製作裏話など交えながら、あとがきを書いていきたいと思います。もういちど、まだ本編を読まれてないと言う方は、ぜひ本編を!
まず、今回の小説のコンセプトは、そのものずばり「現代モノ」×「剣と魔法のファンタジー」です。しかし、当初、物語の企画を立ち上げた段階では「魔法の傘で空を飛ぶ女の子の物語」という、実に具体性のない企画でした。それを、今回のような形にまで押し上げたのは、幼少のころの記憶です。
自分で言うと切なくなるのですが、アホな子どもだったわたしは、よく傘を剣や鉄砲に見立てて、ヒーローごっこをしていました。おかげで、何度傘の骨を折ったことか……。この幼少時代の思い出から発案を得て、傘を剣や弓矢に見立てて戦う、魔法バトルを組み込んだら面白くなるんじゃないだろうか、と考え、そこから次第に物語が膨らんでいきました。うーん、大人になった今でも充分アホですね、わたし。
ところが、ここで問題が!! わたしは「ファンタジー」の知識が皆無です。なんなら、ファンタジーのファの字も知らないくらいです。そこでネットを駆使して、徐々に世界観の外堀を埋めていきました。一度きっかけを掴むと、後は芋づる式(?)に世界観や物語が組み上げられてい来ました。そのきっかけと言うのが、ドイツです。何でドイツかというと、何だか言葉の響きがかっこいいからです。ヴァイスとか、シュバルツとか……。アホまるだしやんっ、雪宮っ!
本作に登場する魔法は、一応すべてドイツ語を当てています。意訳なので、正しいドイツ語の文法には乗っ取っていません。音の響きを最優先に考えました。魔法の様式などは、若干テレビゲームっぽい感じに纏め上げ、予めすべての魔法を設定してから執筆に取り掛かりました。
更にそこから、魔法の言葉がドイツ語なら、出てくる敵も、ドイツの魔物にしよう、と言うことでいくつかドイツの魔物をピックアップしました。もちろん、物語にあわせるため、彼らの容姿などはアレンジを大胆すぎるくらいにくわえてあります。登場したドイツの魔物は、「コボルト」「アルラウネ」「ブリーラー・レッスル」「アルプ」「ゲシュペンスト」「イルリヒト」「ザントメンヒェン」「ハインツェルメンヒェン」「メーアヴァイパー」「ノインテーター」「ピルヴィッツ」です。たくさん登場させました。
そして、魔法も魔物もドイツなら、物語の根幹になるバックグラウンドも、ドイツの伝説から拝借しよう、と言うことになり、いくつもあるドイツの伝説から、非常に魅力的な題材としてわが瞳に映ったのが「ファウスト伝説」です。
ファンタジー好き&詳しい方々であれば、あまりにも有名なお話で、作中でもちらっと出しましたが、ゲーテの戯曲『ファウスト』は、ファンタジーを知らない方々の間でも、とても有名です。しかし、本作は、1585年にシュピースと言う人が民間伝承をもとに書いた(と言われている)『実伝ファウスト博士』を下敷きとしています。
あくまで物語のベースなので、そこからいろいろといじったり、ゲーテの『ファウスト』を混ぜたりして、雪宮版「ファウスト伝説」に勝手にアレンジしています。「ファウスト伝説」に詳しい方から「ふざけるな!」とお叱りを受けるほどに、いじり倒してます。
例えば、ファウストが恋した街娘の名前を「グレートヒェン」としたり、グレートヒェンの兄ヴァレンティンが登場したり、ホムンクルスが登場するところなどは、ゲーテ版から。ヘレネーがただの人間だったり、ユストゥスが『ニーベルンゲンの指輪』に登場する剣を持っていたり、秘密結社「ワルブルガ」の存在や、そもそも、ファウストやヘレネーたちが転生したりするところはすべて、雪宮オリジナルです。そのほかにも、実在の人物マルティン・ルターと同窓だったりするのは、史実からのアレンジです。
また、ファウストの名前ですが、一般には「ゲオルグ・ファウスト」として通っているようですが、どうもそれはペンネームみたいなものだったらしく、本名は「ヨハン」もしくは「ヨハネス・ファウスト」と言うそうです。本作でもそちらを採用しました。
話はがらっと百八十度変わって、今回も名前にはちょっとしたお遊びがあります。分かりやすいところで言えば、トーコ、阿南くん、ソフィ、ヴェステンの四人は、それぞれ名前に、東西南北が当ててあります。「東子」「阿南」「ノルデン(ドイツ語で北)」「ヴェステン(ドイツ語で西)」。この東西南北は、異界の扉を開けるときに、担当した方角とリンクしています。
また、トーコのお母さんの名前が今日子というのは、「とう+きょう」というただのダジャレだったりします。また、ソフィの名前ですが、ドイツ人女性の名前が思い浮かばず、『ソフィの世界』というドイツの哲学小説の主人公から拝借しました。
そして、そのほかのキャラクター(ファウスト関連の固有名は除く)の苗字には、すべて共通点があります。さて、その共通点とは何でしょう? 。正解者の中から抽選で……何の賞品もありませんが(笑)、ぜひ、お暇がありましたら「メッセージボックス」でこっそり教えてくださると嬉しいです。
こうして何とか出来上がった小説は、『千年の約束を君に』を悠に超える、原稿用紙換算794枚と、これまで書かせていただいた拙作のなかでも、もっとも長編作品となりました。実に、制作期間も二ヵ月強に及びました。まさか、そんなに長くなるとは思っておらず、当初の予定では、全十話の予定が、気付けば三十話、イヤイヤ、まだ終わらないぞ五十話……てなかんじで、どんどん延びていきました。
しかし、その一方で、あえて、エンターテイメント性を導入しつつ、登場人物のキャラクターや、戦闘シーンの割り振り方も漫画的な要素を盛り込みつつ、作者自身も毎日楽しく書けた作品でもありました。その分、愛着もひとしおです。
そんな、わたしの小説を読んでいただいた皆様、そして、お気に入り登録していただいた皆様、さらに、感想まで書いてくださった皆様、本当にありがとうございました。
ファンタジー知らずの人間が書いた駄作故に、ツッコミどころもたくさんあると思います。そういったツッコミや、ご意見、質問、感想などは、いつまででも受け付けておりますので、何かしら思うことがありましたら、是非よろしくお願いします。
では、最後にもう一度心から。ありがとうございました!
次回作でも皆さんとお会いできることを楽しみにしつつ、今回はこの辺で……ではでは。
雪宮鉄馬 2010/7