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「養育院も建設工事は順調だ。話をするか? それとも、先に見に行くか?」
ひとしきり全員を抱擁し終えたのを見て、シェダルが切り出す。
「お話を聞かせてください」
迷わずそう答え、サクラは近衛騎士舎へと移動した。
執務室に入ると、シェダルは一番大きなソファにどかりと座る。サクラはその正面に座り、クレイセスは背後に立ち、イリューザーは足許に伏せた。
「異能を飼ってるのはパッシバルだ」
前置きもなくそう言ったシェダルに、サクラの顔色は変わる。
「アスティーとラッツィーを取り戻しに来た、ということでしょうか」
「多分な」
パッシバル、それは公爵家であり、二人が生まれ育ち、逃げ出してきたところ。二人は詳細こそ話さないが、絶対に戻りたくないという意思だけは示した。そうである以上、サクラは二人を帰すつもりも、渡すつもりもない。
「従騎士としてテメエのモンだと宣言しろ。公爵黙らせるにはそれしかねえ」
シェダルの進言に、サクラは頷く。バララトにも言われたことだ。帰ってきたらアスティーとラツィアに打診するつもりだったが、こんなにも急を要する話になるとは。
「イリューザー、ラッツィーを呼んできてくれる?」
言えば、伏せていたイリューザーはのそりと体を起こすと、執務室を出て行く。扉は、クレイセスが開けた。
シェダルは扉が閉まるまでイリューザーを視線で追いかけており、サクラはオルゴン愛もご健在、と少し和む。そうしてクレイセスに、アスティーに会いに養成学校に行きたい旨を伝えれば、「多分夕方には戻る」とシェダルが言った。
「え? 今日、帰宅出来る日とかなんですか?」
「いんや。嬢ちゃんが戻って来たから今朝方、俺様が危篤につきすぐに帰れって、ゼグリア便で校長に送っといた」
「俺様が危篤、ですか」
「もう少し、信憑性のある嘘でも書けば良いものを」
クレイセスの突っ込みに、「ありそうだろうが!」とシェダルは吠えるが、サクラも同じことを思っていただけに黙っておく。




