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命の欠片 ―黒衣のセルシアⅣ―  作者: 吉野衣織
Ⅱ 名前をあなたに
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6

「養育院も建設工事は順調だ。話をするか? それとも、先に見に行くか?」

 ひとしきり全員を抱擁し終えたのを見て、シェダルが切り出す。


「お話を聞かせてください」

 迷わずそう答え、サクラは近衛騎士舎へと移動した。


 執務室に入ると、シェダルは一番大きなソファにどかりと座る。サクラはその正面に座り、クレイセスは背後に立ち、イリューザーは足許に伏せた。


「異能を飼ってるのはパッシバルだ」

 前置きもなくそう言ったシェダルに、サクラの顔色は変わる。

「アスティーとラッツィーを取り戻しに来た、ということでしょうか」

「多分な」


 パッシバル、それは公爵家であり、二人が生まれ育ち、逃げ出してきたところ。二人は詳細こそ話さないが、絶対に戻りたくないという意思だけは示した。そうである以上、サクラは二人を帰すつもりも、渡すつもりもない。


従騎士(ヴァルフレイア)としてテメエのモンだと宣言しろ。公爵黙らせるにはそれしかねえ」

 シェダルの進言に、サクラは頷く。バララトにも言われたことだ。帰ってきたらアスティーとラツィアに打診するつもりだったが、こんなにも急を要する話になるとは。


「イリューザー、ラッツィーを呼んできてくれる?」

 言えば、伏せていたイリューザーはのそりと体を起こすと、執務室を出て行く。扉は、クレイセスが開けた。


 シェダルは扉が閉まるまでイリューザーを視線で追いかけており、サクラはオルゴン愛もご健在、と少し(なご)む。そうしてクレイセスに、アスティーに会いに養成学校に行きたい旨を伝えれば、「多分夕方には戻る」とシェダルが言った。


「え? 今日、帰宅出来る日とかなんですか?」

「いんや。嬢ちゃんが戻って来たから今朝方、俺様が危篤につきすぐに帰れって、ゼグリア便で校長に送っといた」

「俺様が危篤、ですか」

「もう少し、信憑性のある嘘でも書けば良いものを」


 クレイセスの突っ込みに、「ありそうだろうが!」とシェダルは吠えるが、サクラも同じことを思っていただけに黙っておく。

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