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「サクラ様あのね! おばけ、来たんだよ!」
「え? お化け?」
四歳のセルバドが、ひとりひとりを見回していたサクラの意識を向けるよう、ドレスを引っ張りながらそう言ったのに、思わず怪訝な顔をしてしまう。
「そう! それでね! シェダるんのきんにくが守ってくれたの!」
「え、筋肉……?」
そこは普通にシェダルさんで良くない? と思いつつ、愛称、「シェダるん」で定着したのかあ、とほのぼのした気持ちでいれば。
「そいつは見えねぇで、でもいるところは陽炎みたいに揺らいでいた」
と、シェダルがイリューザーの角に手を伸ばしては躱されながら、付け加えた。その所為で、顎髭部分の鬣では、しがみついたままのクリムが、ぷらんぷらん振り回されている。
「それは、フィルセインの異能ってこと、ですか」
瞬時に緊迫感を帯びたサクラとクレイセスに、シェダルは「いいや」と首を振る。
「あとで教えてやる」
そう言って、近衛騎士舎を顎でしゃくった。
「そいつは、仕留めたのですか」
訊いたクレイセスに、シェダルは自慢気に鼻息を荒くしながら、「当然!」と答える。
それにしても、とサクラはみんなの髪をまじまじと見つめた。
この世界の人々は、強くない限り、髪は切らないものだと聞いた。騎士たちはほとんどが短いため失念していたが、子供たちの髪の毛も、だいぶ伸びている。
ラツィアの髪は特に綺麗で、ユリゼラとサンドラの、中間くらいの金色をしている。もう腰よりも少し長い。それをざっくりとした三つ編みにして背中に垂らしている姿は、なんだか大人っぽいものだ。
首を守るための盾、と聞いた。男の子は適当にひとつに括っているだけだが、女の子はお団子にしたりツインテールにしたりと、守るはずの首は剥き出しで、ただの装飾用になっている。降ろしてる子ももちろんいるが、数は少ない。やはり装飾としての役割も、強く果たしているのだろう。




