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朝食が済むのを見計らったようにクレイセスが現れ、ユリゼラとセレトは戻って行った。
「サンドラさんとクロシェさんは」
扉のすぐ傍で二人を見送っていたクレイセスに駆け寄り、扉を閉めるなり挨拶よりも先に切り出したサクラに、クレイセスが微笑む。
「サンドラは、シンがすぐに解毒薬を飲ませて怪我も処置しました。多少発熱はしましたが、峠は越えています。クロシェは……あれは、腕を完全に切り落とされた、と見ましたが?」
それに頷けば、得心したように嘆息して続ける。
「あなたが綺麗に治癒したおかげで、傷らしい傷ひとつ、どこにも見当たりませんでした。二人とも、あとは養生させるしか。それよりサクラ、あなたの具合が悪いことは」
心配するクレイセスに「ないです」と答え、サクラは詰めていた息をつく。
サンドラもクロシェも、無事ならそれでいい。
そして。
「メイベル、は」
「……気になるのですか」
すっと冷ややかな空気を纏った表情に、サクラはそれでもコクリと首を縦に振った。クレイセスのこの反応はどちらなのだろうと、二人の無事に一度は緩めた気持ちが、再び緊張する。
「彼女は、ちゃんと、生きていますか」
「それは、どういう?」
思い出したのは、サンドラとクロシェのことだけじゃない。自分が何をしようとしたのか────それもだ。
「わたし……」
聞くのをためらうサクラを、クレイセスが黙って見つめている。自然と震える指先を抑えるようにして組めば、手袋をしたクレイセスの手が、片手でそれを包んだ。
「何を、恐れているのです?」
わずかに眉間を寄せた表情になり、サクラは一度、ぎゅっと目を閉じて言った。
「彼女を、喰らっていませんか……?」
恐る恐るクレイセスを見上げれば。
「いいえ」
と答えがあった。




