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命の欠片 ―黒衣のセルシアⅣ―  作者: 吉野衣織
Ⅱ 名前をあなたに
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1

 朝食が済むのを見計らったようにクレイセスが現れ、ユリゼラとセレトは戻って行った。


「サンドラさんとクロシェさんは」

 扉のすぐ傍で二人を見送っていたクレイセスに駆け寄り、扉を閉めるなり挨拶よりも先に切り出したサクラに、クレイセスが微笑む。


「サンドラは、シンがすぐに解毒薬を飲ませて怪我も処置しました。多少発熱はしましたが、峠は越えています。クロシェは……あれは、腕を完全に切り落とされた、と見ましたが?」

 それに頷けば、得心したように嘆息して続ける。


「あなたが綺麗に治癒したおかげで、傷らしい傷ひとつ、どこにも見当たりませんでした。二人とも、あとは養生させるしか。それよりサクラ、あなたの具合が悪いことは」

 心配するクレイセスに「ないです」と答え、サクラは詰めていた息をつく。 


 サンドラもクロシェも、無事ならそれでいい。

 そして。


「メイベル、は」

「……気になるのですか」


 すっと冷ややかな空気を(まと)った表情に、サクラはそれでもコクリと首を縦に振った。クレイセスのこの反応はどちらなのだろうと、二人の無事に一度は緩めた気持ちが、再び緊張する。


「彼女は、ちゃんと、生きていますか」

「それは、どういう?」


 思い出したのは、サンドラとクロシェのことだけじゃない。自分が何をしようとしたのか────それもだ。


「わたし……」

 聞くのをためらうサクラを、クレイセスが黙って見つめている。自然と震える指先を抑えるようにして組めば、手袋をしたクレイセスの手が、片手でそれを包んだ。


「何を、恐れているのです?」

 わずかに眉間を寄せた表情になり、サクラは一度、ぎゅっと目を閉じて言った。


「彼女を、喰らっていませんか……?」


 恐る恐るクレイセスを見上げれば。

「いいえ」

 と答えがあった。


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