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セルシア騎士団が担う「正義」の部分、それがあるからこそ皆が従う、心理的、道徳的な「均衡」がある。クレイセスが、自身の立場をわかっているからこそ濁した判断を理解した今、彼らには組織として、この件においてそこがもっとも譲れない線であることは、王として、処罰の軽重を扱うハーシェルには、窺い知れた。
「いいや。提出させるさ。罪は明らかにする。セルシアを売り渡すことを『未遂に』防げた、しかし同時に暗部に手を染めていることも発覚したとして、潔く処分を申し出るように言う。俺は未遂に防げた事実をもってエルネスト公爵家を庇い、家格を据え置くだけだ。裏組織との繋がりを提出させることで、公爵自身が『白』であると印象付けることも出来る。あとは、お前たちが好きにすればいい」
「組織を摘発することで、新たな貴族が出てきた場合は?」
「それはそのときに考える。この聖婚話に名を上げている貴族は、今のところ関係はなさそうだから、問題ないとは思うが」
セルシアとの婚姻が議題として上がっている今、セルシア騎士団が名乗りを上げている貴族を摘発すれば、それはそのままアリアロス家による妨害とも取られてしまいかねない。それも含めて、バララトは一度目を閉じると、「わかりました」と諾意を示す。
「クレイセス様にも騎士たちにも、そのように説明致します。エルネスト公爵家を完全掌握出来るのですから、ハーシェル王に実入りが大きいような気もしますが、それはこの際目をつぶりましょうか」
「そうしてくれ。いずれ何かで報いるさ」
「そういう意味では、貸しばかり作っている気もしますけどねえ」
「言うな。首が回らなくなる」
バララトのふっと力の抜けた視線にほっとし、ハーシェルは二人の背中を押しやりながら言った。
「二人とももう休め。サクラが目覚めたら、求婚者捌くのに忙しくなるからな」
それもまた頭が痛い、というような複雑な表情を残し、二人は最奥をあとにしたのだった。
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