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「なるほど。王妃誘拐事件でウルスティン公爵は侯爵となり、フィルセインもすでに公爵位を廃されている。それにエルネスト公爵家まで潰れるとなれば、残る公爵家は五つ。しかしいずれも、アリアロスに匹敵するほどの勢力ではありませんね」
アクセルが己の頭の中を整理するように、独り言のように呟く。
「そうだ。そして貴族の警戒を懸念するアリアロス家から距離を置かれることは、俺にとって大きな痛手だ」
クレイセスを糾弾するような形が出来てしまうことで、現アリアロス卿に手を引かれれば、自分はたちまち立ちゆかなくなる。それを臆面もなく言えば、アクセルは少し目を丸くしたものの、バララトが苦笑した。
「もはやあなたの後見人のような役割を果たされていますからね。それはわかります。では、今回の件を、どのように治めるおつもりか」
視線を強くしたバララトに、ハーシェルは断言する。
「メイベルには死んでもらう」
「どうやって」
「家内の内部紛争の結果とする。この時勢にあってセルシアをフィルセインに渡そうとした罪は極刑に価する。取り潰しか、情状酌量でも家格降下だ。エルネスト公爵家が今のままでありたければ、この取引には応じるだろう。……現公爵は、メイベルと血縁ではないしな。個人的な蟠りも含めて、危険な女を飼っておくような余裕はないはずだ」
ハーシェルの提示した内容に、バララトはふむ、と視線をずらした。
「今のセルシア騎士団はクレイセス様を中心にまとまっています。サクラ様の信頼も深い。アリアロス家が警戒されることを考慮して、騎士団を退かれるようなことになるのも困ります。しかし、メイベルは収集家としての一面もあり、裏組織とも繋がっていた。それにも目をつぶれと?」




