表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
命の欠片 ―黒衣のセルシアⅣ―  作者: 吉野衣織
Ⅰ真夜中の凱旋
14/31

14

「────クロシェさん!」

 自分の声に驚き、サクラは目を開けた。


「……?」


 どこかで見たような天井。肩に誰かがいる重み。

(……最奥(さいおう)?)

 記憶が少しずつ(よみがえ)り、そろそろと体をずらして肩の重みに目をやれば。


(……ユリゼラ様?)

 目が、このまま眺めていたいと訴える、溜息が出るほどに美しい寝顔。夏だからだろうか、広めに開いた胸元に見える白く深い谷間が、サクラにはことさら(まばゆ)く見えた。


 いつの間に戻って来たのだろう……と、ユリゼラの下から抜けてそっと上体を起こす。気配を察したのか、ベッドの下からぬっとイリューザーが現れ、前肢(まえあし)をのせるとぐりぐりと鼻筋をこすりつけて来る。その(たてがみ)から、顔を出した精霊がふわりと飛び上がると、サクラの目の前で不安そうな表情で停止した。


「あれ……飛べるようになった、の?」

 目を見開いたサクラの前で、くるりと宙を舞って見せる姿に、サクラは微笑んだ。


「イリューザー……わたし、どうしたんだっけ……?」

 誰かの名前を呼んで、目覚めた気がする。


 気が付けば、少年姿ではなくなっていて。着替えさせてくれたのはサンドラかと思ったところで、一連のことを思い出した。


 サンドラは、毒に倒れた────自分を整えてくれたのは、彼女ではない。

 クロシェの、腕が飛んだ────繋げたような気はするけれど、確信が持てない。


 一体、どのくらいの間意識を失っていたのだろうと、サクラは青くなった。

 そして。


「あ……」

 ベッドから出ようとして、サクラは思い出す。


(────食べようとした)


 メイベルを、喰らおうとしたことを。

 どくりと、心臓が嫌な音を立てて速度を速める。


「サクラ……?」

 口許を押さえて身震いしたところに、背後から眠気を含んだやわらかな声音がして。

 振り向けば、ユリゼラが覆い被さるようにして抱きついてきたのに、サクラはまたベッドに沈んだ。


「お帰りなさい……! あんまりにも動かないから、本当に大丈夫なのかと……」

 目が覚めて良かった、と涙ぐんだ顔できつく抱き締められ、サクラは(はや)る気持ちを抑えながら訊く。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ