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「────クロシェさん!」
自分の声に驚き、サクラは目を開けた。
「……?」
どこかで見たような天井。肩に誰かがいる重み。
(……最奥?)
記憶が少しずつ甦り、そろそろと体をずらして肩の重みに目をやれば。
(……ユリゼラ様?)
目が、このまま眺めていたいと訴える、溜息が出るほどに美しい寝顔。夏だからだろうか、広めに開いた胸元に見える白く深い谷間が、サクラにはことさら眩く見えた。
いつの間に戻って来たのだろう……と、ユリゼラの下から抜けてそっと上体を起こす。気配を察したのか、ベッドの下からぬっとイリューザーが現れ、前肢をのせるとぐりぐりと鼻筋をこすりつけて来る。その鬣から、顔を出した精霊がふわりと飛び上がると、サクラの目の前で不安そうな表情で停止した。
「あれ……飛べるようになった、の?」
目を見開いたサクラの前で、くるりと宙を舞って見せる姿に、サクラは微笑んだ。
「イリューザー……わたし、どうしたんだっけ……?」
誰かの名前を呼んで、目覚めた気がする。
気が付けば、少年姿ではなくなっていて。着替えさせてくれたのはサンドラかと思ったところで、一連のことを思い出した。
サンドラは、毒に倒れた────自分を整えてくれたのは、彼女ではない。
クロシェの、腕が飛んだ────繋げたような気はするけれど、確信が持てない。
一体、どのくらいの間意識を失っていたのだろうと、サクラは青くなった。
そして。
「あ……」
ベッドから出ようとして、サクラは思い出す。
(────食べようとした)
メイベルを、喰らおうとしたことを。
どくりと、心臓が嫌な音を立てて速度を速める。
「サクラ……?」
口許を押さえて身震いしたところに、背後から眠気を含んだやわらかな声音がして。
振り向けば、ユリゼラが覆い被さるようにして抱きついてきたのに、サクラはまたベッドに沈んだ。
「お帰りなさい……! あんまりにも動かないから、本当に大丈夫なのかと……」
目が覚めて良かった、と涙ぐんだ顔できつく抱き締められ、サクラは逸る気持ちを抑えながら訊く。




