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たまおの不幸な卒業文集  作者: 花南
9/34

08/05

「篠宮さん、君どこの高校受験するつもりなの?」

 夜遅くまで仕事をしていたので篠宮さんを家に送ると同じ帰り道を帰ったときにさりげなく振ってみた話題だった。

 篠宮さんの成績から考えたら第二か相模高のどちらかだと思っていたのに意外な答えがかえってくる。

「相模工業高校」

「え?」

 あそこたしか偏差値30台だったような気がするんだけれども。

「情報処理科に進もうと考えているんだ」

「へえ。数学得意だものね」

「いやまあそれもあるけどさ、私の家貧乏だから進学校進んでもまったく意味がないんだよね。先に繋がらないっていうか……」

 長い前髪を掻き上げて、篠宮さんが低くこう呟いた。

「未来がないんだ」

「未来がない?」

「高校を卒業した先ってあると思う?あるいは中学を卒業した先って必ず高校なのかなとか、そんな疑問」

「どういうこと?」

「常に……先なんてないんじゃあないかと思ってしまうんだ。瞬間瞬間を生きているだけで、先なんてないんじゃあないかって」

 考えたこともなかったよ、篠宮さん。

 僕は当たり前のように中学校を卒業して、当たり前のように高校に進むものだと思っていたし、高校を卒業したら大学に行って、そして就職するものだと思っていた。

「でも考えてみれば未来ってなんだろう。将来の夢とか篠宮さんはあるの?」

「ああまあ……すごく恥ずかしいものが」

「何?」

「世界平和。飢えも絶望も貧困もない世界があればいいとか思う」

「ミスコンにでも応募する気? 篠宮さん」

 僕が呆れたように呟いた。篠宮さんはパーツは普通のものを持っていると思う、目と耳がふたつあって鼻と口がひとつずつあるんだから。ただいつも髪は不衛生な長さしているし制服がよれよれしているからあまり見た目は綺麗には見えない。

「よくないか? 誰もお腹が空かない世界って。幸せなんていらないから平和であればいいと私は思う。みんなさ、幸せになりたいとか言うけれども、幸せとか不幸とかわかんないよね、そんな計れないものさ。お腹はみんな空くし、食べれば満腹になるし、それが満たされてりゃいいじゃん? なあ三芳」

 篠宮さんはお腹がいっぱいであれば人間が人間であるとでも思うんだろうか。食べて空気を吸っていれば人間だとでも言うつもりだろうか。人間は幸福を求めるようにできているというのに、それを求めることのどこがおかしいというのだろうか。

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