第4話、追放仲間。
ギルベルトさまが無事転移者を救出して帰ってきましたわ。
初老の男性を騎竜の後ろに乗せていますの。
「まあっ、シルベスタ事務局長ではありませんかっ」
王宮の事務局の長ですわ。
「やあ、この前ぶりじゃのお、エメラルド嬢」
「あ」
「あ」
ギルベルトさまと目が合いましたわ。
お顔を赤くなされてますわ。
私も同じように顔を赤くしていると思いますの。
見つめ合う二人。
「……ふむん。いいかの?」
「あ、ああ」
「は、はいですわっ」
我に返りましたわ。
「で、なぜ追放されましたの?」
王都追放仲間?として私が事情を聞くことになりましたわ。
シルベスタさまと私は、事務関係の仕事で師匠と弟子のような関係でしたので。
「いや、王太子が予算を横領しているようでなあ」
「ほれ、お前さんに使われるはずの王太子妃用の費用がフェリシア伯爵令嬢に使われておったわ」
「まあっ」
「さらに、今回の婚約破棄を公爵閣下(父)に知らせようとしたら追放されたわ」
これにより王妃や王太子の政務、給料の支給等重要な決済の必要になる事務処理が全て止まる。
当然冤罪である。
ちなみに魔獣討伐は卒業式シーズンの春先に行われる。
魔獣を春の繁殖期に間引いておかないと、各地で魔獣暴走が頻発するからだ。
「あとふた月は王も父上も王都に帰られないのですわ」
その間王太子は王都でやりたい放題だろう。
◆
約一週間後、また転移の光の柱が立った。
「またか」
ギルベルトさまがつぶやき騎竜に乗って救出に向かう。
「い、行ってらっしゃいましっ」
カチカチカチ
と私は顔を真っ赤にしながら火打石を打ちましたわ。
「い、行ってくるっ」
ギルベルトさまも顔を赤く染められましたの。
「ヒュウ、ヒュウ」
周りから冷やかしの声が上がっていましたわ。
無事救出されて帰られましたわ。
後ろに背の低いがっしりとした男性が乗っていますの。
「まあっ。王立工廠長のドワイフ様ですわっ」
ドワーフの男性が騎竜から降ろされますわ。
「久しいなあ、エメラルド壌ちゃん」
「どうしたのですわ」
「いや、なんとかいう伯爵令嬢に、癒しの魔法が使える指輪を作ったのだ」
「えっ」
ギルベルトさまが驚きの声を出しましたわ。
「……発光機能付きだ、なあ嬢ちゃん」
「なんとかいう伯爵令嬢は偽の聖女だぞ」
口封じに冤罪で追放させられたらしいですわ。
ドワイフ様が腕を組みながら言いましたの。
癒しの魔術は魔力が必要だ。
神の奇跡に代償は必要ない。
神が聞き届けてくれればなんでも《《起こる》》のだ。
ちなみに、王立工廠は物を作るほかに、魔道具を使った王宮の明かりや水道なども管理している。
工廠長がいなくなったので、近いうちに灯りや水が出なくなるだろう。
◆
その三日後、また光の柱が立った。
カチカチカチ
「行ってらっしゃいましっ、ご武運を」
私は少し頬を染めながら大きな声で言う。
「ありがとう、行ってくる」
ギルベルトさまが私と目を合わせながら答えられましたわ。
無事帰ってきましたの。
今度はメイド服を着た女性を後ろに乗せていましたの。
「まあっ、アンネマリー侍女長っ」
竜騎からおりたアンネマリー侍女長が頭を下げながら、
「お久しぶりですね、エメラルド公爵令嬢様」
「侍女長っ」
先に飛ばされてきた侍女のアリサが走り寄る。
「無事でしたか、アリサ」
「はい……どうして?」
「教会の司祭があなた以外の侍女にも危害を加えようとしました。 だからすべての侍女に暇を出しました」
侍女と言っても王宮に修行に来た貴族の令嬢だ。
「それで飛ばされたのですね」
アリサだ。
「冤罪……ですわね」
「はい」
侍女長と侍女がいなくなった王宮は荒れ果てていくだろう。
◆
さらに一週間後、転移の光の柱が立った。
カチカチカチ
「行ってらっしゃいましっ、ギルベルトさまっ、」
胸を張って火打石を打ちますの。
「うん、行ってくるっ、エメラルド嬢、帰ってきたら……」
「いやなんでもない」
おや、ギルベルトさまの頬が赤いですわ。
「……お待ちしておりますわっ」
ギルベルトさまが森に入られましたの。
帰ってこられましたわ。
「まあっ、キース料理長ではありませんか」
ギルベルトさまのうしろには大柄の男性が座りますの。
「来たぞ、アンネマリー」
騎竜から降りながら言いましたわ。
チャキリ
ひっつめ髪のアンネマリー侍女長が黒縁眼鏡をなおしましたの。
「キース、なぜここに」
「お前のいない王宮に用はねえよ」
「では?」
「王太子の嫌いなものでフルコースを造ったら追放されたわ」
無愛想に答えて背を向けた。
「……もうっ、馬鹿な人」
アンネマリー侍女長がまんざらでもないように声を出した。
王都から料理長がいなくなったことでまともな料理は出ない。
「エメラルド嬢、俺と婚約してくれ」
◆
その次の日。
「また光りましたわあ」
私は火打石を胸元から取り出しましたの。
カチカチカチ
しっかり火打石を打つのも板についてきましたわ。
「では行ってくる」
「行ってらっしゃいませっ」
笑顔で送り出しましたの。
今度転移される方はだれでしょうか?
無事帰られましたわ。
騎竜の後ろには、鎧を着た大柄な男性が乗っている。
「まあっ、マルク王立騎士団長様っ」
「もう王都はめちゃくちゃですぞ、エメラルド様」
マルク騎士団長様が答えた。
「やはり冤罪ですわ?」
「うむ、メイドたちや王都民に無体なことをする司祭たちを取り締まったら、追放されてしまった」
王立騎士団はおもに王都の治安を守っている。
王都の治安は悪化していくだろう。
「婚約をお受けしますわ」




