第5話、王都崩壊。
王と公爵が魔獣討伐から王都に帰ってきた。
今年は魔獣が多く例年より一カ月遅い帰還であった。
「な、なんだこれは」
まず正面門が半ば開いている。
「これはひどい」
王都の住民街がほぼスラムと化していた。
騎士団長がいなくなった後、悪徳商人と癒着のあった騎士たちがやりたい放題したらしい。
逃げられる貴族や良識ある住民は逃げ出した。
入れ替わりに司祭に関係のある質の悪い商人や住人が入ってきた。
次は王都のインフラの崩壊である。
灯りとなる魔道具や設備、特にまともな水が手に入らなくなった。
「王っ、街に伝染病が蔓延しています」
「それと麻薬も」
「王宮はどうなっているっ、フレッドは何をしていたっ」
王が叫ぶ。
「エメラルドは無事か?」
公爵閣下が言った。
メイドや管理者がいないため王宮内もボロボロだ。
「フレッド、どこだっ」
「ミ、ミズ……」
「フ、フレッドオ」
王は、部屋で干からびて死にかけているフレッド王太子を見つけた。
フェリシア伯爵令嬢も隣の部屋で、同じように干からびて死にかけていた。
その後、王都を壊滅させたことで、フレッドは王太子から降ろされ断罪の塔へ生涯、幽閉される。
フェリシアは北にある極寒の修道院に送られた。
転移門を管理していた教会勢力は転移門もろとも潰されている。
王都をまわしていた主要な人材はすべて辺境にいた。
王都の再興は十年、いや二十年の歳月を費やした。
王は自分の子供の教育を失敗したと後悔している。
王都から辺境まで転移を使わず二か月。
エメラルドの父が大慌てで辺境に向かう。
「まあっ、お父様」
領都の門で出迎えた。
「エ、エメラルドオオオ」
下腹を優しくなでる私を見て絶叫した。
「お、お義父さん、落ち着いて聞いてください」
ギルベルタ様が隣に。
「き、貴様かあああ」
「結婚はしております」
成人して三人の上位貴族が承認すれば可能。
ギルベルタさまと父がこぶしで熱く語り合いましたわ。
ともに脳筋のハイランド家とベアサーク家は想像以上に相性がよい。
ハイランド家の母や姉、ベアサーク家ではエメラルドが男たちの手綱をうまく取った。
ギルベルタとエメラルドは五人の子を産み幸せに暮らしたのである。
辺境伯領都は良い方に激変していく。
王都を支えていた人材が全力でやりたい放題した結果である。
ベアサーク家とハイランド家が手を結ぶと王国の半分の領土になった。
エメラルドの孫が新たな王になるのは先の話だ。
シャーン、シャーン、シャーン
半鐘が鳴り響いた。
「行ってらっしゃいましっ」
カチカチカチ
今日も火打石の音が幸せそうに響いている。
了




