第3話、火打石。
「ありがとう、ハイランド嬢」
「いえいえ、まかせてほしいのですわっ」
手に重要な書類を持ちながら言いますの。
書類仕事をしているのですわ。
助けていただいて一週間がたちましたわ。
ギルベルト様はあまり事務仕事が得意ではないご様子。
ハイランド家も同じですわ。
父や兄は魔獣討伐の遠征で家を空けがちですの。
それで、家に残った母と姉と私が事務仕事や領地経営や行うのですわ。
なぜか、王都では王太子や王妃の政務までしていたのですの。
「お役に立ちたいのですのっ」
「でも、王都を追放された罪人である私をかくまってよろしいのですか?」
「いえ、ハイランド嬢は冤罪でしょう」
顔の傷を指でかきましたの。
ギルベルト様の癖ですわ。
王都追放の刑は転移された時点で終わっているのだ。
また、冤罪や権力争いで飛ばされてくる場合も多い。
飛ばされてくる人をベアサーク家はなるべく保護するようにしている。
魔獣の襲われて助からない場合も多いのだが。
「アリサ」
後ろに控える侍女に声をかけましたわ。
私より一週間くらい前に飛ばされてきた王都の侍女だそうですの。
王城内で教会の神官に襲われそうになって抵抗したら追放されたそうですわ。
その時ですの。
窓の外に見える魔獣の森に光の柱が立ちましたわ。
カーンカーンカーン
半鐘が鳴りますの。
「転移の光っ、追放者が来たっ、出るぞっ」
ギルベルト様が手早く鎧をまとい、正面門へ。
私と同じように助けに行くのですわ。
「ベアサーク辺境拍さまっ、ご武運をっ」
カチカチカチ
と厄よけの火打石を鳴らしましたの。
「なっ、ハイランド嬢」
「?」
ギルベルト様が目を見開きましたわ。
「「ヒュウ~~」」
この前の二人の騎士が口笛を吹きましたの。
「……こ、これからは、ギルベルトと呼んでほしい」
「?? では私のことはエメラルドと」
「くっ、エメラルド嬢、行ってくるっ」
「行ってらっしゃいましっ」
手を振りましたの。
騎竜三騎が飛び出していきましたわ。
「……エメラルド様」
「なあに、アリサ」
後ろに控えていたアリサが声をかけてきましたわ。
「……辺境では火打石を鳴らすのは、恋人か御内儀様(奥様)のお役目ですが」
家を守るという意味もある。
「えっ」
た、多分、顔が真っ赤になったのですわ。




