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狐音幽荘物語  作者: かずや


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12/16

ユウメと狐音


 アメリカロサンゼルス郊外、大きな公園にて二人は再会を果たす。


「狐音姐さん……」

「ユウメや……よくやってくれた」

 ユウメを送り出したは良いが、送った後はユウメに任せるしか出来なかった。

 狐音はそれでもユウメを信じて異国に送った。

「間違いじゃありませんでしたわよ、狐音姐さんの読みは当たっていました。」

「それでも、頑張ってくれたのはお主じゃよ……」

「うふふ、まだ時間はそんなに経ってないのですけどね……あら?」

 ユウメは側で見守る男に気付いた。

「うむ、この者は少し縁があっての」

「あなたが……ユウメさんか、俺は甲賀の化け狸。呼び名はないから狸で良い」

「初めまして〜驚きましたわ、狸さんとご一緒に来られるなんて」

「うむ、まあ何と言うか……成り行きじゃの」

 説明するには難しく頬を掻くぐらいしか出来ない。

「とりあえず今の私の住処へ行きましょう、狸さんもどうぞ」

「ありがたい、お邪魔させてもらう」

「では案内しとくれ」

 三人はユウメの住処へと向かった。


 狐音と狸は目を疑っていた。

 自分達は今の今アメリカ、ロサンゼルスに居たはず。

 だが街並みがどこか日本に近いどころか日本語まで見られ、心なしか日本人の顔をした人も居る。

 人は狐や狸に化かされたとは言うが、これでは狐も狸も化かされているになる。

「ユウメ……ここは、儂ら一体?」

「うふふ、この辺りは日本街。戦争より前にこちらに渡っていた出稼ぎ日本人の末裔が集まる地域です。日系二世とも呼ばれてますね」

 狐音は自分の知らない世界の広さを痛感した、無理も無かった。狐音自身は幽導村辺りで千年以上生きたと言えど、それだけしかなかったのだから。

「人の世界とは本当に広く深く複雑なものじゃのう……」

「……狐音よ、俺ですらも人に興味が湧いてきた」

 狸も表情から、人の広がりに衝撃だったようだ。

「さ、ここですわよ」

 ユウメに案内されたのは、こじんまりとした幽荘に似たような家だった。

 促されるまま家に入り居間に通される、畳が敷かれた和室だった。

「どうしても和の空間に惹かれてしまって」

 そうユウメは語る。

「アメリカに来て和室、不思議な感覚じゃが分かる。落ち着く」

「本当にありがたい事だ、足短い狸じゃ椅子は辛い」

 狐音と狸はそれぞれ感想を述べたとこに、ユウメは日本茶を用意した。


「さて……話はあるが……狸よ、お主さっさと終わらせい」

 狐音とユウメ、積もる話はあるがまずは狸からと促した。

「……ユウメさん」

「はい?」

「……貴女に一目惚れをしました」

「……はい?」

 狸は顔が真っ赤になっている。

 狐音はアメリカにユウメを探しに来た理由を船上で聞いていた。


 ——五日前の船上デッキにて。

「しかし、お主はユウメの記事まで持ってアメリカに向かうとは……何故じゃ?」

「……惹かれたのだ」

「ん?」

「人では無い美しい者が人世界でとは言え、こんなに輝いている。俺はこの者に酷く惹かれた、こんな事生きていて初めてだった!」

「お、おう」

 あまりの変容ぶりに狐音ですら後ずさる。

「だから我慢できず日本を飛び出した……なのに、お前の半身だなんて……!」

「なんじゃその言い草は……」

 狸は悔しさに打ちひしがれている、失礼な奴だなと狐音は見るも思い出していた。

 (九兵衛もこんな気持ちだったのかもな)


 ——現在ユウメ宅、居間

 狸は言うだけ言わせて、後で返事をさせるから落ち着いておけと狐音は本題に入った。

 現在の幽荘改築計画、住人の移り変わり、タカの時が止まりだした状況……

「お主がこっちに来た間で幽荘は大きく変わっておる」

「狐音姐さんとやり取りはしてましたが半年ぐらい遅れて書簡が届きますからね〜そんな事になってるなんて……」

 さすがに遠すぎて幽荘の化身でもあるユウメでも、本体が改築されてるとは思わなかったようだ。

「お主が人世界、それも異国の地で人で言う成功を成してるのは聞いておった……まあまさか日本の狸まで魅了するとはの」

 狐音は狸を見て言う、狸はビクッとしてまた静かになる。

「おかげさまでこっちで言う、モデルにスカウトされて洋服のモデルになっちゃいましたね〜」

「ふむ、してお主は何を感じた?」

 ユウメは姿勢を正し、茶を啜る。

 どこか遠くを見て語り出した……


「私は幽荘を出て横浜から様々な方に導かれてアメリカに渡りました、こちらで見聞を広げましたが今の人の力が持つ強大さ、そこに向ける情熱や意識。私達人ならざる者には到底理解できないような事を成しています、それは寿命短いならば託す事に特化した種の本能かと」

 ユウメもまた、人の力と託す意思に感銘を受けた生活だったようだ。

「私達は老いと無関係な分、他者への意識が薄かったのが百年くらい前まで……今は生き方を変える時期なのかと思います」

「ふむ……つまり儂のような千年の時よりも今を生き、先に変化があろうと一時を繋ぎ続ける人の生き方をと?」

「私、ユウメはそう感じております」


 ユウメも狐音自身が想い感じた事に近付いた、狐音はこの時ユウメを世に出して正解だと悟った。

「ありがとうの、ユウメ」

「しかし決めた以上……タカさんは……」

 狐音とユウメの想いが一致したが、そうなると人の時間を生き進んでいたはずのタカは異端の存在になる。

 人からも、人ならざる者からも外れて生き続ける……それが狐音による影響での話ならば決着を付けねばならない。

「……今も街に出て恐怖心と向き合いに行っている、そんなタカは言った、寿()()()()()()()()()()()()()()()()とな」

 答えは狐音が帰り、幽荘の改築が終わってから。

 それまで考える、その時間も必要だ。

「タカさん……ご立派ですわね」

「あやつは頭が良い、そして責任感もある。儂は手助けして巣立ちを見てやりたい……」


 話が一段絡したところでユウメが何やら狸に向かった、狸は座り直しユウメと狸が相対する。

「狸さん、私を知って頂いてありがとうございます。同じ妖として今後も仲良くして欲しいですわ!」

 ユウメは狸の手をそっと握り顔を近付ける。

 狸はまた真っ赤な顔に戻り煙が出ている、ユウメの美貌と憧れと恋心で頭は一杯だろう。

 (ユウメ……男扱う手練れになったのう)

 狸への返答は恋心にOKなのか友情としてOKなのか曖昧にしたままだった。


「さて、用は済んだ帰るかのう」

「狐音姐さん、私も帰ります」

「お、そうかの」

 この軽いやり取りに狸が反応した。

「な!もう帰るのか!?ユウメさんもそんなあっさりと……」

「もう帰るのかと言われてものう、人に合わせた時間は忙しいんじゃよ」

「妖狐の感覚はわからん……」

 狸は信じられないと言った顔で見てきて、考えだす。

「……俺も行くぞ」

「何?お主が?」

「幽荘とやらに人間の時間、話を聞いて興味が湧いた。俺も見届けるぞ」

「そんな事言ってユウメを追いたいだけじゃないのか?」

「ぬっ……とにかく連れて行け」

 片付けを終えたユウメが笑いながら言う。

「良いじゃありませんか、仲間が増えるのは喜ばしい事ですよ」

「ふーむ、まあええわい」

 こうして、狸を加えて日本へと帰国する事になった……


 ——ユウメはすぐに荷造りを済ませ、近所に挨拶していた。

「おい、狐音よ。一日も経たずに動けるもんなのか?」

「うーむ、その辺りの人の合わせ方はまだまだ勉強中なんじゃ」

「お待たせしました〜お家は引き払いましたしサンフランシスコに向かいましょう。帰りは飛行機ですよ〜」

 この辺りの事はユウメに任せるのが早いだろう。

「む?そう言えば金銭は大丈夫なのか?」

 狸は疑問を口にする。

「大丈夫ですわよ〜狐音姐さんが持たせてくれた金塊、人一人くらいなら遊んで暮らせるぐらい価値高まってましたから」

「何……?人間の貨幣使ってたのか?」

 狸は訝しがる。

「まさか、お主……」

 狐音は嫌な予感がした。

「俺はこれがあれば……」

 

 狸はポケットから葉っぱを数枚出す……

「狸よ、人間に興味あるなら金の扱いからじゃな」

「うふふ、人の世の中はお金で回るそうですよ〜」


 まだまだ人の世界の理を理解する時間が要るなと狐音は溜息を吐いた。

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