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勘違いだらけの異世界転生生活 〜スキル【勘違い】だけで何をしろと? 最弱なので助けてください〜  作者: 杜鵑
第4章:神様(クソ爺)にクレームを入れに行ったら、うっかり全神話の創造主(トップ)に祭り上げられた件
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第55話 慰謝料(帰還)交渉決裂!〜「印鑑」を盾に元の世界への帰還を要求する〜

「(……なんで俺、神界のキャバクラで宇宙の創造主に靴舐められてんの?)」


俺は足元で平謝りする白ヒゲの爺さんを見下ろし、限界を迎えた胃を押さえた。


ここは『神キャバ・ヴァル〇ラ』の最奥、VIPルーム。

全宇宙を創造したはずの最高神が、安物の服を着た俺の足にすがりつき、ジャンピング土下座からの靴舐めという最底辺のムーブをかましている。


「ひぃぃぃぃッ! ワシが悪かった! 『ウ〇娘』のガチャで爆死して、腹いせに雷を落としたワシが全部悪かったんじゃァァァ!」


「自覚があるなら今すぐ俺を元の世界に帰せ! 俺は実家のこたつでミカン食いながらゲームしたいだけなんだよ!」


俺は必死に足を振って、まとわりつくクソ爺を振り払おうとした。

だが、俺のHPは相変わらずの『1』である。


腕力もスライム以下なので、筋肉質な神様は全く引き剥がせない。

むしろ俺の方が息切れしてきた。


「……お兄さん、このお爺ちゃんのお尻、蹴ってもいい? 邪魔でメロンが取れない」


「ダメだアリス! 神様をサッカーボールみたいに扱うな! あとお前はキャバ嬢のフルーツ盛り合わせを勝手に食うな!」


「……ジン。神の身柄、裏オークションに出せば国家予算の五千倍。……売ろう」


「人身売買やめろ! 相手は一応、全宇宙のトップだぞ!」


ポンコツどもがカオスを生み出す中、俺は大きく深呼吸をして、ポケットから『あるモノ』を取り出した。


それは、俺が死んだあの日、偶然ポケットに入っていた日本の神器。

ダ〇ソーで買った、税込百十円の安物『三文判(シ〇チハタ)』である。


「いいかクソ爺! 俺は今から、このチラシの裏に『慰謝料および元の世界への帰還に関する同意書』を書く!」


俺はテーブルにあったピンク色のいかがわしいチラシを裏返し、ボールペンで乱筆の契約書を書き殴った。

『一、俺を安全に元の世界(日本)に帰すこと』

『二、迷惑料として、一生遊んで暮らせる現金(日本円)を振り込むこと』


「俺は既にこの『印鑑』を押した! お前も今すぐここに神のハンコを押せ!」


俺は百均の三文判を、まるで水戸黄〇の印籠のように、クソ爺の目の前に突きつけた。


「さもなくば、このハンコをお前のデコに直接スタンプしてやるからな! 一生『霧雨』の苗字を背負って生きることになるぞ!」


俺としては「額にハンコを押すぞ」という、小学生レベルの幼稚な脅しだった。

だが、その安っぽいプラスチックの筒(三文判)を見た瞬間。


クソ爺の顔から、再びスゥッと血の気が引いた。


「(な、なんじゃあの恐ろしいアーティファクトは……!?)」


クソ爺は、百均の三文判から『宇宙を消滅させるほどの圧縮エネルギー』を幻視し、ガチガチと歯を鳴らした。


「(あんな漆黒の筒、神界の歴史書にも載っておらん! ま、まさか、押された者の『存在という概念』そのものを書き換える、因果律操作の魔印!?)」


「早くしろ! 俺の気が変わらないうちにな!」


「ひ、ひぃぃぃぃッ! お許しを! ワシの存在データだけは上書きしないでくれェェェッ!」


クソ爺は恐怖のあまり、キャバクラの床でビチビチと魚のように跳ね回り始めた。

なんで百円のハンコ見せただけで、神様が痙攣してんだよ!


すると、俺の隣に控えていたメリルが、またしても感極まった表情で涙を流し始めた。


「(……ッ! 創造主の命を奪うのではなく、あえて『契約』という形で生かしておくおつもりか!)」


メリルは聖剣を構えたまま、俺の背中(というより三文判)に向かって深々と一礼した。


「(この宇宙の頂点たる神すらも、自らの『所有物(霧雨)』として使役する……! これぞ、絶対的支配者の慈悲! マスターの底知れぬ器の大きさに、私メリル、一生ついていきますッ!)」


「ついてこなくていいから! お前らは絶対に日本に連れて行かないからな!」


俺の悲痛なツッコミは、またしても誰の耳にも届かなかった。



「いいから早くハンコ押せよ! こっちは実家のこたつが恋しくてたまらないんだよ!」


俺はビチビチと床で跳ねる神(クソ爺)の胸ぐらを掴み、無理やり引き起こした。


「朱肉がないなら、お前のその無駄にテカテカ光ってる額の脂でもいいから! ほら、ここにペタッと!」


「ひ、ひぃぃぃぃッ! やめてくれェェェ!」


クソ爺は俺が突きつけた百均の三文判から顔を背け、必死に抵抗した。


「(ワシの『神気あぶら』を直接吸い出し、魂の強制契約を結ぶつもりじゃ! この男、本物の悪魔じゃあ!)」


俺としては、ただのインク代わりのつもりだった。

だが、クソ爺にとってそれは『存在の完全な書き換え』を意味する絶望の儀式らしい。


「ま、待つんじゃ! 分かった、ワシの負けじゃ! 慰謝料なら払うから、その恐ろしい黒い筒だけはしまってくれ!」


クソ爺は涙と鼻水を垂らしながら、懐から金ピカのカードを取り出した。


「これ! この『神界ブラックカード』をやる! これ一枚で、第七階層の領地も、女神のハーレムも買い放題じゃ!」


「いらねえよそんなモン! 俺が欲しいのは日本円キャッシュだ! あと安全に実家の六畳間に帰れる片道切符だ!」


俺は神界の超絶VIPカードを、ゴミでも見るような目で叩き落とした。


「(……ッ!? 神界の全権を握れるカードを、一瞥もせずに叩き落としたじゃと!?)」


クソ爺の白ヒゲが、恐怖と驚愕でブルブルと震える。


「(この宇宙のすべてを手に入れても、まだ足りぬと言うのか! 『日本円』とは、一体どれほど高次元の概念通貨なんじゃ……!)」


勝手にビビり散らしているが、俺はただ地元のセ〇ンイレブンでフ〇ミチキを買いたいだけである。

なんで神様相手に通貨の概念から説明しなきゃいけないんだ。


「……ジン。もったいない。そのカード、私が運用する。……女神ハーレムは私が仕切る。ジンは月給三万で雇う」


「なんで俺が神様を差し置いてお前の下働きになってんだよ! どんだけピンハネする気だお前!」


ルナが床に落ちたブラックカードを光の速さで回収し、恐ろしいビジネスプランを立ち上げ始めた。

そして、俺の『六畳間への執着』を見たメリルが、またしても目を輝かせてしゃしゃり出てくる。


「(流石ですマスター……! 神界のすべてを差し出されても決して揺らがない、その鋼の意志!)」


メリルは聖剣を胸に抱き、うっとりとした表情で天井を見上げた。


「(マスターの帰還される『六畳間』……。そこはきっと、この脆弱な宇宙とは比べ物にならない、真の絶対神のみが座す『至高の領域』なのでしょう!)」


「ただのボロアパートだよ! 家賃三万八千円で壁がペラペラなんだよ!」


俺の悲痛な叫びは完全に無視され、クソ爺の絶望はさらに深まっていく。


「(家賃(供物)がたったの三万八千……? そ、それだけの対価で維持できるほど、その世界のシステムは完成されているというのか!?)」


「違うってば! お前ら、頼むから日本語(一般常識)を正しく翻訳してくれ!」


完全に噛み合わない会話のドッジボール。

俺の胃痛が限界を突破し、胃酸が逆流しそうになった、その時だった。


「……お兄さん、このお爺ちゃん、頭から甘い匂いする。……かじっていい?」


「ひぃぃぃぃッ!? 今度はワシの肉体を直接捕食しようとするバケモノが現れたァァァ!」


アリスがヨダレを垂らしながらクソ爺の頭に噛みつこうとし、事態はさらなるカオスへと突入した。



「アリス! 神様をかじるな! お前のお腹が壊れるだろ!」


俺はヨダレを垂らすアリスの襟首を掴み、全力で後ろに引っ張った。

しかし、ブラックホール胃袋を持つ大魔導士の馬力に、HP『1』の俺が勝てるわけがない。


「……むー。ジン、邪魔。……このお爺ちゃん、綿あめの味がする」


アリスが不満げに首を振った拍子に、彼女が手に持っていた高級メロンの皮が床にポロリと落ちた。

そして、俺の足がその皮を見事に踏み抜いた。


「あっ」


ズルゥゥゥッ!

マ〇オカートのバナナの皮も真っ青の滑り具合で、俺の体は宙を舞った。


「うわぁぁぁぁっ!?」


その瞬間。俺が右手に握りしめていた百均のハンコ(三文判)が、手からすっぽ抜けてすっ飛んでいった。

ハンコは空中で回転しながら、天井で回っていた『神のミラーボール』に直撃。


カーンッ!


跳ね返ったハンコは、今度はテーブルの上にあった『高級ドン〇リのボトル』のコルクをピンポイントで弾き飛ばした。

ポンッ! という小気味良い音と共に、吹き出した炭酸の勢いに乗って、ハンコはさらに加速する。


そして、そのままVIPルームの最奥に鎮座していた『神界管理用・巨大クリスタル』に向かって、弾丸のように飛んでいったのだ。


カツンッ。


クリスタルの中心(パスワード入力欄)に、ハンコの先端が奇跡的な角度でクリーンヒットした。

内蔵されていた百均のインクが神聖な防壁をすり抜け、クリスタルに『霧雨』という朱色の文字をくっきりと刻み込む。


ピロッ♪


『システムエラー。最高管理者の権限が、強制的に【霧雨】へ譲渡されました』

『新管理者の深層心理に合わせ、当領域(VIPルーム)の環境を最適化します』


「……は?」


ゴゴゴゴゴゴッ!!

神界の無機質なシステム音声が響いた直後、キャバクラのVIPルームが凄まじい地鳴りを上げ始めた。


純金の壁がベニヤ板に変わり、クリスタルのシャンデリアが裸電球へと姿を変える。

豪華な大理石の床は、見る見るうちにシミだらけの古い畳へと変貌していくではないか。


「な、なんじゃこりゃあぁぁっ!? ワシのVIPルームが、一瞬にしてカビ臭いボロ部屋にぃぃっ!?」


クソ爺が悲鳴を上げながら、突突如出現した『木目調のコタツ』の下敷きになって潰れた。

俺の百均ハンコが、神界の管理システムをバグらせ、この空間を『俺の実家の六畳間』に強制リフォームしてしまったのだ。


「(……いや、待て。俺は実家に帰りたかっただけで、キャバクラを実家に魔改造したかったわけじゃないぞ!)」


俺が畳の上で呆然としていると、メリルがボロい障子をうやうやしく撫でながら震え出した。


「お、おお……! なんという神威……! 『印鑑』を投げつけただけで、神の領域を完全に自らの陣地へ書き換えてしまうとは……!」


「違う! 俺はただメロンの皮で滑っただけで……!」


「ええ、分かります! あえて自ら転倒することでハンコに遠心力を加え、システムの心臓部を正確に狙い撃つ『神域の投擲スナイプ』!!」


「だからそんな暗殺者みたいな技使ってないから!」


メリルの狂信翻訳は、六畳間でも絶好調だった。

だが、事態はさらに悪化する。


「……ジン。押し入れの中から、神界の裏金ヘソクリが大量に出てきた。……全部いただく」


ルナが襖を蹴り開け、クソ爺が隠し持っていた純金の延べ棒を次々とマジックバッグに詰め込み始めたのだ。


「やめろルナ! 実家の押し入れから金塊を強奪するな! 泥棒のスケールがおかしいだろ!」


俺の悲痛なツッコミ虚しく、神界のシステムは完全に崩壊の音を立てていた。



「(……なんで俺が神界のシステムを乗っ取った挙句、ボロアパートの大家みたいになってんだよ!)」


俺は木目調のコタツの下敷きになっている神(クソ爺)を見下ろし、激しい頭痛を覚えた。


「ひぃぃぃ! 頼む、ワシの存在データだけは消さないでくれェ!」


クソ爺は畳に額をこすりつけ、本気の土下座(二回目)をキメている。


「消さねえよ! だから早くこの同意書にサインして、俺を日本に帰せって言ってんだろ!」


俺は先ほど書いたピンク色のチラシ(裏面)を、再びクソ爺の鼻先に突きつけた。


「む、無理なんじゃ! お主がその恐ろしい魔印ハンコで、神界の最高権限を奪ってしまったから……!」


「……は?」


クソ爺の言葉に、俺の動きがピタリと止まった。


「今のワシはただの白ヒゲの爺さんじゃ! 次元を超える転移魔法など、もう使えんのじゃよォォォッ!」


「ふざけんなァァァッ!! じゃあ俺は一生、この理不尽な異世界から帰れないってことか!?」


俺の魂からの絶叫が、カビ臭い六畳間に響き渡る。


「(……ッ! あえて自らをこの世界に縛り付け、永遠に我々を導いてくださるというのか!)」


俺の絶望を、メリルがまたしても最悪の形で誤翻訳した。


「(自らの帰還すら捨て置き、愚かな旧神(クソ爺)に代わって新世界の神となる……! マスターの慈愛、宇宙よりも広大です!)」


メリルは感動のあまり、畳の上に正座して深々と平伏した。


「違う! 俺はガチで実家に帰りたいだけなの! あとお前、畳の上で聖剣を構えるな! 傷がついたら敷金引かれるだろ!」


俺の悲痛なツッコミは、狂信者の耳には一切届かない。


「……ジン。元・創造主への家賃請求書。……滞納したら、神の臓器コアを売る」


「ルナ! 神様相手に闇金ウ〇ジマくんみたいな取り立てやめろ! いくらなんでもエグすぎるだろ!」


神を差し置いて、ルナが神界の不動産王として君臨しようとしている。

もう俺の手には負えない。契約書なんて破り捨ててしまいたい気分だ。


「……お兄さん、このピンクの紙、イチゴミルクの味がする。……モグモグ」


「アリス! お前は俺の唯一の希望(契約書)を食うなァァァッ!!」


唯一の帰還の手がかりだったチラシの裏は、大魔導士のブラックホール胃袋の彼方へと消え去った。

ついでにアリスは、コタツの上の食品サンプル(ミカン)まで齧り始めている。


「ひ、ひぃぃぃ! 命だけは、命だけはお助けをォォォ!」


かつての最高神は、金と食欲の亡者たちに囲まれ、ガクガクと震え上がっていた。


俺の周囲には、狂信的な剣聖、腹ペコ大魔導士、守銭奴盗賊、そして土下座する元・神様。

その地獄のような光景を前に、俺の胃壁はついに限界を迎えた。


「(もう嫌だ……。誰か、誰か俺を静かなベッドで寝かせてくれ……!)」


俺が胃を押さえてコタツに突っ伏した、その瞬間だった。

脳内に、いつも通りふざけきった無機質なシステム音声が鳴り響いた。


『ピロン♪』

『条件を満たしました。称号【創造主のパパ活相手(恐怖)】が【新世界の創造主(※六畳間限定)】に進化しました』


「どんな最悪な進化だよ! 俺はただの実家暮らしの小市民だぞォォォッ!!」


俺の悲痛な叫びは、またしても誰の耳にも届くことなく、神界のボロアパートに空しく響き渡るのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます!

「印鑑」という最弱の俗物アイテムで神界のシステムを乗っ取り、キャバクラのVIPルームを「実家の六畳間」に強制リフォームしてしまったジン……。

結局元の世界には帰れず、ボロアパートの大家(新世界の創造主)に成り下がってしまいました!

少しでも「百均のハンコ強すぎw」「アリス契約書食うなw」と笑っていただけましたら、ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援をお願いいたします!

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