12.ランドドラゴン
「ワイバーン……」
ギルドからの依頼を見て神人は【観測せし者】を起動し、尋ねる。
(今回の依頼、どうですかね?勝てます?)
(勝てます。)
(……じゃあ、受けますか……)
本人的に望んではいないとは言え、昇級してしまったのであればあまり下のランクを受けても迷惑をかけるので仕方ないとばかりに神人はその依頼を受ける。
(……まぁ前回の昇級の時に揉めてしまったことが後ろめたい気もするし、今回は素直に受けようかな。)
「では、これを受けます。」
「はい。ではこちらの固定ゲートから行ってらっしゃいませ。」
前回の一件からか、基本事務的な対応だけされて神人はシズネと一緒に依頼場所へと移動して行った。
「うわ……ジャングルか……」
移動先はジャングルだった。足下がぬかるむ中で神人は巨大な足跡を追って移動していく。
(こっちでいいんですか?)
(えぇ。)
【観測せし者】の探知圏内にいるらしく神人は迷うことなく移動してワイバーンを狩りに行く。
「い、た……?」
そしてようやく見つけた時、そこに居たのはワイバーンと、ディメトロドンのような背中に帆を張り出した、巨大な化物がいた。
そしてディメトロドンの方は今まさにワイバーンを食い殺し、首から上を咀嚼して血の雨を辺りに降らせている。
「うっわ……これ、ワイバーンの討伐は失敗……?」
「そ、そ……それどころじゃ……ないです……!逃げ、逃げないと……!」
パニックになるシズネに対して神人は【観測せし者】に割と冷静に尋ねる。
(どうやったら勝てますか?)
(……まずは一本だけ決めた足を徹底的に叩いてください。相手はランドドラゴンの亜種です。【神武撲殺杖】でも切断は叶いませんが、潰すことは可能ですので徹底的に潰してください。)
本来の杖としての使い方としてはそれが普通なんだよなぁ……と思いつつ神人は武器を構えて戦いを挑む。それを見たシズネは驚いて手を引き、止めた。
「だ、ダメです!相手は、竜種ですよ……!?私が……私が囮になります。一瞬にも満たないでしょうが、その間に……」
「……取り敢えず、勝つから。シズネは簡単に囮になるとか命を捨てに行かないでくれるかな?」
軽く窘めるが今回に限ってシズネは簡単には説得されない。
「私は……もう、醜く育ってしまった、パト族です。ご主人様のお役にたてることでしたら何でもしなければ……私の存在意義は……」
「あぁもう……そういうのはいいから。?『仙氣発勁』!」
強引にシズネの意見を捻じ伏せて神人の体を暖かな新緑の光が包みこむとシズネは驚いて息を吞む。
それに対して神人は【観測せし者】から現在の状態について報告を受けて苦笑してシズネに告げる。
「……ハイヒューマン。って……」
「ご主人様……」
手を引く力が弱まったところで目を見て信じてくれと一言シズネに呟くと神人はシズネの手を優しく払ってランドドラゴンに挑んだ。
「でやぁあぁぁぁっ!」
右側面から村雨のような乱打を浴びせる神人。ランドドラゴンはそれを嫌がり体位置を入れ替えようとするが神人はそれを許さずに自分も場所を移動して続けて攻撃する。
「がぁぁぁあぁっ!」
「魔力波です!」
マズい、身を挺してでも庇わなければ……! そう判断して飛び込もうとしたシズネだが、目の前では神人がその魔力波の一部を消し飛ばしていた。
「凄い……」
一撃が流れるようにして次の一撃へと繋がって行く。まるで舞のような神人の攻撃にシズネは神話の戦いとはこういう物だったのだろうか……と言う感想を抱いた。
「このまま行くことが出来たら……」
本当に勝つことが出来る。そう思い見守ること1時間ほどでランドドラゴンはついにその膝を折る。
(……っ堅ぁ……!手が、痺れた……つ、次は?)
(左の後ろ脚を折って下さい。続けて尾の付け根を狙うように。)
(了っ……解!)
時間はかかったが、実際に目の前で攻めあぐねて撤退を考えているようにも見えるランドドラゴンの状態を見て神人のやる気は上がる。
「おぉおおおぉぉおぉぉっ!」
気勢を上げ、乱打を続行する神人。既に手先の感覚が怪しい物になって来ているが、【観測せし者】の言うことを愚直に実行するだけだ。
そして、ついにその時は訪れた。
「はぁっ……はぁっ……つ、次……ぃっ!」
(ランドドラゴンの上に乗って下さい。そして頸椎から頭をかち割る。もしくは目玉から【神武撲殺杖】を突っ込んで脳をかき乱すのが得策です。)
今更ながら逃げようとするランドドラゴンに対して神人は容赦しない。上に飛び乗ると目玉から頭に掛けて【神武撲殺杖】を貫き、ランドドラゴンの生命を終わらせた。
「はぁっ……はぁっ……こ、これで……大丈夫かな……」
(討伐成功です。)
「……これ、持って帰ろ……」
神人がシズネの方を見るとシズネは神人を拝んでいた。その様子に苦笑しながら神人はランドドラゴンの亡骸を引き摺ってゲートの方へと移動を開始しつつ【観測せし者】に尋ねる。
「これで、ワイバーンの討伐失敗……以上、に……なりますか……?」
(……勿論です。)
「なら、いっか……」
【観測せし者】はそれ以上に言いたいことがあったが訊かれていないことまで答えることはできないシステムの為沈黙を守った。




