魔法ランキング戦三日目9
ーーーーパキッパキッ。
静まり返った状況の中、空気が凍りつく音だけが響く。巨獣は氷の彫像になったまま動こうとしなかった。
「今の内にっ!」
倒したか?と巨獣の様子を伺うミオンロート先生に声をかける。ミオンロート先生もハッとした様子で残った生徒達の避難を始めた。
ーーーー余裕がない。
私は心の中でそう自覚する。
ミオンロート先生にかけた声には一切の余裕が含まれていなかったことに自分でも気づいている。それほどまでに自体は緊迫していた。曲がりもなくさっきの〈アイス・トール〉は全力全開で放った。しかし、巨獣はまだ生きている。
ラザフォード学院長もハティもそれに気づいているようで、余裕もなく巨獣の様子を伺っていた。
ピシッ、と静寂した空気を打ち破るかのように氷の彫像に一筋のヒビが入る。
「ルゥオオオオオオオオオ!!」
バリィンッと氷の中から脱出した巨獣は、大気を震わせた。凄まじい爆音と爆風に体が揺さぶられる。
「……ラザフォード学院長。これから見せる魔法を、他言しないでもらえますか?」
このまままともに戦っても勝てるかわからない相手。故に、私はラザフォード学院長にそう切り出した。
ラザフォード学院長は間を置くことなく頷いてくれる。
これでやっと本気が出せる。この世界に生まれついたと気づいた時から誰にも内緒で密かに開発していた、恐らく禁術に指定されるであろう魔法を。
私はこの魔術にこう名前をつけた。〈畢竟無〉と。
「おい!避難は終わっーーーッ!?」
生徒達を避難し終えたミオンロート先生が全力で加速系統魔法を使いながら近づいてくる。が、私から溢れ出る莫大な魔力にその場で急ブレーキを掛けた。
「〈畢竟無〉」
目を閉じ、必要な魔力を集め終えた私は目を開いて迫り来る巨獣に狙いを定める。そして、その魔法の名を呟いた。
ーーーその直後、死の風が吹いた。
一陣の風が吹いたかと思うと、巨獣の体が分子単位で分解されていく。
その荒唐無稽な光景を、ハティを含めた全員が呆然と見つめていた。
こうして、学院史上最悪の危機は去った。




