魔法ランキング戦三日目7
「気をつけろ!ラザフォードの切り札の一つ、空間の湾曲だ!」
神速の拳を避けられたことに一瞬呆然としたとき、ミオンロート先生から怒号が飛ぶ。その声で、なんとか持ち直した。
なるほど、空間の湾曲。恐らくこの拳を避けたのも、空間の湾曲で距離を殺したのだろう。
「ならばっ!」
こちらも距離を殺すまで!
〈雷電〉の出力を上げ、一瞬でラザフォード学院長との距離を詰める。
「はぁっ!」
「ふふふ」
そして蹴りや拳、踵落としなど烈火の如く連打を打つ。しかし、それもラザフォード学院長の空間の湾曲で躱されつづける。
「空間の湾曲は距離を殺すだけじゃなくて、こんなこともできるのよ」
「くぁっ」
一瞬目の前の空間が歪んだと思うと、次の瞬間私は吹き飛ばされていた。強い衝撃にガクンガクンと頭が揺さぶられる。なんとか空中で体勢を立て直し、着地する。
ちらりと〈闇衣〉を見ると、微かにヒビが入っていた。
危なかったわ。多分あれをまともに食らったらアウトね。
「ふふふふ」
油断無くラザフォード学院長を睨めつけるけれど、ラザフォード学院長は不敵に笑うまでだった。どうしましょうか。空間の湾曲。正直手の内ようが…………いや、あった。
「裁きを下せ冷酷なる鉄槌よ。罪悪ある物に絶対を。我に仇なす敵を打ち砕かん!〈アイス・トール〉」
十二階級氷系統魔法 〈アイス・トール〉をラザフォード学院長の頭上に展開させ、三重魔法陣にくぐらせる。
「っ!?」
不敵な笑みが崩れ、私の意図に気づくがもう遅い。空間の湾曲ごと、ラザフォード学院長を押しつぶした。
ズガァァァァァァァァンッ!
と轟音を轟かせながら土煙を天高く打ち上げる。周囲の気温がぐっと下がり、パキパキと霜がおり、冷気が漂った。
これでやったとは到底思えないけれど、油断無くさっきまでラザフォード学院長がいたところを注意深く観察する。まだラザフォード学院長はやられてない。そんな予感がする。
計らずしも、その予感は当たることとなった。
「危なかったわ」
まだ薄っすらとかかる煙の中から姿を現したラザフォード学院長は、そう言いながらビリビリに破けた上着を剥ぎ取った。
「それであれを防いだんですね」
「ええそうよ。『護神の加護』を受けた上着。一度だけ全ての攻撃から私を守ってくれる。私の切り札だったんだけど?」
破り捨てられた上着を見ながらラザフォード学院長は肩を竦める。その後、私を見据えた。その目には先程のような余裕さはなく、本気だった。
さて、ラザフォード学院長を本気にさせたことだし、私も切り札を切りましょうか。
「〈紫電〉!」
青い雷を纏う〈雷電〉の上位互換、〈紫電〉。移動速度と威力や防御力は上がるものの、完全に雷を支配出来なければ体が内部から破壊される。危ない綱渡りだ。
「危ないことをするわね。学生として、感心しないわ」
「支配出来る自信があったので」
そう、元より支配出来る自信がなければこんなことはしない。ラザフォード学院長に接近しようとした瞬間、咆哮が聞こえた。




